<新中国成立70周年特別企画>独占インタビュー:三橋貴風

2019-10-09 16:23  CRI

<新中国成立70周年特別企画> 

 新中国の歩みは、様々な文化が栄え、世界各国の文化との交流・融合が進む70年間でもありました。その最たる例として挙げられるのが、古代中国で誕生した楽器「尺八」の現代史です。尺八は発祥地である中国ではすっかり姿が見られなくなっていました。ところが、近年になってじわじわと尺八ブームがやってきているのです。その背景には、中国の伝統文化に目覚める人が増えていることや、日本のACG(アニメ、コミック、ゲーム)のBGMなどで耳にし、その音色に魅了された若者の存在などがあります。「かつて日本に渡った尺八は、どのように伝えられ、それが現代の中国の若者にどう影響しているのか……」このような内容をめぐり、3年間にわたる綿密な取材を通して制作されたドキュメンタリー映画『尺八:一声一世』も、この5月に全国公開されました。

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5月に全国公開したドキュメンタリー映画「尺八:一声一世」のポスター

 「現在の尺八は、正倉院に現存する尺八と比べると音階も形も違います。それは、竹の根っこを使っていることや、指孔が1つ少なく、5つしかないことなどです。『よくぞ変わらずに伝わった』と思えるのは歌口の形で、この歌口による表現力豊かな音は、未来永劫に不滅だと思っています」
 尺八を手にそう語るのは、紫綬褒章の受章者でもある尺八奏者の三橋貴風さんです。その道の大家として、日本でも多忙な日々を送る三橋さんですが、近年は毎年10回ほど中国を訪れて演奏や指導を行っています。中国でその指導を直接受けている弟子の数は、すでに百人に上ります。
 1983年に中国交響楽団との共演のために初訪中をしていた三橋さんですが、このように頻繁に中国を訪れるようになったのは最近のことです。その一番のきっかけは、自身よりも年上であった愛弟子で、中国で精力的に尺八の普及活動をしていた神崎憲氏の逝去だと振り返ります。
 神崎氏は1973年、大阪外大中国語学科の卒業で、流暢に中国語が話せ、中国人の弟子に対して直に中国語で尺八を教えていました。十年余りにわたるその地道な努力により、中国の尺八人口は千人ほどに上ったとも見られています。神崎氏は惜しくも2015年2月、66歳の若さで逝去しました。師匠の不在により稽古をあきらめる人が続出する中、中国人の弟子の招請を受け入れた三橋さんが、指導のために中国入りするようになったのです。
 9月27日、北京の尺八愛好団体などの招きを受け、公開講座と特別指導を行うために北京入りした三橋さんにインタビューを行いました。

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講演中の三橋氏
9月27日夜、北京方庄青少年活動センターにて

■“未来永劫に不滅の音色”で結ばれる日本と中国

ーー三橋さんは1983年、中国交響楽団との共演で初訪中したそうですが、当時の印象は?

 自転車が多かったのを覚えています。また、演奏者の方のコスチュームも今とちょっと違う感じがしました。あの当時は、その地方に行くと、その地方のものしか聞けなかったですが、今の中国の音楽家の方たちは中国全体のものを網羅している方が増えていますね。だから、演奏の間口が昔より広がっていると思います。

ーー尺八は隋の時代に日本に伝わり、様々な変化を経て今の形になったそうですが、現在、日本で使われている尺八の特徴を教えてください。

 今の日本の尺八の特徴は、一つは竹の根っこを使っていることです。正倉院に伝わる尺八は、竹のもっと上のほうを、逆さに使っているんです。根に近い方が歌口に、葉っぱの方が楽器では下になっています。指孔も今の日本の尺八よりも一つ多く、6つでした。そのため音階も形も違っているのですが、正倉院の楽器に残っているこの歌口の部分のこの形によって、いま、我々はいろんな音を出すことができるようになりました。ですから、「よくぞこの形が伝わったな」と本当に思っています。(演奏するのは)難しいですけれども、この歌口による非常に表現力豊かな音は、未来永劫に不滅だと思っています。

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「形が変わっても、正倉院の尺八と歌口は同じである」と三橋氏

ーー演奏活動の他にも、教授職、プロデュース、献曲、新しい楽器の開発、CD等の音源制作などで極めて多忙の日々を送る三橋さんですが、なぜ中国での交流と指導を重視しているのですか。

