和泉元彌ら北京狂言公演、「時空を忘れて笑えた」と来場者

　第20回国際芸術祭「相約北京（北京で会いましょう）」の一環である「和泉元彌――狂言公演」が16日、北京の天橋芸術センター中劇場で行われました。日本から狂言師の和泉元彌さんと姉で「史上初の女性狂言師」の和泉淳子さん、同じく姉で女性狂言師の十世三宅藤九郎さんをはじめ、和泉家の次世代を担う若手狂言師4人が共に舞台に立ちました。公演は和泉元彌さんの中国語での挨拶と中国語字幕付きの狂言解説で始まり、その後、「釣針」「盆山」「棒縛り」の三つの演目が披露されました。舞台の両脇にある電光掲示板には中国語字幕が同時に表示され、狂言師の表情豊かな動きとセリフに合わせて、会場内はたびたび大きな笑いに包まれました。

出演者一同

公演終了後、観客からの握手やサインに応じる和泉元彌さん

　狂言を初めて見るという中国人観客は、「600年前の日本の伝統芸能と聞くと距離を感じてしまうが、実際に見ると生き生きとした生活感に溢れた舞台で、時空を忘れて笑えた」と満足げな表情でした。

　公演終了後、和泉元彌さん三人姉弟と母親の節子さんがCRIのインタビューに答えました。影アナで進行役を務めた節子さんによりますと、和泉家の初訪中公演は31年前の1988年にさかのぼり、その後約25年間続けて北京、瀋陽、上海、石家庄、フホホト、ウルムチ、敦煌など中国各地で公演してきました。節子さんは、「生存、伝承、普及という三本柱の中で、中国の皆様にも応援していただけたことを嬉しく思う。世界の平和を胸に、心豊かに前向きに取り組めば、相手方もきっと理解できる」と文化交流に寄せた思いを語りました。

現場では影アナ進行を務めた和泉節子さん

CRIのインタビューに応じる和泉元彌さん三姉弟

　和泉元彌さんは、「三人姉弟がまだ10代だった1988年に、初めて海外公演を中国で行った。その後31年間のご縁が続いたからこその今回の公演だ」と振り返り、「日中それぞれの人が同じものを見て笑っている。心の交流が生んだ芸能だ。心の交流はこのような舞台をご覧いただく中で生まれるもので、そんな気づきの時間になれたら嬉しい。これからも狂言が心を伝える文化として、両国間の懸け橋になることを望む」と抱負を語りました。

　また、史上初の女性狂言師・和泉淳子さんは、「男女が一緒に舞台に立つという和泉流狂言の姿を見ていただきたい」と思いを話し、観客たちの笑い声を受けて、「『日本と中国が一緒になったな』と思い、客席の一体感を感じる舞台だった」と確かな手応えを示しました。そして、小学生から高校生までの次世代狂言師4人の共演については、「自分たちの初海外公演と同じ年齢になった子どもたちにも、財産にしてもらいたい。両国間は伝統芸能をもって交流ができ、さらにそれが未来につながっていくことを感じて頂きたい」と感想を話しました。

　また、中日国交正常化の年に生まれたという三宅藤九郎さんは、「言葉や文化が違っても、同じ笑いが共有できることを確認できた瞬間が狂言師として何よりも嬉しい。仲良くなろうと思う時に、同じ瞬間に笑えるというのは一番強い絆になると思う。普段の生活の中でも互いの違いを理解しながら、同じ瞬間で笑えるという気持ちが広がればと思う」と両国の交流拡大に期待を寄せました。

　第20回国際芸術祭「相約北京（北京で会いましょう）」は1月6日に開幕し、2月4日までの約1カ月間に12カ国の芸術団体、700人以上のアーティストによる60公演が行われる予定で、今年の主賓国は日本です。「和泉元彌―狂言公演」は16日と17日の二日間にわたって北京天橋芸術センターで公演されます。

2004年に中国で翻訳出版された和泉元彌著『私の狂言の道』

（取材＆記事：王小燕、星和明）