■16年の知事人生、「楽しかった」
――橋本さんが高知県知事在任中、「まんが甲子園」というコンクールが高知で誕生しました。
高知は、「アンパンマン」で知られるマンガ家・やなせたかしさん(もう90歳の元気なおじいさんですが)を始め、マンガ家が輩出している土地柄なのです。
これだけマンガ家が出ていれば、何か、マンガを一つのキーワードにしたイベントができないかということを考えて、野球の甲子園と同じ意味で、全国のマンガが大好きで、マンガに取り組んでいる子どもたちが競い合えるようなまんが甲子園をはじめようということになったのです。
野球だと日があたりますね。日本の中でも。だけど、マンガが好きなお子さんは、周りからちょっと暗いイメージ、狭い趣味でとらえられやすい。そうではなくて、「まんが甲子園」ということで、皆に胸を張って言えるようになり、そういう意味でも、意義のあるイベントだったと思います。
――マンガがお好きですか。
僕もマンガを読むのが大好きでした。NHKの記者をしていた頃、仕事の途中でも暇ができると、マンガが置いてある喫茶店に行って、読んだりしていました。
中国にもアニメやマンガ、ゲームが好きなファンがたくさんいると聞いています。こうしたサブカルチャーは、もっと深く互いの国を知るきっかけになる上で、大切な種になれるんではないかと思います。
――16年にわたる高知県知事としての人生をどう振り返りますか。
とても楽しかったです。それは、「リーダー」という意味だけではなくて、日本の地方のことをこれまで以上に知ったからです。
東京に生まれて東京で育った人間にとって、ほかの地方の情報はなかなか知らないと思います。日本は小さい国ですが、面積が狭くても、そこに色んな暮らしがあることを実感として知ることができました。高知で得たことを残りの人生に生かして、有意義に過ごしていきたいと思います。
■人生も日中友好も 「ハッピー」こそキーワード
――橋本さんは、子どもの時から毎日、父親に「今日はハッピーだったか」と聞かれたとブログで書いていました。
父は、悪い言葉で言えば「マインドコントロール」かもしれません。特にそんな深い思いがあって言ったわけではなく、子どもに一日幸せだったかという意味で聞いたと思います。「ハッピー」の言葉の意味が分からない頃から、父にニコニコしながら言われているうちに、ハッピーな気分になった気がします。それが、自分の心の広がりにも良い影響を与えたと思いました。
やはり、世の中や人生が楽しいと思うのと、そうじゃないというふうに最初から思い込むのとでは、違うように思います。生まれた環境が豊かか貧しいかは別として、やはり心豊かな楽しい人生と思えば、その豊かさは豊かさで生かしていけるでしょうし、貧しさは貧しさでバネになって、次の道が開けると思います。
子どもの時からのこうした気持ちがとても大切です。そういう意味からも、中日の友好ということも、子どもの頃からそういう経験をどこかで持つということがとても大切なのではないかと思います。
子供の頃から、中国に対して、日本に対して、良いイメージを与えていく、お互いがそれぞれに希望のある国なんだということを思いやっていけば、これだけ近い距離にある国ですから、もっと互いのパワーが出ていくと思います。
――現実的には、中国でも日本でも最近「ハッピー」でないことがたくさん起きていますが、大学の教壇にも立つ方として、日本の若者に対して一番発信したいことは?
いくつもありますが、何よりも外向きに開いていくことです。
日本全体が少し内向きなところがあると思うんですね、まだまだ。これだけグローバル化ということが言われながら、もっともっと外に気持ちもひらいていく、仕組みも開いていくということが必要だと思います。
ハーバードの学長が日本に来た時に、「学部も大学院も中国と韓国から学生がいっぱい来ていますが、日本人の学生が少ない。そういうことは日本の将来の国力にも関わっていきますよ」と忠告を受けたことがあります。
その通りだと思います。もっともっと外に出て行くことが必要です。日本の国も、もっと外に向けて開いていく国になっていくべきだと思います。そういうことを、これからも若い人に言い続けていきたいです。
(つづく)
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