 (中国に関する取組みは)たいへんに重要なことだと思います。ルーツが中国大陸にあり、日本に伝わった後で、中国では無くなっても日本で残っているものが色々あります。日本に伝わったままの尺八は正倉院にしかありませんが、いま私たちが現場で使っている尺八は、それを日本式に少しずつ変えてきたものです。そういう時代を経たものに、中国の方々がまた興味を持ってくださるということは、非常に重要なことだと思います。

 他からまったく影響を受けずに、たった一つの国だけで文化ができたという歴史は無いと思っています。文化はいろんな大陸を行ったり来たりする、生き物のようです。尺八が良い例ですね。今、日本で時代を経てこうなった尺八が将来、中国の方によってどういう使い方をされるのか、非常に興味があります。

■「同好の士」の多い中国で、「楽器にとってもありがたい」動きも

ーー中国のドキュメンタリー映画『尺八:一声一世』が今年公開されました。三橋さんも撮影に協力されていましたが……。

 あれは大掛かりでした。横浜にある私の家の中にまでレールが敷かれて、そこにカメラを載せて移動させながら撮ったりしていました。僕はあの中で、尺八という楽器の精神背景が一番大事だと話しました。そういうものが中国で公開されているというのは、楽器にとってもありがたいことだなと思っています。

ーー海外での尺八人気と愛好者たちについては、どう思いますか。

 1980年代のアメリカでは、尺八は「禅ミュージック」として捉えられていました。健康食品を食べて、尺八の音楽を聞きながら、メディテーション(瞑想)をするのが精神にも体にも良いと。それが海外における尺八の最初のブームでした。やっぱり同好の士といいますかね。もう国境も言語も越えて、同じことを真剣にやっている人たちは家族みたいな感じです。

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9月27日、北京での公開講座で弟子たちと「虚鈴」を演奏する三橋氏(撮影:韓信)

ーー中国の尺八愛好者たちのイメージは?

 皆さん本当に熱心なんですよ。「これが面白い」とターゲットを決めたら、本当に熱心に練習するんです。歴史まで一生懸命に研究します。日本で尺八を趣味でやる人には、なかなかそこまで興味を持つ人がいませんね。つまり、いわゆるお稽古事に終始してしまう。そういう意味で、中国の若い人のエネルギーはすさまじいと思います。本当に、日本人にもっとそれを知ってもらいたいと思います。

■文化は国家の枠を超える

ーー今年6月6日に東京都内の国立劇場小劇場で開かれた、北京市と東京都の姉妹都市関係締結40周年記念ステージで、三橋さんは日本箏演奏家である奥様の外山香さんと共に、中国古箏の演奏家である常静さんと共演しました。その際に「中国の心で演奏する」とおっしゃっていましたね。

 たぶん、楽器を演奏する人って結構そういうことがあると思います。僕は今まで、いろんなタイプの音楽をやってきたんですよ。グレン・ミラーという古いジャズをやったり、ロックの人とやったりすることもあります。クラシックではチェンバロとやったり、いろんなことをやっています。そういう自分たちの音楽でない音楽を演奏する時、自分が尺八という楽器をやっていることを忘れちゃうんです。だから、吹いているのは尺八ですが、やっている音楽には、そのタイプの音楽の感覚が入っちゃいますね。だから、中国の音楽を吹く時には、おそらく中国の人の感性で、「この音楽はこう捉えて、こう歌うんだろうな」という気持ちのほうが強くなるんです。

文化というのは、国家の枠を超えていると思いますよ。

ーー最後に、新中国成立70周年に寄せる期待をお聞かせください。

 中華人民共和国70周年、まことにおめでとうございます。今後は中国も近隣の色々な国々の文化と交流をますます深めていただきたい。お互いの違うところ、共通するところを認め合ってこそ、さらに明るいアジアの未来が開けていくと、僕は思っています。

【プロフィール】

三橋 貴風(みつはし きふう)さん
尺八奏者。琴古流尺八大師範。琴古流尺八貴風会家元。

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1950年に東京都で生まれる。日本音楽集団所属。洗足学園音楽大学教員。大阪音楽大学客員教授。海外の交響楽団からのソリストとしての招聘も多く、ニューヨーク・カーネギーホール等での演奏も多数、海外及び国内でのリサイタルも150回を数える。普及用の合成樹脂製の尺八「NOBLE管」を開発、特許を取得。またうちなー(沖縄)尺八を開発し実用新案を取得。現在、演奏や指導で毎年中国へ10回以上訪問。直接指導を受けている中国人の弟子が100人を超えている。

(聞き手・文責:王小燕、梅田謙、写真:張強)

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