5月を迎えた北京は穏やかな陽気で、風も微風。牡丹や芍薬、海棠などさまざまな花が咲き競い、公園や花見の名所は花を楽しむ観光客で非常に賑わっていました。北京は一年の中で最も美しいシーズを迎えました。

　今回の中国メロディーは引き続き四川省を特集し、地元の歴史文化と伝統音楽をご紹介しました。番組で取り上げたのは「阳关三叠（陽関三畳）」、「静夜思 (静夜の思い)」、「辣妹子｣(きつい女の子)」、「黄陽扁担（ツゲの天秤棒）」全4曲でした。

　四川省は、中国の中心を流れる長江の上流に位置し、東部は山々に囲まれた広い盆地で、西部はチベット高原へ続く険しい山地です。こうした自然環境の影響を受け、四川盆地は、黄河流域や長江下流との関わりを持ちつつ、独特の文化を育んできました。温暖な気候に恵まれ、自由でのびのびとした雰囲気が四川の特徴です。

　漢代以降は歴史的にも重要な舞台となりました。三国時代に劉備や諸葛孔明ら英雄たちがこの地に蜀の国を興し、魏・呉に対抗し、三国時代を築きました。その後、唐代には杜甫、李白らの文人が活躍し、則天武后など中国の歴史に大きな影響力がある人物を輩出しました。

1曲目　阳关三叠　（陽関三畳）　

　四川省広元県に生まれた則天武后は中国史上唯一の女帝となります。則天武后の在位は15年間でしたが、彼女の支配のもとに、中国の国力は強まり、社会は安定し、数回にわる外来勢力の侵略をも打ち負し、唐王朝の繁栄を発展させ続けました。

　「陽関三畳」という曲は唐の時代の詩人・王維の代表作「陽関三畳」に基づいて作られた曲です。歌は親しい友人を送る時の別離の情を表し、古くから送別の席で歌われました。

2曲目　静夜思 （静夜の思い）

　歌は唐の時代の詩人李白の五言絶句を元に作られたものです。四川省出身の李白は唐代のみならず中国詩歌史上において、同時代の杜甫とともに最高の存在とされます。奔放で変幻自在な詩風から、後世「詩仙」と称されました。

　李白は幼児期から青年期まで蜀の青蓮郷を中心に活動し、25歳頃、蜀を出て長江を下り、中国各地を放浪しました。その後、二度と故郷の蜀に戻ることはありませんでしたが、彼の自由奔放、 豪放磊落な詩風は蜀文化の深い影響を受けています。

　「静夜思」は李白が故郷の蜀を偲ぶ詩を元に創られたものです。日本でもよく知られている詩の内容は、次のようなものです。

　　床前（しょうぜん）月光を看（み）る

　　疑うらくは是（こ）れ地上の霜かと

　　頭（こうべ）を挙げては山月（さんげつ）を望み

　　頭を低（た）れては故郷を思う

3曲目　　辣妹子（きつい女の子）

　前回の番組の中でご紹介したように四川省は湿潤で、日照が少ない気候です。こうした独特の気候のせいで女性は皮膚の色が白くて美しいです。しかし、そんな四川省の女性は「辣妹子｣(きつい女の子)」と言われます。これは地元の女性は性格が明るく、辛いお鍋を好んで食べるからです。また、歯に衣着せず、ズバズバとものを言うので、「辣妹子（きつい女の子）」と言われます。番組の中でご紹介した「辣妹子(きつい女の子)」という民謡は四川女性のこの性格特性をうまく表現しました。

4曲目　　黄陽扁担（ツゲの天秤棒）　

　この歌は四川省の代表的な民謡です。1958年に民謡歌手・朱宝勇さんに歌われたあと、全国に広く伝わりました。

　曲の冒頭部分は躍動感ある軽快な民謡風のリズムで人々を、「天府の国」と呼ばれる四川省に導いてくれます。曲は女の子のいろいろな美しい髪形を歌ったものです。そのユーモア溢れる歌詞と軽快なメロディーは四川省民謡の特色を充分に現しています。

　この番組へのご意見・ご感想などがございましたら、ぜひお聞かせください。

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