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第9弾:『高橋恵子と周莉の対談』真偽孫悟空~「西遊記」の新しい解読

2011-09-15 10:09:10     cri    

真偽孫悟空~「西遊記」の新しい解読


























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 高橋:「古典エナジー」、中国の古典や民話、四字成語などをご紹介します。今週は、中国の四大奇書に数えられる「西遊記」をテーマにお話をします。

 周:これは、中国で16世紀の明の時代の小説で、唐の僧侶・三蔵法師が白馬に乗って、孫悟空、猪八戒、沙悟浄をお供に、幾多の苦難を乗り越え天竺へ仏典、お経を取りに行き帰って来る物語です。

 高橋:作者は明の時代の呉承恩です。日本でも何回もドラマ・映画化或いは漫画化されていてとても有名です。私の記憶では孫悟空が堺正章、香取信吾などがすぐに思い浮かびます。中国ではどんな感じですか?

 周:中国でも「西遊記」をテーマにした映画やドラマが数多くあります。大陸や香港など多くのバージョンがありますが、一番有名なのは1986年版です。テレビでは、冬休みや夏休みになると、必ずといっていいほど、「西遊記」が放送され、子供たちに喜ばれています。私はもう5、6回ぐらい見たことがあると思います。まだ飽きていません。

 高橋:三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄など主人公も含めて、小説の登場人物は、妖怪や仙人など、一見現実の生活からかけ離れていますよね。でも、そんな人物の喜怒哀楽の物語ですから、かえって子供たちに人気があるんじゃないでしょうか。

 周:そして、『西遊記』の中で、一番中心的な人物と言えば、孫悟空です。「西遊記」の物語自体、孫悟空の誕生から始まっています。

 高橋:孫悟空は修行を積んですばらしい仙術を見につけました。72種の変化(へんげ)も習得しました。この孫悟空は天宮をさわがせて、結局、釈迦如来、お釈迦様によって、500年間、山の下敷きにされ閉じ込められてしまいます。その後、観音菩薩、観音様の計らいで、経典を天竺に取りに行く三蔵法師の護衛役を務めることになりました。その道のりには、天界が用意した81の難、災難が待っています。孫悟空は痛快な行動力と神通力で、この81の難を克服、無数の妖怪と戦った末に、とうとう天竺にたどり着きました。

 周:孫悟空は常に戦っている戦士です。自由を求めるために。「西遊記」に関する研究によりますと、実は、こんな一心不乱に目標に向かって進む孫悟空でも、心の中には葛藤があったと言われます。

 高橋:へえ、そうなんですか?面白そうですね。

 周:すばらしい小説ですから、いろいろな見方があります。最近、面白い観点をいくつか読みました。その中の一つをご紹介したいと思います。

 高橋:どんな感じですか?

 周:実は、「西遊記」には、不可解なところがたくさんあります。例えば、天宮を騒がせ、10万人もの兵に楽勝した孫悟空。なのに何故妖怪に負けるのでしょうか?妖怪は三蔵法師を捕まえた後、何故すぐに食べなかったのでしょうか?せっかちな妖怪は何故一匹も登場しなかったのでしょうか?などなど実はちょっと矛盾しているのではないかと思わせるところが数多くあります。

 高橋:そういえば、そうですね。あまり深く考えたことがありませんでしたけど。

 周:今日は、「西遊記」の有名な一節、真偽孫悟空について、新しい分析をご紹介します。

 高橋:大まかなあらすじを知っていますよ。孫悟空は盗賊とその悪党を殺しました。例え悪党でも命あるものを殺してはならないと三蔵法師は激怒し、緊箍呪(きんこじゅ)を唱えて悟空を容赦なく罰しました。孫悟空は必死で謝りましたが、それでも三蔵法師は聞かず、孫悟空を追い出しました。孫悟空は行くあてもなく、観音さまのところに逃げ出しました。この孫悟空の留守中に、偽物の孫悟空が登場するんですよね。

 周:ええ。悟空を追い出したあと、プンプンと切れた三蔵法師の前に、悟空のそっくりさんがやってきました。その時に、三蔵法師はのどが渇き、お腹も空いて、猪八戒と沙悟浄に食べ物を探しに行かせたので、1人でいました。孫悟空のそっくりさんは跪いて水を捧げ、「俺がいなければ、天竺にいけないよ」と言いました。もちろん偽物と知るはずはないので、三蔵法師ははさらに激しく怒りまくりました。孫悟空の偽者も顔色を変えて三蔵法師を罵り、棒で三蔵法師を殴って立ち去ってしまいました。

