冒頭で問いかけた、これまでの戦争を背景にした合作映画との違いについて、子ども同士の交流に重きを置いていることが、この映画の見どころではないでしょうか。
戦争がもたらした苦しみよりも、戦争という壁をどうやって乗り越えればよいの
「自らの体験を綴った」という作家の加藤幸子さんは、午寅との付き合いから始めた近所の中国人の子どもとの交流の思い出は、鮮明に脳裏に焼きついていると言います。そして、当時の遊び仲間のうち、今も連絡を保ち続けている人もいますが、洋車引きの息子で、山西省出身の午寅さんとは、その後、消息が途絶えたようです。「映画を通して、午寅さんの消息をつかめたらいいな」。作品の映画化に、加藤さんのこうした個人的な願いも託されているようです。
一方、「北京周辺の名称旧跡を、実際に訪れるようになったのはずいぶん後のことで、小説の中の『夢の壁』は私のフィクションです」と微笑み、「中国人少年の未来と、両国の平和と友好を願って、『夢』をタイトルに入れた」と言います。
戦争が終って60年以上も経つ今、中日両国で、戦争体験者に変化が見られました。戦争に実際に参加したことのある人が減り、幼い時の記憶として戦争を知っている人がメインになりました。
『夢の壁』はこうした世代の移り変わりを背景に生まれた作品と言えます。物語の背景は戦争という歴史的に重い時期に違いありませんが、監督も出演者も案外、淡々とした気持ちで取り組んでいるところが印象的でした。
「世の中にある様々な『壁』をどう乗り越えればよいか、一緒に考えたい」。
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