「武漢は良いところ」自負する作品を世界に ~ドキュメンタリー監督・竹内亮さんに聞く~

2020-07-01 00:12  CRI

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聞き手:王小燕

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 2020年6月現在の武漢の様子を取り上げたドキュメンタリー「お久しぶりです、武漢(中国語題:好久不见,武汉)」が今、中国、日本ともにインターネットで大変話題を呼んでいます。南京を拠点に活動している日本人監督・竹内亮さん(41歳)が率いる制作会社「和之夢」の最新作です。長さ1時間1分の長編ですが、26日夜にアップされた後、30日現在、YouTubeでの約21万回も含めて、再生回数は計3000万回にも上り、その数は今も更新され続けています。
 ロケは6月1日~9日に行われ、竹内さん自身がリポーター役として出演しています。自身の公式ウェイボーを通じて募集した10組の市民を訪ね、彼らの案内で市場、病院、名所旧跡、ショッピングモール、回復した感染者の自宅、夜の屋台などを回り、会話を交わしながらその心の奥に迫り、現在の暮らしと未来への展望を聞き出す構成です。
 武漢で暮らす人々と共に作り上げたこの作品に込めた思いを竹内亮さんに電話でインタビューしました。

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武漢っ子の思いに寄り添い ファンと共に作る

 「武漢でロケをしたい」

 今年の春先、竹内さんは日本人に防護意識の向上を呼び掛けるドキュメンタリー「緊急ルポ 新規感染者ゼロの街 新型コロナ封じ込め徹底する中国・南京を歩く」を2本作りました。「このルポの最終編は武漢で撮影したい」という思いをその時からずっと温め続けてきました。

 「武漢と聞くと、『いまだに感染者がたくさんいる、恐ろしい町』という2月のままの印象で見ている人がいる。今の武漢の本当の姿を世界に伝えたい」

 5月中旬、竹内さんは武漢ロケに向けて本格的に動き始めました。

 スケジュールの都合上、一回の出張は長くて10日ほど。そこに住んでいるわけでもなく、ましてや外国人である自分が限られた日数の中で、取材対象者に「素早く心を開かせる方法」はないかと知恵を絞りました。そして、「武漢にいる番組のファンたちと一緒に作品を作る」という「僕らでしかできない」ことを思いつきました。

 「ファンの方なら、私のことを信頼してくれているので、自己紹介の段階を一気に飛び越えて、会った瞬間から心を開いてくれます」

 ウェイボーアカウント「竹内亮監督」は、219万人のフォロワーがいます。そのウェイボーで出演者の募集を呼びかけたところ、ひっきりなしに連絡が入ってきました。取捨選択にかかる時間を考え、100件を過ぎたところで泣く泣く打ち切ることにしました。

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 その後の作業は、「社員に一人ひとり(の希望者)に電話をかけさせ、まずは20人に絞ってもらいました。その後は、私が『外国人でも知っている話題に関係する人』ということを基準にして10組を選び出しました」

 出演した人たちは様々です。華南海鮮市場で毎日買い付けをしていた日本料理店の経営者、わずか10日間で建てられた病院「雷神山病院」の作業員、宅配便の配達員、「仕事をやめよう」と思っていたのに、自ら隔離病棟での勤務に名乗り出た看護師、初期の感染人数の急拡大で入院治療できずに祖父を亡くした女性、コロナ終息後に閉店を余儀なくされたアート教室の経営者、ドローンを飛ばして封鎖中の武漢の撮影を日々続けていた英語教師……武漢で生きる一市民ではありながらも、それぞれに光り輝くものがあります。

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 「武漢の人は、感染が一番厳しい時の武漢だけではなく、『武漢の本来の姿』にもっと注目してほしい。そういう気持ちがすごく強かった」

 そんな「武漢っ子」の心を竹内さんは丁寧に受け止めました。その気持ちに応えるかのように、取材に行った先々では出演者から必ず「取材してくれて、ありがとう」という言葉がありました。これは竹内さんに深い印象を残しました。

