今日は八仙人の中で、一番最初に仙人になった李鉄拐、及び、その逆、一番最後に八仙のメンバーとなった曹国舅の話をします。
八仙は、中国の代表的な仙人集団です。中国大陸だけでなく、海外の中華圏でも知名度が高いです。実際には今のような8人のメンバーになるまでは、色々人物の入れ替えがありました。その中で、李鉄拐は一番最初に八仙に定着した仙人です。
李鉄拐の物語
この八仙人を仙人チームだとすれば、一番最初に仙人になった李鉄拐は、いわゆるリーダーみたいな存在です。 苗字は李。下の名前は玄といいます。鉄拐というのは、鉄の杖という意味で、片方の足が不自由で、鉄の杖を使いますので、その特徴を捉えて、李鉄拐と呼ばれるわけです。
李玄はもともとがっちりとした体格の立派な男性でした。そして、「八仙東遊記」によりますと、頭もよく、20歳ごろには、すでに俗世間の事柄に興味がなく、仙人になる道に没頭していました。
李玄は独自の考えを持っています。「天地は空しい。人生は幻想に過ぎない。財産や名声は心を惑わす毒である。たとえ皇帝となり、世界の富をすべて有したとしても、それは所詮身体以外のものであり、雲のようなものに過ぎない。無から有が始まり、有はまた必ず無になる。人生はまるで夢のようなものだということを悟らずに、ただ自分のこの身体を世に放浪させていいのか!」と、主張しています。
よく考えるとその通りですね。確かに人間にとって、財産や名声はいくらあっても、死ぬ時には手ぶらで死ぬわけですもんね。だから、自分がこの世に存在した証を残すように、みんな一生懸命頑張っています。でも、李玄の夢は、この世で頑張るのではなく、仙人になるというある意味大きな夢です。
李玄は修行を決心し、親族や友人と別れて、静かな山奥で過ごしていました。しかし、独学で悟った道(ダオ)は、あくまでも小さな境地に止まり、自分にはまだ大きな道を得られていないと、ある日、ふと考えました。
誰に尋ねてみたいですね。一番尋ねてみたいのは、もちろん道教の始祖とされる老子です。ある日、老子から、一緒に崋山(今の陝西省にある。険しいことで有名な山)を登らないか?」という、招待状が来ました。
老子はもう仙人ですから、李玄は普通の人間の身分ではなく、魂だけ体から出てきて、魂で行くことにしました。魂は、また自分の身体に戻りますから、抜けている間に、ちゃんと誰かに身体を守ってもらっている必要があります。李玄は出発する前に、魂の抜けた私の身体を見守りなさい。もし、七日間経っても帰ってこなければ身体を焼きなさい」と弟子に言いつけました。
偶然ですが、6日目に、弟子の兄が駆けつけてきて、母が危篤でどうしても会いたいと知らせてきました。弟子は師匠の話を聞いて、まだ6日目だから、師匠の身体を守らなければいけないと思って、一晩残りました。しかし、7日目になっても、師匠がまだ戻ってこない。お昼が過ぎて、とうとう弟子は母の最後に会えないかもと思って、師匠の身体を焼いて、実家に戻りました。
李玄は尊敬する大先輩、老子と会えて、なかなか戻りたくなかったので、帰りが遅くなってしまいました。ぎりぎりまで老子と崋山で散策しました。そして、7日目の夕方、ようやく戻ってきました。
魂が戻ったら、自分の身体がなくなったことに気付きました。時間の制限があるので、魂はすぐに身体に入らなければなりません。間に合わない。どうする。たまたま彼の近くに飢え死にしたばかりのホームレスの死体がありました。魂が入って、立ってみると、なんだか、片方の足が不自由な人です。そして、河で自分の新しい容姿をチェックしてみると、肌が黒くて、ジリジリの髭をし、とてもブサイクな顔です。しかも、もちろん、服もボロボロです。
この時に、後ろから手をたたく音がしました。見てみると、老子でした。すると、李玄の魂は慌ててまた抜け出そうとしました。
老子は止めました。「真の道は表だけではなく、表以外から模索すべきだ。修行を重ねれば、必ず仙人になる」と語りました。それを聞いて、李鉄拐また身体を変えることをあきらめました。そして、ついに仙人になりました。
ちなみに、その神通力を発揮する道具は、彼が持っている鉄製の杖です。伝説によりますと、この杖を空に投げると、竜になります。李鉄拐は竜に乗って、空を飛ぶそうです。
曹国舅
これまで取り上げた八仙の人物は、生まれが漢の時代だったり、唐の時代だったりでしたが、曹国舅だけ、唐の後の宋の時代の人物です。
国舅とは、皇后の兄や弟であることを示す尊称です。八仙の中においては、正真正銘の貴族です。本名は曹玘(そうき)。字は景休(けいきゅう)と言います。どうりで曹国舅は八仙図鑑の中で、一番豪華な衣装、官僚の姿をしています。
曹国舅は八仙の中で、一番地位の高い人物でもあります。地位が高いですが、彼は豊かな生活に溺れ、貴族の特権を利用することが好きではありません。身分が高いのに、平常心でいられるのはちょっと珍しいですね。
もちろん、曹国舅一族はみんながみんな、そんなに潔白な人間であるはずがありません。その弟は、皇后の親族であることをカサにきて、農民の土地を奪ったりして、悪行を繰り返していました。
曹国舅はしょっちゅう弟を忠告しましたが、向こうはまったくその話を聞いておらず、ひいては自分の兄を敵視するようになりました。
曹国舅は、「善を重なれば栄えるようになり、悪を重ねれば滅亡してしまう。これは決まったことである。我が家はずっと善事を行い、陰徳を積み重ねてきたので、今日のような地位と財産を得られた。しかし、弟は悪行に極まり、法律による処罰から逃れられても、天の定めから逃げられない。一旦禍が起きれば、家や肉親を失ってしまうことになる。私は恥を感じながらこれを怖がっている」と話しました。
曹国舅は自分の財産を全部貧しい人に配りました。最後に、家族や友人と別れ、山奥に行き、修行をしました。数年後に、道を悟り、自分の外形も思うままに変化するようになりました。
仙人に近い境地になりました。そんな時に、漢鐘離や呂洞賓がたまたま曹国舅が隠遁した山に来ていました。
その時の漢鐘離と呂洞賓はもちろんもう仙人の身分です。二人が訪ねてきて、「何の修行をしているのか」と曹国舅に聞きました。
答えは、もちろん、「道の修行だ」。すると、二人の仙人は、「その道はどこにあるのか?」と笑いながら、更に聞きました。
曹国舅は黙って天を指しました。
二人の仙人は、「では、その天はどこにあるのか」と問いかけました。今度は、曹国舅は自分の心を指差しました。
二人の仙人は大いに笑って、「心は即ち天、天は即ち道である。あなたはすでに道が何なのかを知っている」と言いました。修行の本を授け、更に、仙人グループへと案内しました。
漢鐘離と呂洞賓の質問が実は、仙人になる最後のテストだったと言うことでしょうか。頭で理解できても、行動に移すことは難しいのに自分の財産も貧しい人に与え、家族や友人とも別れるという行動も伴っていたからこそ、仙人グループに入れてもらえたのでしょうね。
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