中国のアイスホッケー代表チームに日本人の監督がいる。
そんな情報が入ってきたので、早速、取材に行きました。北京市朝陽区興隆公園近くの浩泰氷上運動センターでした。以前、そのすぐ近くに住んでいたのに、そんなところにスケートリンクがあるとは全く知りませんでした。
朝9時半から始まる、中国のナショナル・チーム「チャイナドラゴン」の練習を指揮していたのは、日本の福島県から来た荒城啓介さん。HC日光アイスバックスや東北フリーブレイズのリーダー、監督として実績を上げてきた方です。
練習の合間に、荒城監督に話をうかがいました。
――荒城さんが中国でコーチをするようになったきっかけは?
今、日中韓でリーグ(*アジアリーグアイスホッケー)をやっていますが、中国の方から今年は参加をしないと言う申し出があって、それで、日本のゼビオ株式会社がサポートすることになったんです。その時、私はゼビオ株式会社に勤めていたので、こちらに来ることになりました。
*アジアリーグアイスホッケー (http://www.alhockey.jp/)
2003年から始まったアジア・アイスホッケー・クラブチームの国際リーグ戦。ロシアが抜け、今シーズンは、2011年9月から12年3月まで、日本(4)・中国(1)・韓国(2)の7チームが6回戦総当たり制で優勝を争っている。
指導している荒城さん
――いらしてどのぐらいですか?
もう2ヶ月経とうとしているところです。
――中国に来る前にいろいろな不安もあったと思いますが?
僕は中国のアイスホッケーをする環境面はどうなんだろうか、という危惧をしてたんですけれど、来てみるとリンクの設備もいいし、食事をする場所もリンクの建物に沿っているし、宿泊施設も徒歩5分の所にあるし、アイスホッケーをする環境は、逆に日本よりも良いような感じで受け止めています。
――荒城さん自身の生活面は?
僕は過去2年、ハルピン、長春にいたことがあります。1月、2月に行ったので、非常に寒くて、正直に言って、あまりいい印象がなかったんです。でも、北京に来たら色んなものがあるし、人も温かくて非常に楽しい日々を過ごしています。
――先程ミーティングがありましたけれど、今日の試合はどうですか?
今回の試合は、主力メンバー3人が怪我で出られないんですが、7試合目でようやくゲーム勘という物を、選手たちが体で覚えた部分があると思うので、最初の20分、まず0で抑えて、いいスタートを切りたいと思います。
――リーグの試合が始まってもう1ヶ月ほどになりますが、成績は?
今まで6試合終わって全敗です。それに、失点も多いです。苦しい戦いが続いているというのが現状ですけど、アイスホッケーは、第1ピリオード、第2ピリオード、第3ピリオードと、20分を3回繰り返すんですが、その第1ピリオードと第2ピリオードの40分までは非常に良いゲームが出来るようになりました。残りの20分をですね、しっかり戦えるようなチームになれば、勝つことも近い将来あるというふうに感じています。
チャイナドラゴンの訓練風景
――チームの皆さんはどうですか。
明るい選手が多いです。僕達(*)は日々一所懸命コミュニケーションを取りながら、「チーム力」を早く作り上げたいと思っています。
*荒城監督の他に、日本人現役選手も5人(GK:酒井 大輔、DF:菊池 秀治、FW:本間 ジェフリー 光一、近藤 勝将、高橋 皓介)応援に来ている。
――「チーム力」と言うことでは、まだまだですね。
そうです。日本人の選手が来てまだ2ヶ月弱で、もう一つ何か足りないと感じています。多分、試合に勝つことが、チーム力の一つ大きなステップを踏む、大きなものだと思っています。
――では、まず一勝ですね。
まず一勝ですね、全てにおいて、まずこの一勝、大きなステップを踏むものだというふうに感じています。
監督のインタビューをしていた時、ちょうどリンクでは子供たちがアイスホッケーの練習をしていました。
――ところで、今日見てたら、お子さんたちが結構やってるので、彼らが育てばどうなるでしょうか。
そうですね、今のチャイナドラゴンはチチハル、ハルピン出身の選手しかいないんですけれど、今後、北京出身の子供が順調に成長して、チャイナドラゴンに入るようなことになれば、多分中国のアイスホッケーの発展というものは非常にめざましいものを持っていると感じています。
チャイナドラゴンvs日光アイスバックス
――先ほどもお話がありましたけれど、子供たちの環境はどうですか。
この環境は、逆に日本より良いと思っています。この中で子供たちが順調に育つのが絶対条件だと思います。自分たちも時間があればこういう子供たちとか指導していきたいと思うし、上から下までのカテゴリーにしっかりと、指導が行き渡るような環境作りにチャレンジしたいと思います。中国と共に、自分の成長もしていきたいと思います。
――日本では、こういう風にお子さんがアイスホッケーをやっている所は結構あるんですか。
日本全国に一応あるんですけれど、どうしても北海道、東北の方に偏っています。あとは子供が、少子化の影響で、野球やサッカーが人気があるので、そっちの方へ行ってしまいました。そう言う意味では、中国の方が、子供たちのプレイヤー層というのは、比べものにならないほど多いと思います。だから、中国のアイスホッケーは、すごく将来性がある、未来があると感じています。
――チャイナドラゴンは中国の中ではトップレベルですか。
チャイナドラゴンは国家代表チームの位置づけになっていますので、本当にここでやっている子供たちも将来、チャイナドラゴンのユニフォームを着てプレーすることが、もし実現できれば、非常に中国のアイスホッケーの発展というものは大きいと感じています。
――アイスホッケーの魅力は何ですか。
アイスホッケーはよく氷上の格闘技と言われて、本当にスピードが速くて、攻守転換が速くて、生でみると非常に面白いと思いますので、是非、一度リンクに足を運んでいただいて、生でチャイナドラゴンを応援していただきたいと思います。
――日本に遠征する予定はありますか。
はい、日本に遠征することもあります。これからは12月に北海道への遠征がありますし、来年1月下旬から2月にかけて、日光、関西の方に行って試合を行います。先ほども言いましたが、ぜひチャイナドラゴンを応援に来てください。
*日本での試合予定
2011年 12月3日・4日 釧路、6日 帯広、
12月8日 旭川、10日・11日 苫小牧
2012年 1月28日-31日 日光
2月2日 長野、4日 神戸、5日 名古屋
――荒城さんがいらして2ヶ月の間で、一番、つらかったこととかありますか。逆に、嬉しかったことは?
来て早々に、チチハルの方に選手の視察で行ったんです。その時食あたりで、2週間ほどおなかの調子が悪くて、それぐらいです。今はホントにプラス面しか自分の中には今のところないので、あとはやはりこのチームで勝つことが多分一番の最初の喜びだと思います。
――まだ喜びは取っておくと?
はい、まだ大事にとっておきます。
プロフィール
荒城啓介(あらきけいすけ)さん
1974年生まれ。北海道出身。アイスホッケー監督。現役時代のポジションはフォワード。駒大苫小牧高校、明治大学、古河電工、HC日光アイスバックス、東北フリーブレイズを経て、2011年から中国チャイナドラゴン監督。
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