 話を聞く中では、生と死に絡む現実もありました。そんな時は、「過去はもちろん聞きますが、あまり深くは聞かない。こちらから深い傷を掘り起こしても意味がないと思ったからです。過去よりも今の武漢、今後の展望にフォーカスしたい」と心掛けていたことを明かしてくれました。

  スムーズに行われた取材

 ドキュメンタリーの冒頭で、南京から武漢に向かう高速鉄道に乗り込んだ竹内さん。番組ではやや不安そうな表情と共に、「正直、不安な気持ちもある」と心の内をナレーションで語っています。

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 ところが、状況は到着した瞬間から変わりました。肩の力が抜けたからか、武漢駅を背に「何も起きていなかったようだ」と、その場に立っているからこそ感じる言葉を口にしました。そして、最初の出演者である日本料理店の経営者との初対面。先方が手を差し伸べる際、開口一番の挨拶は「僕はPCR検査を済ませています」でした。その言葉に対し、「武漢の人は他の地方から来た人にそこまで気を使うのか」と複雑な気持ちもありましたが、「今の武漢はとても安全な町です。1千万人にどうやって核酸検査をしたのか、想像もつかないことですが、全員に検査を実施しました」と驚きの声を上げていました。

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 来る前、取材は困難にもぶつかるだろうと覚悟をしていました。しかし、実際には、「何の問題もなく、南京でロケするのと大して変わりはない。町は普通に開放しているし、マスクをしていない人もいて、夜の屋台もにぎわっていました」と感じました。目の前に広がっていたのは普通に雑踏がある町でした。

 一方、決して楽観視できない現実も目の当たりにしました。それは、都市封鎖が経済に残した深い爪痕でした。

 滞在中、学生街でカレー屋を経営する旧知の日本人、島田さん(73歳)の店を3年ぶりに訪問しました。店は再開していましたが、「客はまったく入っていない」状況でした。というのも、大学が再開していないため、主な客層である学生たちも戻ってきていないからです。

 「今の武漢は、新型コロナそのものの影響は完全に過ぎ去りました。ただ、多くの犠牲を払ったので、今は経済の立て直しという大きな課題があります。感染が終息したから、武漢に関心を持たなくなるのではなく、引き続き関心を寄せてほしいです」

武漢の応援は遊びに行くことから

 「年内に必ずまた遊びに来ます」

 竹内さんは番組でこう予告しました。毎年、年末に南京で開催してきた「私がここに住む理由」のファンミーティングを「今年は武漢でやりたい」と考えています。しかも、「全社員を連れての武漢訪問」という行動による武漢応援です。

 ファンミーティングはこれまで、南京では300~500人規模で開いていました。武漢だと地元政府に申請を出して判断を待つことになります。それでも、武漢にこだわる理由は、「皆で武漢に遊びに行ってほしい。少しでも武漢の経済に貢献できれば」という強い思いがあるからです。

 ただし、そこで繰り返して強調していたことは、「コロナとは関係なく、武漢は本当に良いところです。行く価値があるので、ファンたちにもぜひ来てほしい」という純粋なものでした。

 ゆっくり武漢を観光したことがない竹内さんは、今回の撮影で黄鶴楼を始め、市内の景勝地を初めてゆっくり見て回りました。「長江沿いの雄大な景色に、豊かな地域の文化、水と暮らす街」という印象だけでなく、実感のこもる食の話は特に熱が入っていました。

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 「朝食の種類が本当に豊富で、選ぶのがつらいと思うほどにぜいたくな悩みです。名物の熱干麺は、わざわざ店を探さなくても、どこで食べてもおいしい。それに真夜中の屋台での串焼きにビール、もう最高です」

