素朴な生命力と創造する力を後世へ
~『中国木版年画集成・日本蔵品巻』編纂にかけた思い
農耕時代の中国木版年画(旧正月に飾る画)の集大成である『中国木版年画集成』(全22巻)が全巻発刊されたのを受け、このほど、北京の人民大会堂で、中国文学芸術界連合会、中国民間文芸家協会の共同主催による成果発表会と表彰式が行なわれました。
木版年画は、中国の民間芸術の中で最も影響力があり、最も濃厚な民間文化の特徴が含まれ、最も地方色豊かな民間芸術です。『中国木版年画集成』の編纂は、中国民間文化遺産緊急保護プロジェクトの第一陣に位置づけられた全国重要プロジェクトです。これまで、中国民間文芸家協会主席の馮驥才さんを筆頭に、スタッフが9年かけて作業を続け、その結果、文字原稿300万字、写真1万点余り、映像16時間余りがまとまりました。全22巻のうち、中国全土の主要木版年画産地20箇所のほか、ロシアや日本に伝わった収蔵品の巻も含まれています。
このうち、『日本巻』の編集を担当したのは中国民間美術の研究者・三山陵(みやま・りょう)さんです。イラストレーター出身で、今は、日本の大東文化大学で中国美術の講義を担当している三山さんは、日本では「10人未満」と言われる中国民間美術の研究者として知られており、著書も『中国抗日戦争時期新興版画史の研究』など多数あります。今回の調査で得た収穫や、中国美術に引き付けられてやまない理由、デジタル化時代に伝統文化を保護することの意義などについて聞いてみました。
■中国木版年画、日本で720点を確認
――『中国木版年画集成・日本巻』の編集の仕事を引き受けたことのきっかけは?
「ロシア巻」の編集者で、私が10数年の付き合いがあるロシア科学アカデミー・世界文学研究所のボリス・リフチンさん(中国名「李福清」)の推薦によるものです。彼は、中国民間文芸家協会主席の馮驥才さんに、「ロシア巻」の編集を依頼された後、「日本にもすばらしいものがいっぱいある。中国年画の歴史を研究するには絶対に日本の巻が必要だ」と私を推薦してくれました。
――具体的に、どのようにお仕事を進めてきたのですか。
まず、収蔵品の写真があるところからはその写真を借りて、プロの方にスキャンしてもらって、色調整をしてもらいます。一方、個人の収蔵家はほとんど自分で写真をもっていないので、まずお家で見せてもらったり、寸法をとったりして、スタジオに持っていき、一つ一つ丁寧に写真を撮る。主にそういう作業をしました。
――日本各地に散在している収蔵品を集めるだけでも、かなりたいへんな作業だと思いますが…
そうですね。今回は相手が外国の出版社なので、ほとんどの博物館や美術館にとって未経験のことです。写真の返還、使用料の支払いなどで色々心配があるようですが、すでに出来上がった「ロシアの巻」などを見せて、「私がちゃんと責任をもちますので」と言って、納得してもらいました。
また、個人の収蔵家たちには、「日本ではなかなかこういう本が出ないし、貴重なコレクションを世界の人たちに紹介する良いチャンスですから、作品を貸して、写真を撮らせてください」と言って交渉してきました。
――「日本巻」の編集を通して、三山さんにとっての収穫は?
現在日本に保管されている中国木版年画最古の収蔵品は、17世紀末の康熙帝年間のものです。中には、中国年画史の研究にとって貴重な作品とされているもの多数あります。日本に収蔵されている中国の木版年画(1949年以前のもの)の数は、初めは500点把握したのですが、詳しく調べていくと、最終的には、年画という範疇のものだけで720点あることが分かりました。うち、康熙帝~道光帝年間の作品は290点、咸豊帝~民国30年代までは430点あります。それ以外に、「門の神様」とか、「かまどの神様」とかも入れると、全部で2200枚確認できました。古い中国年画が、日本にこれだけ多いとは思いませんでした。具体的に収蔵先やその内容と数を確認できたことは、私にとって非常にプラスなことでした。
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