北京
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毎週お届けしている「チャイナビジョン2018」、今回は、今年中国で話題となっているAI通訳機についてお送りします。
お相手は私、みん・いひょうです。
AI通訳機を紹介するにあたって、そもそもAIとは何かを考える必要があります。AIという単語については最近ニュースなどによく登場することから、お聞き及びの方も多いと思いますが、正式にはArtificial Intelligenceの省略形、これではもっと分かり難くなってしまうでしょうか、漢字では「人工知能」と呼ばれるものです。漢字で書くと、少しわかりやすくなりますね。もっと簡単にいいますと、人間の知的ふるまいの一部をプログラムに学ばせ、それを再現し、人間が知能を使ってする行為を機械にさせようとする試み、ということになります。この技術、20世紀には漫画や小説の中のものでしたが、今日では、このテクノロジーを応用することによって、コンピュータに複数の判断方式を教え込み、ビジネスや生活の場における様々な難しいタスクをこなせるようにまでなっています。そして、最初のころのチェスをプレイするのがやっとだったこの知能は、今日ではなんと、自動車などの自動運転や、今日ご紹介する通訳の分野にまで応用されるようになっています。
AI通訳機は、その名の通り、AIのテクノロジーを生かした、多言語間の通訳機能をもつ端末のことです。中国ではこの分野に進出する企業が多く、現在市場にはさまざまな種類の端末が出回っています。それらは一般に携帯電話と同じような大きさのポータブルなもので、本体に内蔵されているマイクに向かって話をすると、通訳された違う言語がそのままスピーカーから流れてくるというスタイルをとるのが普通になっています。中には、ディスプレイを持つものもあり、音声をテキスト化して画面に文章を表示してくれるものもあります。そうした意味では「翻訳機」とも言えるものにもなっています。
現在では、AI通訳機を通して、英語、日本語、ドイツ語からタイ語、アラビア語まで、30カ国以上の言語と中国語との対訳が実現されています。中国の企業が開発したものですから、中国語をベースにしているのはもちろんのこと、中国の方言と標準語の通訳もできてしまいます。処理速度の面では、ほとんどは逐次通訳、つまり、発言者と通訳機が交互に話すパターンですが、英語と中国語の通訳では、すでに同時通訳機能が開発され、大きなブレイクスルーを実現しています。
さて、この「AI通訳」の技術的基礎でありながら、同時に難点となる点として、AIの音声識別能力があります。つまり、機械が、人間の言語を如何に正確にキャッチし、理解するかという、まさに言語処理の要となるプログラムが、この技術のカギとなる部分であり、その研究開発には10年間以上の月日がかかったといいます。一方で、言語間の通訳=転換はこの技術の難関ではないといいます。こちらは、AIがデータを収集し、それを学習するだけで、うまく通訳することができるということで、この通訳機能の研究開発にはわずか1-2年しかかかっていないそうです。
そうした開発者の努力を他所に、「AI通訳は正確に訳せるのか?」「本当に信用できるのか」と疑問を抱いている人は少なくありません。そこで、その効果を検証するために、CCTV(中国中央電視台)が最近この「AI通訳機」をめぐる番組を制作しました。
番組で検証の対象となったのは、AIの開発を基幹業務にしている中国のIT企業、科大訊飛(iFLYTEK)が自主開発したAI通訳機の最新モデル「暁訳(シャオイー)」です。検証されるのは、日本語、ドイツ語、アラビア語、フランス語、ポルトガル語、タイ語、ヒンディー語、トルコ語の8言語と中国語との通訳の精度です。番組は、8人の出演者がそれぞれ外国語でクイズを出し、「暁訳(シャオイー)」がすべてのクイズを中国語に訳して、現場にいるゲストに答えてもらうというクイズ形式で進行されましたが、目出度く8問全部正解という結果に終わり、AI通訳の正確さを一定のレベルにおいて見せつけるものとなりました。
番組中、日本語で出されたクイズは「2017年2月、日本の上野動物園で、中国から来たある珍しい動物が出産しました。このイベントに多くの観光客が殺到したことで、動物園の近くにある中華料理のチェーン店も大繁盛となり、その企業の株価も10%上がることになりました。さて、この動物とは何でしょうか?」というものでしたが、これが中国語に訳されると、ゲスト全員が一斉に「パンダ」という答えを口にしました。
もちろん、これはクイズとしてはきわめて簡単なものかもしれませんが、翻訳結果として出力されたのは、文法的にも正確な中国語の文章で、出演者はまずそこに驚きを示しました。また、番組では、原文ははっきりと正確な日本語で、クリアな発音をしていることが前提条件になっていますが、「日常会話または騒々しい環境の中での会話はどうなるの?」と疑問の声も上がりました。この点については、実際に番組では検証できませんでしたが、技術者の話によると、「暁訳(シャオイー)」はこの面でもずいぶんスキルアップしているそうです。ですが、弱点として、「言葉の曖昧さ回避」や「感情表現」、それに詩のような文学作品の通訳と翻訳では、まだ攻略できていない難関があるため、今後はそれらを課題にさらに研究と開発を進めていく方針だということです。
これよりずっと昔から、「AI通訳機は人間の通訳者に取って代わることができるのか」という討論が深められて来ました。これは業界内でも意見が分かれるものですが、現在では観光や国際会議の分野ではこの「AI通訳」がすでに実用化されているのもまぎれもない事実です。技術面の難関攻略の状況によっては、更に多くの分野で応用されていくことでしょう。
「 チャイナビジョン2018」、今日は中国のAI通訳機の現状についてお送りしました。
お相手はミン・イヒョウでした。