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「竜の王と漁師」
   2007-03-27 15:49:50    cri

 今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。

 この時間は、中国東部の沿岸地方に伝わる「竜の王と漁師」というお話をご紹介しましょう。

 「竜の王と漁師」ーー?王失印服?翁

 むかし、毎日海に出て妻や子供をなんとか養っている漁師がいた。ある日、漁師が海で網を張ったが、どうしたことかこの日は、一匹の魚もかからない。こうして日が沈み始めたころに風が出てきたので、漁師はこれは早く帰らないと危ないと思った。しかし、家で子供たちが腹をすかして自分の帰りを待っていることを思うと、漁師は迷った。

 と、そのとき、あまり遠くない海の上をかもめらが飛び回っている。

 「おお!あの下にきっと魚の群れがいるにちがいない」と漁師は船をそこへ漕いでいき、そこで投げ網を張った。しかしやっぱり、魚はかからない。

 「あれ?どうしたんだ?」といくらか気を落とし、また張ってみたが、魚はなおもかからない。そこで眉をひそめ、仕方がないから諦めて網をしまい、帰ろうとした。しかし、網を引き終わろうとしていると、何か光るものが網にかかっているのを見つけた。そこで網から取り上げてみると、それは細かく立派に彫った印章だった。

 「うん?どうしてこんなものが網にひっかかたんだ?それにしても見事なものだ。しかし、この印章はだれのものだ?何という字が彫ってあるのかもわからんしな。うん?まわりに金の竜が掘ってあるぞ。それに竜は口に白く光る玉を咥えている。これはすごい物を拾った」

 漁師が喜んでいると、なんとそれまで吹いていた風も急に止み、波もおさまったのでびっくり。

 「これはすごい。かなりの宝物にちがいない」と漁師はその印章を大事に懐にしまいこみ、船を漕いで岸に向かい帰っていった。

 翌朝、漁師は藁葺きの家の上に小さな棚みたいなものを作り、その中にかの印章を海に向けて置いた。すると、彫り物の竜が咥えている玉が光を放ち、そのせいか近くの海は風も吹かず波も立たなくなり、これを見たほかの猟師たちは、ここはいいところだと、多くが近くに引越してきたのでここら一帯はにぎやかになった。

 実は、この印章は、天帝さまが海の底にある竜宮城の竜王に授けた大事なものだった。で、その日、竜王の息子が父に黙ってこの印章を持ち出したところ、途中でなんと失くしてしまい、それを漁師が手に入れたというわけ。

 そして竜宮城では、大事な印章を失くしたと知って竜王は驚き慌てた。というのも、これが天帝に知られたら大変。叱られるどころか、罪としてひどいお咎めがあるのに決まっている。つまり、竜王はいても立ってもいられなくなったのだ。息子はもちろん、父親にこっぴどく叱られ、側で小さくなっている。竜王は考えたあげくエビやカニなどからなる将兵たちに探しにいかせ、横にいる息子を睨んでいるうちに、また怒りがこみ上げてきたので、息子を縛り付けて何度もぶん殴り、とうとう牢屋に入れてしまった。

 さて、エビやカニなどの将兵らは、怒った竜王が怖いものだから、それは必死になってこの竜王の管理する東海の隅々まで探したが、どうも印章が見つからない。そこであるカニの武将が海面から二つの眼を出して岸のほうを眺めると、浜から一番近い小屋の上からは何かが光って見えるではないか!

 「あれは、我ら竜王の印章に嵌められた玉にちがいない。とうとうみつけたぞ!」とカニの武将は急いで竜宮城にもどり、このことを竜王に告げた。これを聞いた竜王、「なんと、ちっぽけな漁師がわしの大事な大事な印章を盗むとは、けしからん!」と大勢の将兵を伴い、また牢屋から息子を出し、自ら印章を取り返そうと出陣した。こうして竜王の率いる大軍は、岸辺の小屋に向かって押し寄せていく。もちろん、空には黒雲が立ちこめ、波は荒くなり、潮は大きく浜辺を襲う。

 こちら漁師は、「これはいかん」と近所の男たちを集め、自分の小屋の上にあがらせかの印章が掛けてある棚を守らせた。実はこの印章のおかげで大波が来ても、小屋の上には水は届かないのである。これに竜王、地団駄踏んで悔しがったが、自分の印章にそれだけの魔力があるのだからしかたがない。

 そこで海の上にたち大声で怒鳴った。

 「どこのどいつだ!この竜王さまの家宝を盗むとは!早く返さぬとひどい目にあうぞ!」

 これに漁師がやり返す。

 「わしが盗んだんじゃない!それに竜王のお前は、日ごろから好き勝手に風を吹かせ、波を立たせてわしらの船をひっくり返し、わしらの父や兄弟の命を奪ったり、怪我をさせたりし、わしら漁民を苦しめているんだぞ!いまはお前がわしらを苦しめるために使う宝を手に入れたんだ。そうたやすく返せるものか!」

 「何だと!こしゃくな奴め!わしのものを返さないというなら、お前たちみんなは溺れ死ぬんだぞ。いいな!」

 竜王はこういうと、大きな口をあけ、小屋めがけて大水を吐き始めた。これに漁師は驚き、これでは小屋は瞬く間に押し流され、仲間たちも溺れ死んでしまうと悟り、歯軋りしていたが、急に何かを思いついたのか、棚の中からかの印章を取り出し両手で頭の上へ持ち上げ、両王にいう。

 「竜王!もう止めろ!そうでないとこの印章を石に思い切りぶつけて壊してしまうぞ!」

 竜王はこれに驚いた。漁師がこう出るとは思わなかったのだ。実に印章を壊されたのでは大変なことになる。

 「な、な、なんだと?ま、まった。まってくれ!いや、いや!わしが焦りすぎた。まってくれ!漁師さんよ。そう怒らんでくれ。わしはその印章を返してほしいのじゃ。もし返してくれたら、竜宮城にあるどんなものでも、あんたに進ぜよう。どうだあ。その印章と竜宮城の宝とを取り替えようといっておるのじゃ」

 「ふん!わしは漁師。漁師がそんなもの貰ってどうするのだ?そんなものは欲しくはない!」

 「では、あんたは何が欲しいのかね?」

 「この印章はお前に返してもいいが、それには三つの条件がある」

 「三つの条件?」

 「そうだ!いやなら、この印章をいまここで叩き壊すぞ!」

 「ま、まった!その三つの条件とはな、なんだ?言ってみろ」

 「よし。一つ目は、お前たちが好きなときに、大風を出し荒波を作ったりしないこと」

 「それはどうしてだ?」

 「そんなことをするから、これまで海に漁に出た多くの男たちは、船が沈んだりして命を落としたんだ。わかるか!」

 「ああ、そうか。わ、わかった」

 「二つ目は、引き潮と満ち潮のあるときは、決まっているのだ。それを勝手にかえないこと」

 「なぜだ?」

 「おまえたちが、勝手にそのときをかえたりするから、わしら漁師は船を出せなくなったり、漁に出たあと、岸に船を戻せなくなったりしてるんだ。それに、勝手にときをかえるので、魚がどこにいるのかわからなくなる!」

 「魚はいつも海にいるぞ」

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