酒の香りも路地の深さを恐れ:千年の黄酒の復興への道

2021-07-08 16:08  CRI

 「暑い夏、お酒のアイスクリームを一本いかがですか」

 2016年、浙江省紹興市の中国黄酒博物館は黄酒味のアイスクリームを発売し始めた。 低いアルコール度数や斬新な味わいによって、発売後1ヵ月で1万本以上売れた。

 「黄酒」は紹興市の名物だ。日本では紹興酒と言ったほうがなじみがあるかもしれない。現在、黄酒アイスクリームだけではなく、黄酒ミルクティー、黄酒プリンも人気を集めている。黄酒のデザートシリーズは、紹興観光の重要な要素となっている。

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紹興のレストランで提供されている黄酒プリン=臧赫撮影

 黄酒アイスクリームのアイデアを最初に考え出したのは、中国黄酒博物館(以下、黄酒博物館)のマーケティング部副部長である阮帥さんだ。彼は、「各地で観光地の特徴を表すアイスクリームなどの文化クリエイティブ商品が出ているのを見て、黄酒とアイスクリームを組み合わせるというアイデアが生まれた」と語った。この人気商品に対して、阮帥さんは「当時、何のマーケティング戦略もなく、ただ紹興文化を象徴するものとして、黄酒をより多くの人に知ってもらおうと考えていた」と述べた。

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黄酒アイスクリーム(ブログ「舌尖杭州」より)

 黄酒博物館によると、世界には黄酒、ビール、ワインという三大古酒がある。今、中国人がよく飲む白酒は蒸留酒の一種で、明王朝の初めごろに(今から653年ほど前)中国に入ってきたが、それ以前の文学におけるお酒は、みな少なくとも黄酒と関係がある。お酒の起源には、「空桑偶得」という説がある。当時、人は食べ残しを桑の木の穴に貯蔵し、うっかりそれを忘れてしまった。思い出した時に、食物は発酵して甘く香りのあるものになっていた。「空桑偶得」はそういう意味だ。歴史的に見ても、王羲之、李白、陸遊などの名士もみな黄酒と縁がある。

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『世界には黄酒、ビール、ワインという三大古酒がある』=臧赫撮影

 しかし、いま多くの人の印象の中で、黄酒は台所の調味料として、油や塩、味噌と同じ立ち位置にある。様々な原因で黄酒は歴史の「深い巷」に封印され、今もその市場シェアは歴史的地位にふさわしくない。中国酒業協会が今年4月に発表したデータによると、2020年、中国の酒造産業全体の売上高は8353億3100万元で、黄酒の売上高は134億6800万元で、わずか16.1%であった。黄酒は紹興人の生活の一部だが、その消費には明らかな地域的特徴もあり、江蘇・浙江・上海市場の販売量は黄酒市場全体の70%以上を占めている。いかに黄酒を広く知られるようにするかは、業界の悩みになっていたのだ。

 そこで、浙江省政府は2015年、黄酒を歴史的古典産業に組み入れ、「黄酒産業の伝承発展の推進に関する指導意見」を発表した。紹興市は「千億元級産業」という目標を掲げ、5年以内に黄酒の年間生産高を千億元以上に引き上げる計画を提案した。黄酒産業は次の発展機会を待っている。

 近年、紹興酒も継続的に革新を図っている。多くの人のイメージでは、黄酒は度数が低い。しかし、実際にはビールの5〜6倍の度数で発酵しているうえに、ポリフェノールやアセトアルデヒドなどの成分も含まれているため、飲むと酔いやすくなる。江南大学と浙江省古越竜山紹興酒株式会社(以下、古越竜山)は研究所を共同設立し、伝統的な酒造りの技術に基づいて、科学技術で「酔いやすい」成分をコントロールし、快適さを高め、より良い風味のある新商品「好酒不上頭」を発売した。

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黄酒博物館の体験コーナーで発酵している黄酒=李玥撮影

 「紹興酒は天下に通じる」。黄酒や紹興というと、阮帥さんは面白いことを思い出した。紹興市長が日本に行ったとき、紹興を紹介していたが、しばらくの間、聴衆はやはりあまり深い認識を持っていないようだった。しかし、紹興酒の話をすると、「ああ! 紹興酒か!」と知っている顔をする。日本では、やはり紹興酒は文化の象徴のような存在だ。

 そのため、紹興市の黄酒業界協会は、千億の産業を構築し、黄酒の香りが世界中に漂ってほしいという目標を打ち出した。紹興市黄酒業界協会のデータによると、2020年の黄酒の累計輸出引き渡し額は1億9500万元で、紹興黄酒企業の累計輸出引き渡し額は1億30万元で、世界の黄酒産業の66.67%を占めている。

 そしてついに、今年3月、古越龍山はドバイ国際博覧会の中国館の宴会場の指定黄酒に、また6月には2022年第19回アジア大会とアジアパラリンピックの公式サプライヤーに決まった。このような契約は紹興酒産業に商品の品質を向上させ、紹興酒の世界進出を促進させる。

 協会の徐明光会長は、「紹興が本格的に『紹興黄酒』ブランドを開始し、中華民族の千年の黄酒文化遺産を世界で共有できる素晴らしいお酒の歴史と文化として普及させていく」と述べた。

 中国には、「酒香不怕巷子深」(良いお酒は奥まった路地で売っていても、自然と香りに惹かれるのでお客さんが来る)ということわざがある。しかし、実際のところはお酒がいくら芳醇でも宣伝しなければ売れないのかもしれない。清末からの長い間、黄酒は紹興に隠れ、歴史の「深い巷」に封印されていた。政府と企業の努力に伴い、「路地」の奥を指す「道札」が一枚一枚立てられ、ますます多くの人が黄酒の歴史を知り、民族の味覚の記憶の奥に潜む芳醇な香りを味わうことができるようになっていくことだろう。(文:臧赫)

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