2012年は30%成長を目指す
中国と提携してこそ日本の将来は開ける
北京首都空港の出発ロビーの巨大なテレビ画面で、一度見たら忘れられないCMが流されています。身振り手振りを交え、やや日本語訛りの中国語で自社製品を紹介する。その主人公は、キヤノン中国の小澤社長です。
中国メディアからは「マーケティングの奇才」と称えられ、中国のデジカメ市場で不動のシェアNo1を維持しています。
2005年に北京赴任後、社名や製品の表示に中国語を入れ、中国人消費者に覚えやすいよう工夫を重ねました。また、営業のクォリティ向上を目指して、従業員に知らない人にも挨拶できるよう「ニイハオ活動」と題する挨拶回りを徹底させています。
「ゆくゆくは中国人13億人を対象にビジネスを展開していき、一人一人にキヤノンの微笑みを届けたい」
予想だにしなかった激甚災害の影響と、厳しい世界経済の成り行きを背景に、過ぎ去る年をどのように振り返り、やってくる新しい年をどのように展望するのか。中でも、中国市場の位置づけや中国と日本のつながりをどうとらえているのか、マイクを向けてみました。
■ 重要度高まる中国市場 ローカライゼーションで勝負
――今年も残りわずかとなりました。これまでの一年をどのように振り返りますか。
正直に言って、今年ほど異常な年はなかったと思います。東日本大震災とタイの大洪水は今まで経験したことのない災害でした。そのために、物不足が起きて、需要がありながら供給が追いつかず、お客さんに迷惑をかけ、非常に困難な年でした。
――先行きが不安定な世界経済を背景に、中国市場の位置づけをどうとらえていますか。
中国を含めたアジア市場が年々拡大してきており、会社全体におけるポジショニングも、近々日本を抜いて、アメリカ、ヨーロッパとほぼ同じような形になってくるのではないでしょうか。我々の事業の重要な軸の一つになりつつあります。
――中国市場のポテンシャルを見込んで、一旗あげようと意気込む多国籍企業も多い中、優位を確保するための取り組みは?
まず「Delighting You Always」(感動常在)を会社の基本方針にし、お客さんに満足される以上の業務活動をし、常に感動を与えていこうと心がけています。もう一つは、差別化されたマーケティングです。製品はもちろん、マーケティングもサービスにおいても、何か一つでも二つでも違うところを出したいと頑張っています。あと、重要なのは社員のモチベーション、やる気を高めることがポイントかと思います。
――中国の一眼レフとコンパクト・デジカメ市場では、キヤノンがNo.1のシェアを保ち続けています。リードできたポイントはどこにありますか。
まずは、製品が受けいれられていることですね。それから、マーケティングの現地化を徹底するようにしたこと。私が赴任してから、中国語表示を入れるようにしました。例えば、社名は「Canon」と"佳能"、スローガンも「Delighting You Always」と"感動常在"の両方で表示し、製品名も中国語を併記するようにしています。あとは、マーケティングにおける広告宣伝とPRです。キヤノンの印象をよくし、知名度を上げることにポイントをおいてやってきました。
――中国人消費者にとってのみやすさを重視しているのですね。
Canonを見せても、うまく発音できない人もいますが、中国語で"佳能"と書けば、全員が発音できます。「佳能」としてから、キヤノンの知名度が間違いなく上がっています。
■カメラ市場で30%のシェアを目指す
――"感動"をもう一つのキーワードにしたようですが…
2003年、私は香港に赴任したときに、SARSが香港を襲いました。そのときに、医療関係者をはじめ、多くの人が命の危険も顧みずに一生懸命に頑張っていました。その姿を見て、たいへん感動しました。我々も何かしなくてはと思っていろいろやりましたが、その我々のやったことに対して感動して涙を流して、我が社の製品を買ってくれたお客さんもいたんですよ。それを知ってから、「これはいいなあと、そういう感動するようなことをできる会社になりたいなあ」、とその時に思いました。
その後私はシンガポールに赴任し、そこで「カスタマ・ディライト」という言葉と出会いました。これは、「カスタマ・サティスファクション」のさらに上位の概念で、顧客の期待以上の製品・サービスを目指すことを言います。「これはいい」と、カスタマ・デライトのスローガンとして「Delighting You Always」、中国語では、感動が常にある会社、「感動常在」になったのです。
――社員に対して、「13億人にキヤノンからの挨拶を届けよう」ということを強調しているようですね。
中国は大きな国なので、まずは「一線都市」と呼ばれている大都市から販売活動を始めました。中国では、我々がいま認知しているお客さんは2~3億人だと思います。これからさらに、13億人にまでリーチできるよう、一線都市から六線都市へとビジネスを拡大させていきます。
13億人にすべて人生があるので、それをちゃんと記録に残していってもらえば、人生が非常に豊かになるのではと思います。できればすべての中国人にカメラもってもらいたいなと思います。
――その中に占めるキヤノンのシェアをどう考えていますか。
多いことに越したことはないですが、最低でも3割以上を取りたいですね。
(つづく)
【キヤノン中国有限公司】
キヤノン製品の販売、マーケティング会社として1997年に北京で設立。現在、中国全土に21の支社、支店、営業所。社員は約1600人。また、キヤノンのアジア本社も兼ねている。
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