北京
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「もっともやらなければならないことは民族融和であるにもかかわらず、今、西側が一生懸命にやろうとしているのは民族対立を刺激しようとしていること。これはまったく間違っている」――17日夜に、オンラインで開かれた市民向け講座でこう強く訴えたのは、慶応義塾大学経済学部の大西広教授です。
この日、神奈川県日本中国友好協会経済文化交流部会主催の日中民間交流対話講座で講師を務めた大西氏は、「『ウイグル問題』に関する西側キャンペーンを検証する」を演題に、約1時間半にわたって発表を行いました。
大西広教授(提供写真)
近代経済学、統計学、マルクス経済学が専門の大西氏は長年、新疆の労働問題を研究し、門下生としてウイグル出身の留学生も数多く受け入れてきました。1995年の初訪問から、これまでに11回にわたり、調査研究のため現地を訪れています。2012年には、ウイグル族の学生とともに京都大学学術出版会から『中国の少数民族問題と経済格差』という研究書も出版しています。
大西氏は講演の中で、新疆に関する西側キャンペーンで定番とされた「民族抑圧」説、「ジェノサイド」説、「強制労働」説の実態をめぐり、実地調査で判明した事実や、現地映像を徹底的にチェックして分かったことを報告し、世界ウイグル会議や西側メディアの関連報道の真実性にみられた問題点を突き止めました。
その中で、2009 年 7 月のウルムチで起きた暴力テロ事件について、大西氏は実態に関する詳細調査を紹介しながら、「テロ行為を合理化する言説は許されない。その撲滅を目指す中国当局の努力は正当に評価されなければならない」と指摘しています。
大西氏のオンライン講演会の様子
また、世界ウイグル会議や西側メディアのキャンペーンには、中東地域での写真を用いている場面があるとし、「単純ミスではありえない。これでは陰謀集団と言われても仕方がない」と怒りをあらわにしました。
さらに、綿花摘み現場の「強制労働」説について、大西氏は十数年前に、新疆大学の学生を石河子の生産建設兵団へ綿花摘みのために派遣する事業の事前調査に立ち会った時に見聞したことを紹介しながら、ウイグル会議やジョン・サードワースの英 BBC での報道は、過去の記憶だけで報道していると思われるシーンがあったことを指摘。そのうえで、「機械化された現代の綿花摘みの様子は周到に外されている。極めて悪意に満ちた編集となっている」とし、「ウイグル会議の情報とそれに基づく西側報道のほとんどはフェイクである」と立証しました。
そのうえで、日本国内では「『強制労働』の考え方が日本と中国で違う。しかし、我々のような考え方を向こうに普及していくのは大事」という一部学者の意見や、「各企業が強制労働の有無を調べても最終的にはその判断ができないだろう。最終的にはいかなる調査結果が出ようと企業は中国から撤退してもらいたい」という日本を本拠地とする国際人権NPO役員の発言を引用しながら、新疆問題を短絡的にとらえることの危うさを指摘しました。
結びに、大西氏は、各国はいずれも自国内の民族問題に正面から向き合う必要があると指摘し、新疆問題における西側の姿勢の「一番の問題は、中国の内政問題に他国、多民族が圧力をかけて介入しようとすることだ」とし、民族を分断せずに融和をはかることの大事さを改めて訴えました。
「日中民間交流対話講座」は2020年にコロナ禍の中でスタートし、今回で21回目の開催となりました。
(取材・記事:王小燕、校正:星和明)
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