 高橋:この時に、荷物も盗まれてしまいました。三蔵法師は沙悟浄に取り返してくるよう頼みました。悟浄は花果山水簾洞まで、はるばるでかけ、悟空のそっくりさんに会いました。しかし、盗んだ荷物を返してくれないどころか、偽物悟空は、沙悟浄の目の前に「偽物三蔵法師」「偽物豚八戒」「偽物沙悟浄」まで連れ出してみせ、「かわりに天竺に行ってやる」と言い出しました。沙悟浄は水簾洞から逃げ出し、今度は観音菩薩に助けを求めるべく普陀山に行きました。ところが、そこには観音様のそばにじっと4日!!もたたずんで待っていた本物の悟空がいたのです!

 周:本物悟空は偽物と対峙します。しかし、偽物が姿も技の実力も本物の孫悟空と全く同じで見分けがつきません。こうなると、天界の神々に真偽を確かめてもらうしかありません。観音さまは緊箍呪を唱えましたがダメでした。次に天界に行きましたが、玉帝も見分けられません。李天王は妖精がどんなに化けても、鏡に原型しか映らない照妖鏡で見てみました。それでも区別が付かなかったのです。

 高橋:そうして、もう一度、三蔵法師の元に戻りました。緊箍呪を試しましたが、やはりだめでした。今度は、冥府に行ってみました。閻魔たちも見分けられません。冥府にいる地蔵菩薩のペットの獣は、真偽を確認できましたが、偽者の孫悟空の神通力が強すぎるので、暴れることを恐れ、分かるけどいえないと話しました。

 周:最後に、雷音寺に行って、如来さまに見分けていただくことに。如来様はあっさりと偽物悟空の正体を見破りました。偽者の名前は「六耳ビ猴」と言います。如来様が容易く捕まえたところを本物の孫悟空が偽者を殺してしまいました。

 高橋:こんな顛末ですが、この中に何かおかしいところがあると言うんですか?

 周:はい。この孫悟空のそっくりさん、「六耳ビ猴」というのは、西遊記の中において、最も変な妖怪だといわれます。

 高橋:まあ、妖怪と言っても、三蔵法師を殴って、荷物を盗んだほかには、大きな悪事を働いたことはないようですね。

 周:西遊記では、孫悟空をビビる妖怪は孫悟空を名乗る勇気がない。孫悟空を見下す妖怪は、孫悟空の真似をする気にならない。孫悟空に匹敵するような妖怪は、相当の術があるので、孫悟空の真似をする必要がない。という3パターンがあります。しかし、このそっくりさんは本物の孫悟空と全く同じような能力を持っていますが、わざわざ孫悟空の真似をしたのは、いったい何の目的でしょうか。

 高橋:普通の妖怪なら、普通、隙を見て、三蔵法師を捕まえる訳ですね。

 周:そうですね。しかし、そっくりさんは、そうではありません。三蔵法師を罵り、殴ったりし、そして、偽物を結集して、天竺にお経を取りに行こうとするのです。

 高橋:偽者は、孫悟空の家である花果山も自分の家のようにしましたよね。本物の孫悟空と全く同じようにしようとしています。

 周:いっぱい謎があるように見えますが、実はこの回には六耳ビ猴という名の妖怪は、本当はいなかった。初めから終わりまで孫悟空の仕業と言う見方です。

 高橋:へえ、そんな解釈もあるんですか?何故、孫悟空が一人で本物と偽者をやるっていうか、偽者を登場させる必要がありますか?

 周:この事件の最初には、孫悟空は盗賊を殺したことで、三蔵法師に緊箍呪を唱えられた上で、追い出されてしまいました。間違いなく被害者だったんです。しかし、事件の最後、観音さまに慰められただけでなく、如来さまからは「仏にしてあげる」という大事な約束をもらいました。

 高橋:確かに、最終的にお経を手に入れると、孫悟空は魔、悪を退治して、善を広めたという抜群の功績が認められて、仏になることができました。闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)という名前ですね。

 周:ええ。仏は菩薩よりも地位が高いんです。成仏した孫悟空は観音菩薩の上司になったわけですね。この回では、孫悟空は被害者から一転して、最大の利益を享受することになります。だからこそ、孫悟空こそが、最も怪しい容疑者となるわけです。

 高橋:これはなかなか面白い発想ですね。孫悟空でも誠実でない心を持っていたという事ですか?

