私はこう生きてきた 長老から若者へのメッセージ ~早稲田大学元総長西原春夫さんに聞く

2021-09-28 20:15  CRI

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聞き手:王小燕

 秋は中国では新学年、日本では新学期が始まる季節です。世界がコロナ禍などで不安定な状況が続く中、若者たちは人生をどう有意義に過ごせるか。若者たちに啓発的なヒントを与えてくれる方にゲストに来ていただきました。
 早稲田大学元総長の西原春夫さん(93歳)は、もともとは刑法の専門家でした。刑法の世界のみならず、「戦争は犯罪の総本山」という認識に基づいて、世界の恒久的平和を構築することをライフワークにしています。現役を退いた後も、世界平和の実現に向けたメカニズムを国際法や平和運動の視点などから模索し続けています。
 西原さんは2020年から、「少なくともまず東アジアを戦争のない地域に」と提言し、平均年齢85歳以上の日本人の長老20人とともに、「東アジア不戦推進機構」をたちあげ、自ら代表を務めて先頭に立って活動を続けています。
 93歳になっても、若者顔負けの元気さを見せている西原さん。健康長寿の秘訣や、人生の過ごし方などをめぐりインタビューしました。

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法学者、早稲田大学第12代総長(1982-1990)西原春夫さん

◆ストレスとともにいるからこそ健康長寿でいられる

――93歳になっても矍鑠(かくしゃく)としていらっしゃる秘訣を教えてください。

 世の中の人々は、ストレスがない方がいいんだと言っています。確かに、ストレスが大きすぎるとノイローゼになったり、体がおかしくなったりすることがあります。ところが、ストレスって、ある程度要るんですよね。

 私は若い時から、運動部のリーダーをやっていました。中学、高校、大学時代はずっと運動部でした。大学時代は、大学紛争を第一線で対応する役職をやらされ、就職した後は法学部長、総長をやらされ……組織の長をやる中で、朝から晩まで頭を使う訓練を受けてきました。しかも、ものすごいストレス受けるんですよね。そういう訓練を受けてきたんです。

――体とともに頭も使う。そして、それが結果的に良い訓練になったということですか。

 はい。私は本来、線の細い敏感な文学少年だったんですよ。人の言うことを気にして、泣き虫でした。その後、朝から晩までものを考えるような生活を送ってきました。そのため、93歳になった今でも、物事をやる時の手順を朝から晩まで考えているわけです。それで、課題がなくなったら、次の課題を作り出す。だから、若いのだと私は思います。

 つまり、頭を使っていないと体が動かなくなります。頭を使うと、体中の細胞が沸き立ってくる。そうすると、体も元気になると思っています。だから、定年を過ぎても仕事をしていたり、趣味をやっている人のほうが健康長寿なのです。

◆人生の意味を満足させることこそが人間の存在意義

――人生には喜怒哀楽はつきもので、時には悲しい出来事やダメージを受ける体験もありますが、そういったものとどう向き合い、立ち直ってきましたか。

 私は若い子供の時は涙もろく、多情多感な文学少年でした。そのままでしたら、いろんなことに耐え切れず、今日の私はなかったと思います。それが、そういうものに耐えられる力をつけてきたことで、それを防げたのだと思います。

 それだけじゃなくて、そういう中で、私が段々と思いを強くしたのは、良いことも悪いことも、全ては天のシナリオなんだということです。そのように感じるようなことが、積み重なってきたんですね。年を取るにつれて、感情が少し鈍くなってきたこともあるかもしれないけれども、全ては天のさしずなんだと、嘆いてもしょうがないという考えがだんだん強くなってきたから、喜怒哀楽を越えられるようになったんだと思います。

――自分の追い求める目標があることも不可欠のようですね。

 さっきも話しましたが、私は線の細い文学少年でしたから、対立や喧嘩が嫌で、自分がするのも嫌ですし、人が喧嘩するのを見るのも嫌なんですね。そういうわけで、周りで喧嘩があったらそれを止めたくなる。そういう経験を段々と積んできました。「東アジアを戦争のない地域にしましょうよ」という提案をするのも、そこから出てきたのかなというふうに思うんです。

 安全保障の理論というのは、どこの国でも敵が攻めてきたら、どうやって国を守るかが本旨なんだということを、誰もが認めているわけですよ。だからこそ軍事力を持って、軍事力を拡張して、他国が攻めてきても防衛しようっていうことをやるわけでしょう。しかし、考えてみると、「敵が攻めてきたら」と考えるのは、却って敵を想定し、相手を敵に回してしまう側面がありますよね。

 そこで、私が考えたのは、攻めて来ないようにすりゃいいわけです。つまり、対立が簡単に解決しないなら、一つ高い次元に立つ。それにより、物事は解決できなくても、それが戦争に至らないようにすることができるというふうに考えています。それを私は「超克の理論」と言っています。今でも毎日、どうすればそれをもっと多くの人に届けて発信できるかを考えています。だから、元気なのだと私は思います。

――人間が生きることの究極の意義についてどうお考えですか。

 人間というのは威張っているけれども、まったく偶然にこの世に存在したわけですよね。だから、「どう過ごそうと勝手だ」と言えば、勝手なんですが、ただ人生っていうのは、たった一回しか与えられないわけですよ。数十年、長くても百何年です。

 そこで、私はこういうふうに考えています。せっかく与えられた人生の意味を満足できるようにするために、人間はこの世に存在する。自分がこの世に存在することの意義をできるだけ大きくするというのが、人間のあり方として一番望ましいんじゃないかと思います。これを人生の目標にすべきではないでしょうか。

 何を大きいと考えるか、どうやって大きくするか、これは人によってまったく違う。自分で学ばざるを得ないものです。これはある程度、今の若い方にも理解していただける生き方じゃないでしょうか。私はそうやって生きてきたつもりでいます。

(整理:王小燕)

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王小燕