――70後の親と80後の親との違い
中国では、昔から伝わる儒教の教え「三字経」には、こんな話があります。「養不教、父之過」。
これは直訳すれば、「養いて教えざるは父親の過ちなり」。今の言葉に言い換えますと、子供を生んでも躾をちゃんとしなければ父親の過ちだ。昔、中国の女性は社会的な地位が低く、女性は学問や知識、才能がないからこそ、家庭にふさわしいという伝統な道徳観がありました。子供の教育はもっぱら父親の責任といわれました。今は男女平等ですから、今風に言うと、「子供のしつけがよくないのは、親のせい」。この方がより適切なんじゃないかって思います。
ちなみに、「三字経」は宋代の儒者、王応麟がまとめたものです。儒学を基本とし、有名人の教えや、中国の歴史、常識的な知識などを、わかりやすく三文字一句のフレーズを連ねて作られた家庭教育書です。昔も今も子供たちにとって、短くて、音の響きがよく、なんとなく覚えてしまうような啓蒙書ですね。その冒頭のところにあるのは、この「養不教、父之過」。「子供のしつけがよくないのは、親のせい」。
共働きの多い中国では、今、子供の面倒を、おじいちゃんやおばあちゃんが見てくれるというのは、とても多いです。しかし、自分の子に厳しかった親でも、いざ、孫となると、とても甘やかします。子供に甘くて、サービス過剰。モノやおカネを与えますし、これやっちゃだめよ、なんて、注意深く子供の健康や安全を守ってくれますが、ものの道理とかあまり教えないのです。
幼稚園に入ってからは、子供の教育は先生の役目が大きくなりますけれど、3歳ぐらいまでは家庭教育が全てで、親の責任がとても大きいのです。生後数ヶ月、長くても、1歳ぐらいになるまでは、お母さんが何とかしてそばにいてあげることができますが、職場に復帰した母親にとっては、子供の教育と仕事はなかなか両立できないのが、現状です。
ところで、子供の教育といいますと、「70後」の親と「80後」の親がよく話題に取り上げられます。「70後」とは、1970年代生まれの人々を指します。子供がいれば、小学生から中学生ぐらいですが、ちょうど子育てで、ある程度の経験をつみ、教育問題などで、いろいろと真剣に悩む世代です。特に、大都市で暮らしている30代の大多数は、小さいころ、貧乏育ちが多くて、長くて激しい受験競争を経て、やっと今に至っています。結構競争心と優等生意識が強いと思います。だから、わが子を含め、ゆとり社会で生まれ育った世代のがんばらない姿を見て、時々、イラっとすることがあります。
時代が目まぐるしく変わる中で育った親たちの不安っていうのは、とても大きいですが、一方で、子供はまだ分かりません。ついに子供に無理やり、自分の競争意識などを押し付けることがあります。そうすると、子供は親の機嫌をとるために、うそをついたり、勉強しなさいって言われると、ただ勉強しているフリだけをするようになるかもしれません。
一方、「80後」とは、中国語で、1980年代生まれの若者を指します。日本でも話題になりつつある中国の若者世代です。育った時代が違うので、それまでの世代とは全く異なる性格を持っていると言われます。80後が何故上の世代と比べて、あれだけ大きな違いがあるのか、といいますと、まずは、改革解放という中国の安定した高度成長期に育った人たちですね。本人も、家族も、国もだんだん豊かになっている環境に育ったので、いわゆる「ゆとり世代」です。もうひとつは、一人っ子政策という人口規制政策が1979年に始まったので、特に、都市部で生まれた80後はほとんど一人っ子ですね。両親と祖父母、計6人はこの一人の子供のためにお金を使い、愛情を注ぐ中で成長しました。幸せに見える生活ですね。そしてもう一つの背景というのは、インターネットの普及と共に、本格的な情報化社会で育ったということだと思います。「わがまま」で「贅沢」で、「協調性がない」「プレッシャーに弱い」などとマイナスナ批判をされる80後の若者たちは、次々と親となっていくものです。
しかし、「自分がまだ子供なんだよ!」と、或は、「仕事が忙しいから、ぜひ助けてください」と自分の親に強く要望する80後のカップルが多いです。また、親になった80後の親たちは、子供を一人しか育てなかったので、まだとても余力があることから、孫の世話をする願望も強い。しかし、子育てのやり方について、意見が合わないときに、親とおばあちゃん・おじいちゃんがもめたりします。「自分が親になっても、まだまだ発言権が弱い。。。」などと愚痴る80後がいるんです。
このような意見の食い違いは、情報量の違いから発生していると思います。おばあちゃんとおじいちゃんは子供の教育に関して、ほとんど自分の親から教わった素朴な理論、そして、自分の子育ての経験から来ていると思います。一方で、若い親たちは、昔からのものと今のもの、更に、海外からも、いろんな理論を取り入れています。こう言った理論には、これまでにないプラスになるものもあるし、あまり現実的ではないものもあります。新しいものがすべて通用すると思い込んではいけないと思います。
「三つ子の魂、百まで」といいますけど、、モノやおカネでなく、乳幼児期の躾こそ、子供に残せる最大の財産だと思います。真摯な姿勢と自分の人格から自然とにじみ出るものを、子供に感じ取ってもらいたいです。子供を「溺愛」してはいけないし、独裁でもだめ、放任でもいけない。自由を与えながら、子供と一緒に遊び、一緒に成長していくべきだと思います。
成長していこうとする気持ち、姿勢」が必要なんですね。
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