『許三観売血記』
どのような小説がいい小説だと思いますか?人によって答えは違うと思います。私にとっては、笑わせたり泣かせたりしてくれるのが、いい小説です。余華さんの『許三観売血記』(許三観の売血の物語)は、私にとって、いい小説です。簡潔な叙述、単純な人物、ちょっとぬけているような対話が、この作品にユーモアを添え、読者は笑いながら悲しみがこみ上げ、強い共感を感じるのです。
今回の「CRI書店」が皆さんにお勧めする1冊は、この余華さんの『許三観売血記』です。余華さんは中国の現代の有名な作家で、私の一番好きな作家の一人でもあります。中短編小説『十八歳出門遠行』(十八歳で遠くへ出かける)、『世事如煙』(世の中の事柄は煙の如し)、長編小説『活着』(生きている)、『兄弟』などを著しました。
『許三観売血記』は大きな優しさをもって苦難な人生を描き、不幸な生活に直面した時の「生きたい」という欲望を表しています。内容は素朴でありながら、奥が深く、素晴らしい作品です。実は、私は余華さんの作品を読むたびに、いつも気持ちが重くなります。作者のユーモアで、笑うことができますが、主人公が辿る悲惨な運命、善良な人々の貧しい生活、世知辛い世間。こう言ったことが原因で相次いで死を迎える登場人物。余華さんの作品を読んでいると、いつも何か心が塞がれる様な感じで、読み続けることが出来ないこともあります。でも、幸い『許三観売血記』の中では、善良で素朴な人たちは生き延びています。作品は当時の社会の混乱、不安定、そして、ある登場人物の醜い顔つきを描いていますが、主人公の不撓不屈で、寛容、善良な品性が感じられ、読み終わると心が温かくなりました。
作品は1950年代から始まります。当時の中国はまだ貧しい国でした。主人公の許三観は好奇心旺盛で、責任感の強い青年です。彼は生活のために一生懸命に働いています。確かに売血は収入源となりますが、どうしようもない状況でなければ、売血で生活を維持することなど考えもしないでしょう。この小説は許三観の11回の売血の経歴をめぐり、男性として負うべき責任を体現し、決して屈服しない精神を表しています。
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