 周:まさにその通りです。もう一回西遊記を読み直すと、第58回のタイトルはなんと「二心撹乱大乾坤」とはっきりと書いています。二心は、誠実では無い心ですから、訳すと、下心を持つ孫悟空、天地を撹乱したという意味でしょうね。

 高橋:つまり、そのそっくりさんという「六耳ビ猴」は、見方を変えれば、孫悟空の悪い心の分身ですか?

 周:そういうことになりますね。お経を取りに行く旅もすでに半分以上、過ぎました。やはり疲れも出ているのか、一番能力のある孫悟空は、三蔵法師の指導力に不満を持ち始め、抵抗し始めています。一方で、能力が普通の猪八戒と沙悟浄は、孫悟空に嫉妬しています。これは原文にも書いてあります。

 高橋:なるほど、ゴールに近づく時点で、お経を取りに行くこのチームは不協和音が出始めるんですね。最大の功労者である孫悟空が、三蔵法師に追い出されたことを不満に思うのも理解できます。

 周:孫悟空は、「この和尚、俺を裏切った!」と話して、観音様のところへ愚痴をこぼしに行きました。そして、ずっと観音さまの所にいたので、妖怪、六耳ビ猴が出ても、アリバイが成立します。読者に最も同情されるのが孫悟空でした。

 高橋:かなり陰謀の匂いがするんですね。そうなると、その六耳ビ猴は、如来さまが、孫悟空をかばうために捏造したものですか?

 周:その通りです。無常の法力を持つ如来さまはすべて分かっています。如来は、本物と偽物孫悟空が戦う場面を見ている人々に、「あなたたちはみな一心、心が1つだが、誠実でない二心、2つの心の戦いを見届けてやりなさい」と言いました。その意味を説明しますと、「あなたたちは、どっちが本物かどっちが偽物が、一心不乱に見極めようとしていますが、その心を見破ることができません。本当は二人ではなくて、二つの心を持つ孫悟空なのです。師匠をも殴った孫悟空です。あなたたちは、孫悟空のことを妖怪だと思い込んだのです。」

 高橋:えっ、そうすると、みんな孫悟空の仕業だと分かっちゃうんじゃないですか。

 周:大丈夫です。如来さまは大局的な判断をし、孫悟空の芝居に合わせ、「六耳ビ猴」を捏造しました。そして、成仏させると約束しました。

 高橋:結局、一番損したのは、弟子に殴られた三蔵法師ですね。

 周:そうですね。孫悟空の仕事への復帰も、観音様が取り計らってくれました。「さあ悟空を引き取りなさい。もう腹を立てたり、疑ったりしてはいけないよ」と、観音様は三蔵法師に諭しました。三蔵法師は「謹んで教えに従います」と悟空を受け入れるしかできませんでした。

 高橋:三蔵法師はやむを得ず悟空を再び受け入れ、お経を取りに行く旅を続けましたね。4人は本当に仲良しになれるでしょうか。

 周:実は、悟空の態度はこれを境に、がらっと変わったと言われています。三蔵法師の人となりをおおよそ掴み、相当のあきらめの気持ちを持ったのではないでしょうか?

 高橋:何が法師の逆鱗に触れることなのか、飲み込んだのですね。内心ではまだ納得できないのかもしれませんけど。

 周:ええ。また、こんな一説もありますよ。悟空の態度が変わったのは、実は本物と偽者の孫悟空が入れ替わったと言う説です。本物と偽者の孫悟空の場面で、如来さまが指差した「六耳ビ猴」こそ、本物の孫悟空で、孫悟空がきれいに抹殺され、如来の指図をしっかりと聞く偽者で、旅を継続させたということです。

 高橋:これはまさに陰謀論ですね。反抗精神が強すぎる悟空はとうとう上司たちに嫌われ、抹消されてしまったということでしょうか。

 周:ええ、聞いたときに、私もちょっとびっくりしました。でも、やっぱり一理あると思います。

 高橋:リスナーの皆さんはどう思いますか?「古典エナジー」、今日は、中国の古典「西遊記」の真偽孫悟空にまつわる新しい解読をご紹介しました。

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