 また、作品では、武漢っ子の気質が映し出されているシーンがありました。

 竹内さんが出演者と一緒にタクシーに乗り込んだところ、いきなり運転手さんから「君の中国語は本当にへたくそだね」と笑われました。

 「褒めてばかりだと距離が近づきません。ここでわざとけなしてくれたことで、一気に近くなりました。武漢の人はまっすぐな性格が良いと思います」

 そんな飾らない武漢っ子の魅力について、竹内さんは笑いながら話してくれました。

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「これが本当の武漢」に感激

 「お久しぶりです、武漢」は配信からわずか1日で、再生回数が1000万回を超え、中国の各種プラットフォームでの評価もぐんぐん上昇中です。また、YouTubeでの再生回数も21万回を超えました。

 「ショートムービーが流行っている今、1時間もある作品をわざわざ見てくれた人が多くて、感謝の気持ちでいっぱいです」と竹内さん。

 SNSのウェイボーに寄せられたコメントは1万件を超え、「あまりに多いので、読み切ることができなかった」とうれしい悲鳴を上げるほどでした。

 「記録してくれてありがとう」

 「涙を流しながら見終わりました」

 「皆さんのマスクを顎にひっかけている姿こそ、今、武漢を生きる人々が新型コロナと向き合う際の姿勢そのものだと思います。もう恐れてもいませんが、忘れてもいないということです」

 「武漢で20年余り暮らしてきた人間として、涙が止まらずに見ていました。私自身は幸運にも感染していませんが、過ぎ去った冬に命を預けた人が大勢いました。いつも通りの暮らしがやっと戻ってきたので、本当に良かったと思います。武漢よ、私はこの町をいつまでも愛しています」

 数ある書き込みの中には、武漢出身者のメッセージが多いことにほっとしたと竹内さんは言います。

 「外国人の私が、わずか10日ほどの滞在で、どれだけ武漢の本当の姿をとらえることができるのか、正直不安でした。しかし、大勢の武漢が地元の方から『そうだ、これこそが武漢の真実なのだ』とメッセージがたくさん届き、涙が出るほどに嬉しかったです」

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 そして、湖北テレビのインタビューに話した何気ない一言から、日本人監督としての竹内さんの内心を覗かせてくれました。

 「日本では3.11の時に福島で原発事故がありました。その後、偏見は消えることなく、10年が経った今も行きたがらない人がいます。同じようなことは武漢で起きてほしくはない。私の映像を通して、生き生きとした武漢の普段の姿をぜひ世界に知ってほしい」

 竹内さんと武漢との深い関わりは、これからも確実に続きそうです。

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竹内亮監督による「お久しぶりです、武漢」の番組紹介>

 私たちが撮った「お久しぶりです、武漢」という武漢の今を紹介する1時間のドキュメンタリーは、「外国人の目線で見た、今の武漢」をかなり鮮明に描いていたと自負しています。みなさんが報道でしか見たことがない武漢とまったく違う武漢を見ることができます。たぶん、中国のメディアでも取り上げたことのない武漢です。世界で初めての試みなので、ぜひ、中国の今、武漢の今に興味がある方はご覧ください。

(記事:王小燕、星和明 写真提供:南京和之夢)

【プロフィール】

竹内 亮(たけうち りょう)さん

 ドキュメンタリー監督 番組プロデューサー「和之夢」代表
 2005年ディレクターデビュー。NHK「長江 天と地の大紀行」「世界遺産」、テレビ東京「未来世紀ジパング」などで中国関連のドキュメンタリーに携わる。2013年、南京出身の妻と共に南京市に移住し、番組制作会社「和之夢」を設立。
 2015年より中国の各動画サイトで、中日両国の間で相手国に住んで活躍する人々の生き様を取り上げるドキュメンタリー紀行番組「我住在这里的理由(私がここに住む理由)」の配信を開始。4年あまりで200回に及ぶ番組を制作し、再生回数は6億回を突破。

リンク
お久しぶりです、武漢」の視聴はこちらから

【CRIインタビュー】コロナと戦う中国をありのままに伝えたい~ドキュメンタリー制作者竹内亮さんに聞く

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