北京
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新型コロナウイルスの発生源をめぐる調査の話題をする際、ここのところ、米ノースカロライナ大学と同大学チャペルヒル校のラルフ・バリック教授が世界から注目されています。中国の陳旭駐ジュネーブ国際機関代表部大使は世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長に書簡を送り、「『公開調査』を受ける必要のある実験室は、米陸軍の医学研究施設『フォート・デトリック』のほか、ノースカロライナ大学の実験施設の名をあげられる」としています。中国外交部の定例記者会見でもラルフ・バリック氏の名前が度々言及されています。
ラルフ・バリック氏は「コロナウイルス・ハンター」として知られ、コロナウイルスの合成と遺伝子改変を数十年にわたって研究してきた実績があります。イタリア放送協会(RAI)のインタビューに答えた際、バリック氏は、「いとも自然な形でウイルスを改造することができる」と話したことがあります。
イタリア放送協会のインタビューを受けるラルフ・バリック氏
バリック氏はインタビューの中で、自身が約35年にわたってコロナウイルスの研究を行ってきたと話し、「21世紀の最初の20年、コウモリから発見された新型コロナウイルスは5、6種類に達した」と明らかにしました。
バリック氏は、コロナウイルスの遺伝子断片から生きたウイルスを培養できるだけでなく、遺伝子を組み換えて新しいコロナウイルスを作り出すこともできます。
バリックチームのこれまでの歩みをピックアップしてみますと、以下のことが分かりました。
2003年10月28日、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの「復活」に成功。
2008年10月14日、コウモリから採取したコロナウイルスの遺伝子を組み替えて合成したSARSウイルスは、培養細胞とマウスでの感染力が確認。
2008年11月27日、組換えSARSウイルスが将来のウイルス株への潜在的な予防の扉を開きました。
2015年11月9日、SARSウイルスと類似性の高いループ型コウモリコロナウイルス群が、人に感染する潜在力を示しています……
バリック氏が長年取り組んできたウイルス遺伝子の組み換え研究は、コロナウイルスの感染力を拡大させるという意味の「機能獲得変異研究(Gain of Function=GOF)」だとも見なされています。
ノースカロライナ大学が長きにわたって、コロナウイルスの合成と改変をする極めて複雑な能力を持っているものの、ウイルスの漏えい事件も頻繁に報告された実態もあります。2015年1月から2020年6月1日までの5年間だけでも、同大学が米国国立衛生研究所(NIH)に28件のセキュリティ事件を報告しました。中には、SARS、MERSと新型コロナウイルスに関連する漏えい事件が6件を数えています。しかし、詳細については公開されていません。
これら一連の動きを受け、中国外交部の汪文斌報道官は、「米国は、武漢ウイルス研究所が行ったコロナウイルス研究が新型コロナウイルス感染症を引き起こしたと中傷し続けているが、米国こそがこうした研究の最大の支援者と実施者である実態がある。とりわけ、ノースカロライナ大学のバリック研究チームはこの分野の権威で、早い時期から非常に熟達したコロナウイルスの合成と改変能力を持っている。バリックチームおよびその実験施設を調査すれば、コロナウイルス研究で新型コロナウイルスが合成される可能性や関連の実態を突き止めることができる」と指摘しました。(玉華、Yan)