北京
PM2.577
23/19
新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に影響を及ぼし続ける中、中国に進出した日系企業が受けた影響は限定的であり、中国での事業展開に対する本社からの期待が高まる傾向にあることが分かりました。中国日本商会が16日に公開した「中国経済と日本企業2021年白書」で明らかにしたものです。
「中国経済と日本企業2021年白書」 記者会見の様子
同白書は、日本貿易振興機構(JETRO)が毎年実施している「アジア・アセアニア進出日系企業実態調査」の結果として、在中国日系企業は2020年度、感染症の影響を受けながらもそのマイナスの影響は比較的限定的だったと指摘。そのうえで、複数国で事業展開する日系企業全体の2020年営業利益の見通しは、「黒字企業」の割合は主要国平均では2019年調査の65.5%から16.6ポイントも低下し、過去最低の48.9%となったのに対し、在中国の日系企業は前年調査の68.5%から5ポイントの下落で踏みとどまり、63.5%という高い水準を維持していると示しました。
「中国経済と日本企業2021年白書」から(28ページ)
また、在中国日系企業の生産地の見直しなどに関する意向調査の結果について、「大規模な移転や撤退は起きていない」としました。そのうえで、「新型コロナウイルスの感染拡大」や「通商環境の変化」による「生産地の見直し予定」の項目では、予定が「ある」と回答した製造業企業は中国では7.2%と限定的で、92.8%の企業が予定は「なし」と回答したと示しました。さらに、「日系企業は経済がグローバル化し、サプライチェーンが複雑に絡み合った状況の中、今後も中国とともに発展しようとしている」と日系企業の中国市場と向き合う姿勢を指摘しました。
「中国経済と日本企業2021年白書」から(30ページ)
中国日本商会にとって、今回は去年に続いてコロナ禍を背景にした白書となります。国際的な人の移動が感染症で影響を余儀なくされている中、発表会に出席した中国日本商会の御子神大介会長は、「日中両国において、科学的・合理的な方策により、感染抑制と人的往来再開の両立を進めることが求められている」とし、日本との直行便の早期再開と路線増便を含め、ビジネス往来の利便性向上を訴えました。
「中国経済と日本企業白書」は中国各地の日系企業が直面するビジネス環境上の課題を分析し、解決のための方策を中国政府への建議として、2010年から毎年刊行されています。2021年版白書は、日系企業8,560社を対象に意見を収集してまとめたものです。
(取材・記事:王小燕)