中国の継続的な安定成長、日本にとっても極めて重要
——『チャイナ・インパクト』の中で、中国独特の「政経一体システム」こそ中国が金融危機を迅速に乗り越え、中国の決断力、機動力、実行力を支えている仕組みだと解析していました。
そうですね。「政経一体システム」とは言葉どおり、政治と経済が一体的になって、車の両輪のように迅速に進んでいくという意味です。これは日本だけでなく、今、「G20」と言われている比較的経済規模の大きな国の中でも、極めて独特な仕組みで、しかも、非常にスピード感があって、恐らくこれをまねできる国は他にはないと思っています。
日本と比べた時に私が特に注目しているのは、意思決定が少人数で行える仕組みです。いわゆる議会制民主主義を採っていないので、少数の指導者の意思決定で色んな対応がとれます。たとえば、減税を例にしますと、日本だと「租税法律主義」と言って、国会で法律が通らないとできません。一方、中国では、すべてではないですが、かなりの措置について国務院の決定だけでできてしまいます。しかも、ほかの金融政策や財政政策等も一体にして打ち出せるので、危機の時には非常に強さを発揮したと思っています。
リーマンショックのような大きなインパクトがあった時に、経済の流れがたいへん速く、刻々と状況が変化していくので、スピーディーかつ的確な対応が重要になってきます。そういう意味で、今回のリーマンショックの対応については、とくにスピード、機動力という面で、中国はG20の中でも非常に強さを発揮したのではないかなと思っています。
——今開催中の政治協商会議、全人代に対して、経済の視点から特に注目していることは?
中国でも関心が高い構造改革、日本風に言えば格差の問題です。所得の再分配をどう進めていくか。中国の所得格差はアメリカ以上のもので、おそらくG20の中でも大きい方だと思いますが、それをどう縮小していくのか。これは言うのは簡単ですが、相当難しい問題だと思います。とくに、財政、税制の面で色んな取り組みをしていく方向と聞いていますので、具体的にどういうやり方でこれを実現していくのか、そこを非常に注目しています。
——中国経済の持続的な成長に影響するリスキーな部分でもあるのですね。
たぶん中国は引き続き高い成長は続けていくとは思っているのですが、成長のパターンとして、今までと同じものがどこまで通用するのかということは、中国政府自身がすでに大きな課題として捉えていると思っています。
私は仕事柄、中国の財政関係者との付き合いが多いんですが、税制改革に向けた姿勢はかなり本気だと感じました。今、中国の新聞でも報じている個人所得税の課税最低限の引き上げに加えて、地方政府の財政の基盤をどう強化するか、そのあたり、具体的にどんな政策を採られるのか、「政府活動報告」の内容を楽しみにしています。
(柴田氏による2011年「政府活動報告」への評価はこちらからhttps://japanese.cri.cn/918/2011/03/09/162s171791.htm)
——来年から始まる「十二・五」(「第12次五ヵ年計画」)の目指す方向をどのように見ていますか。
「十二・五」は質と効率をどう確保するかということだと思います。これは、実現に向けては、既得権層の経済的な権利にも相当、踏み込んで考えていかなければいけないことが多いと思いますので、恐らく国内的にも色んな議論があると思います。しかし、たぶんそこはもう実現しなければいけないという強い意志を持ってのぞまれると理解しています。
やはり、中国に継続的な成長を続けてもらうということは、日本にとっても極めて重要です。中国がサステナブルな成長を続けていくためにも、そういう中国自身が目指している方向をちゃんと実現していくかどうかは、我々としても注意深く見ていきたいと思っています。
今、中国経済がどうなるかというのは、日本のみならず、世界経済にも大きな影響を与えます。簡単に言うと、中国経済がもしこけたりすると、世界経済にもたいへんなことが起こりますので、引き続き順調に安定的に成長していってほしいと思っています。(つづく)
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