東アジアの平和教育の最前線では~中日韓平和教材実践交流会の取材~(後編)

2021-08-05 18:20  CRI

 中日韓三か国の教職員組合や教育研究団体の関係者、小中高等学校の歴史教員ら約40人が3日、リモート形式で開かれた「第10回中日韓平和教材実践交流会」で議論した内容を抜粋して紹介します。

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第10回中日韓平和教材実践交流会・北京会場

◆「人間愛は国境や民族を越えられる」  史実の提示を重んずる中国の教科書

 今回の交流会の参加者には、南京だけでなく、北京、上海の教育者も出席しました。

 北京匯文中学校の歴史教員・段明艶さんは、中日双方の戦争体験者や関係者らの手紙を授業で紹介し、戦争が人々にもたらした傷の深さを伝える実践をしてきました。段さんが挙げた例には、1940年に八路軍の聶栄臻元帥が、砲撃で死亡した日本人副駅長夫妻の幼女美穂子を日本軍兵舎に送り届けた際に託した手紙や、1938年の武漢会戦で戦死した中国人と日本人空軍兵士の遺族間で交わされた手紙、1939年に浙江富陽の東洲防衛戦で、18歳で戦死した中国人青年・王晋藩の遺体から発見された父親の手紙、およびその手紙を見て深い感銘を受け、のちに自身の中国名を「王晋藩」とつけた日本軍少尉・橋爪辰男の話などがありました。

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北京匯文中学校の歴史教員・段明艶さんの発表資料から

 そういった手紙で明かされた具体的な事例を通して、生徒たちからは「平和な生活の尊さを思い知らされ、国境や民族を越えた人間愛を感じた。家族愛や愛情こそ人類が相通じ合う感情だ」「友愛、寛容、真心は敵対を解消するが、憎しみや戦争は災いと苦しみしかもたらさないことが良く分かった」などといった感想が届いたそうです。

 また、交流会で総括報告を担当したのは上海市奉賢区教育学院の歴史教員、朱志浩さんでした。中国の中学・高校の歴史教育の指導方針について、生徒たちの「国を愛する思い」「家国情懐(家族と国を同じように重視する思い)」の育成を重んじることや、戦争の残酷さを伝える部分と平和の尊さを伝える部分の配分に関する質問が出されました。これに対し、朱さんは「中国の歴史教科書において、中国侵略日本軍の暴行に対する記述は、“法廷での裁判”、“経験者の回顧録”、“第三者の証言”などの客観的史料に由来したもので、いずれも検証可能な裏付けがあり、この部分の歴史を客観的、理性的にとらえる中国の姿勢をあらわしている。戦争の残酷さを伝えるだけでなく、平和教育も同等に重要な扱い方で、その内容は様々な単元に散在して強調されている」と紹介しました。その上で、「教え子たちが歴史について十分に理解し、歴史を尊重すること、そして未来を展望し、恒久平和と共同繁栄、開放を求めることによって初めて、包容力ある世界の構築が可能となる。中日韓三国の共通した努力があれば、教え子たちは必ずや東アジア、ひいては世界平和を守る中堅の力になれると信じている」と期待を寄せました。

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上海市奉賢区教育学院の歴史教員、朱志浩さん

◆「いつか共通教材で授業したい」 三カ国の取り組みが世界に広がるように

 交流会は活発な雰囲気の中で開かれ、参加者からは「これまで以上に認識を深めた。歴史を振り返る時、加害と被害の関係をうやむやにさせてはならない。子どもたちに平和の種を蒔くこと、そして、その種を豊に育てていく土壌を育むことが大事だ」、などといった感想が述べられました。

 総括の部で、中国教育科学文化衛生体育工会の呉薇副主席は「歴史教科書には平和教育を担う重責があり、客観的かつ公正に歴史を記録し、伝える必要がある。被害者であれ、加害者であれ、史実を客観的に記録し、重大な史実がもたらした結果と影響力について基本的な共通認識に達する必要がある。歴史教科書は知識を教え込むこと以上に、生徒たちを歴史の出来事と向き合わせ、そこから学ぶよう導き、また、狭隘なナショナリズムを乗り越え、いのちの尊さ、平和、友情など人類に共通した美しい思いへと関心を向けるよう指導する必要がある」と指摘し、「歴史教員がそうした人間作りに向け、良き道案内人になってほしい」と期待を述べました。

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中国教育科学文化衛生体育工会・呉薇副主席

 韓国全国教職員労働組合の鄭昭英副委員長は「三カ国の教師たちの歴史に対する認識、生徒と共に行った様々な実践活動はいずれも人情味に溢れたもので、心を強く打たれた。交流を通してアジアの平和に向かって進む自信を高めた。今後も三カ国の教師や教職員団体が平和という人類共通の目標に向かって努力し、そうした努力が世界の他の国にも広まり、交流が一層深く、持続的なものになってほしい」と話しました。

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韓国全国教職員労働組合・鄭昭英副委員長

 日本教職員組合の西原宣明書記次長は過去10回の開催を振り返り、「これまでの十数年間、それぞれの国から出されたレポートが響きあって、参加者全員で一つの教材を作っているような感じがした」と話したうえで、三カ国の教師が一次資料を掘り起こすための取り組みを行ってきたことを高く評価し、「深く敬意を表す」と述べました。さらに、決まった形に子どもを押し込むのではなく、学校教育を終えてから、どのような社会を作るかということを展望できるよう、子どもたちが一を聞いて十を知るよう導く教材作りや教育実践をすることの重要性を指摘しました。

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日本教職員組合・西原宣明書記次長

 西原さんはまた、交流会の開催によりそれぞれの国が抱えている課題を知ったと話し、「いま各国で行われている実践が将来、それらの課題を乗り越える上の一助になると、教育の力を信じたい。いつか共通教材で授業できるように今後も交流を深めていきたい」と、交流継続に寄せた期待を示しました。

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第10回中日韓平和教材実践交流会

【リンク】中日韓平和教材実践交流会について

 中日韓青少年平和主義教育の推進、青少年を対象にした正しい歴史認識の育成、アジア平和の守護をモットーとする「中日韓平和教材実践交流会」は、三か国の教職員団体、歴史教員、教育研究者らの交流の場として、2006年に正式に発足しました。それに先立ち、2003年~2005年には、中国と日本、日本と韓国の二国間で毎年交流会が開かれてきました。「世界反ファシズム戦争勝利60周年」にあたる2015年には、日本側の提唱により、三か国の交流メカニズムの設置を中国、韓国の関連団体が受け入れました。2006年~2007年は日本教職員組合(JTU)、中国教育科学文化衛生体育工会(CESCHSWU)、韓国教員団体総連合会(KFTA)の三団体でしたが、2008年から韓国全国教職員組合(KTU)も加わり、「三国四団体」の交流の場として、持ち回りでこれまでに9回の会議を開催してきました。10回目の交流会は2020年を予定していましたが、コロナ禍の影響で1年延期となり、KFTAは事情で参加を見合わせ、「三国三団体」で開催されました。

(取材・記事:王小燕、写真提供:中華全国総工会)

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【CRIインタビュー】

 東アジアの平和教育の最前線では ~中日韓平和教材実践交流会の取材~(前篇)

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◆ ◆

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