「つべこべいうな!言い訳があるなら、役所で言え!早く歩け!」
こうして大福は役所に引っ立てられ、無理やり県令のまえに跪かされた。大福は必死である。
「申し上げます!わたし大福は何も悪いことはしておりません。どうしてわたしをここに引っ立てるのでございますか?」
これを聞いた県令はニヤニヤしている。
「ふふふ!そう騒ぐな!お前が下手人であることははっきりしておるのじゃ!」
「なにがはっきりしているのですか?」
「お前が人を殺し、金目の物を奪ったことじゃ」
「えっ?わたしが人を殺して金目のものを奪った?」
「ばかもん!お前が質屋で金に換えようとした首飾りと腕輪が証拠じゃ!」
「ええ?!」
大福はこれを聞いてめまいがした。で、そこにはことを調べるため上から役人がきていたので、県令はこの役人に事情を話してから大福の罪状を並べた。
実は、大福が狼を助けた二日前、地元の寧泰という商人が、旅の帰りに妻の実家に立ち寄って土産をわたし、ついでに妻が先月実家に戻ったとき置き忘れた首飾りと腕輪を持って家に帰るその途中で何者かに殺され、金目のものがすべて奪われた。翌日、夫が帰ってこないので何かあったと商人の妻が役所に届けたので、役人たちが調べに出ていた。すると郊外で人が殺されたという知らせが入り、役人たちが妻を連れて行き、殺されたのが商人だということがわかった。そして商人の妻が何を奪われたかを言ったので、下役人が次の日に商人の妻を連れて質屋などで見張っていたところに、大福が質屋にきて、その質に入れるものを商人の妻がみて、これは奪われたものだと証言したのである。
これを聞いた大福は、とんでもないと必死になり、自分がどうして首飾りと腕輪をもっているわけを話した。ところが、狼からそれを貰ったなどと県令たちは信じない。そこで大福がうそはつかないと申し立てたが、県令は大福は人を馬鹿にしていると決め付け、すぐに処刑をまつ牢屋にぶち込んでおけと命じた。
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