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遵化のキツネ

2010-07-13 10:34:42     cri    

























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 今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。

 この時間は、清代の怪異小説集「聊斎志異」から「遵化のキツネ」、唐代の書物「広異記」から「お腹をすかした骸骨」、そして同じく唐の時代の本「朝野僉(せん)載」から「桑の樹」をご紹介いたしましょう。

 まず最初は、「聊斎志異」から「遵化のキツネ」です。

 「遵化のキツネ」

 そのとき、河北の遵化には多くのキツネがいたという。そしてなんとある屋敷を占領するまでになり、その上、常に出てきては人々に害を与えていた。そこで町の人々は、寄って集ってこれらきつねを退治しようとしたが、キツネらはこれへの仕返しだと、あくどいことをするようになり、多くの人が怪我をした。それに町の役所も、これには手が出ないと、ただ人々に豚や羊をつぶしてお供え物に出し、キツネの怒りを抑えろと言うばかり。こうしてここら一帯はキツネのために大変だった。

 と、ある年の夏に、丘という役人が遵化の長官の職に着いた。この長官は下役人からキツネの話を聞くとひどく怒った。

 こちらキツネ、どこから聞いたのか、これまで何事もやり遂げないと気がすまないというこの長官のうわさを知ると、これは考え物だとみんなで相談した結果、歳をとったキツネが一人のばあさまに化け、長官に屋敷に来て家のものにこう告げた。

 「わしはこの町のキツネの代表じゃが、長官さまに伝えてくれや。互いに恨みを買うようなまねはよしましょう。二日間もくれれば、わしは一族を連れてこの土地を去るからとな」

 これに驚いた屋敷のものが、このことを長官に告げると、長官は顔をしかめてそのときは黙っていた。

 翌日、長官は下のものを集め、役所にある大砲(おおづつ)をずべて出してこさせ、それをキツネ屋敷の周りに運ばせ、命を下して屋敷を攻めさた。もちろん、屋敷は瞬く間に吹っ飛び、ばらばらになったキツネどもが空から降ってきた。

 そこで長官が目を細めてみると、一匹のキツネが怪我をして必死に逃げていくのが見えた。

 こうしてこのときから、遵化ではキツネの害はなくなったワイ。

 さて、それから二年たったある日、長官は出世したいために、腹心に金を持たせ都にやった。ところが、長官には都に人がいなかったので、しかるべき役人が見つからず、金を渡す相手がいなかった。そこで腹心は金を自分の遠い親戚である下役人の家に隠してもらっておいた。

 数日後、どこからきたのか、あるじいさんが都の役所に自分の家族が殺されたと申し出、その上、かの長官が公金を横取りし、自分の出世を図るため、その金を都でばら撒こうとしており、その金は、いま一人の下役人の家に隠してあるという。これを受けた役所は、さっそくその下役人の家に行ったが、その金らしいものは見つからない。すると、かのじいさんがやってきて庭の樹の下を指差す。そこで役人たちがそこを掘ってみると、多くの金が出てきた。そこで役人たちがじいさんはと探すと、じいさんの姿はなかった。これには何かあると思った役人たちが調べてみると、金を包んだ袋に「遵化」という文字があったので、この金が、じいさんのいうとおり、かの長官のいる遵化から来たものであることがわかり、その後、長官の罪が明るみに出た。もちろん、遵化の長官は取調べを受け、そのうちに牢獄にぶち込まれた。

 ある日、囚人となった長官は、老いたキツネが出てきて、一族の敵はとってやったという夢を見たので、このときになってキツネ屋敷を壊したとき逃げていった一匹のキツネが自分に仕返しをしたことを悟り、地団駄踏んで悔しがったというわい。

 次のお話は、唐代の書物「広異記」から「お腹をすかした骸骨」です。

 「お腹をすかした骸骨」

 周済川は汝南に住んでいたが、揚州の西郊外に別荘をかまえていた。ある日の夜、この別荘で周済川と数人の友が酒を飲んでいると、庭のほうで音がする。はじめは知らん顔で飲んでいたが、その音が止まないので我慢できなくなった友の一人が明かりを持って庭に出て悲鳴を上げた。これに周済川とほかの友が庭に出てみると、なんと子供のものであるらしい小さな骸骨が、庭のあちこちを走り回っているではないか。周済川たちはしばらくは口をあけたまま、呆然とこれを見ていた。そのうち、友の一人が思い切って大喝すると、その骸骨はなんと石の階段に上がり、友がもう一声怒鳴ると、部屋に飛び込んだ。これは大変と周済川と友たちが部屋に入ると、骸骨は床にあがって「お腹がすいた」と叫ぶ。

 これに友が怒って床の横にあった棒で骸骨を叩くと、「お腹がすいた!お腹がすいた!」とまた叫んだ。これはいかんと、周済川は屋敷の者に刀や棒をもってこさせたところ、急に跪き、「お腹がすいた。食べたい、食べたい」という。そこで周済川が骸骨を叩こうとする屋敷のものを止め、酒の肴である鶏をとって骸骨にやったところ、骸骨はそれを受け取り、窓から庭に出てどこかへ行ったしまった。

 こうして周済川たちはとんでもない一夜を過ごしたが、腹をすかした骸骨に物を食べさせたのだからもう来ないだろうと、次の夜も周済川は同じところで友と飲んでいた。

 すると、しばらくして庭で昨夜と同じような音がする。

 「また来たな!」と今度は周済川が明かりを手に出て行ったので、友たちもそれに続いた。みるとやはり昨夜の骸骨で、今度は庭の樹に登ろうとしている。それはこまると周済川は屋敷のものに麻袋を持ってこさせ、数人で何とかして骸骨を樹から下ろして麻袋に詰め込んで縄で口をしっかり閉めた。そして恐れている屋敷のものに激をいれ、それを近くを流れる川に捨てさせた。

 さて、次の夜、これら度胸のある周済川らが、また同じ部屋で飲んでいると、かの骸骨がまた来た。今度は骸骨が庭で飛び跳ねながら「麻袋じゃだめだ」と叫んでいる。

 「何だ、この骸骨は、何かがあって成仏できないみたいだな」と周済川らは、小さな箱をもってこさせ、おとなしくなった骸骨をそれに入れ、ふたをして縄でぐるぐる縛り、みんなでそれを運んでかの川にそっと流した。

 それから数日が過ぎたある日の夜、周済川が一人で部屋にいると、庭で音がして「食べ物と棺桶ありがとう。これでおいらもやっと天に昇れるよ」という子供の声が聞こえた。そこで周済川が庭に出てみると、そこには誰もいなかったという。

 最後は、同じく唐の時代の本「朝野僉(せん)載」から「桑の樹」です。

 「桑の樹」

 時は、唐の貞観年間。定州の鼓城県に魏全という商人が住んでいた。

 ある日、魏全の母親は急に目が見えなくなったので、あわてた魏全は母を町医者に連れて行ったが、どんな薬を飲んでも目は治らない。そこで町医者たちはさじをなげてしまった。困り果てた魏全が途方にくれていると、隣の人が、この町には王子貞という易者がいて、その占いはよく当たるというので試しに行って見たらと勧める。そこで魏全はわらをつかむような気持ちで次の日にその王子貞という易者を訪ね、細かいことを話した。これを聞いた王子貞は、お袋さんを連れてきなさいというので、翌日、彼が母を連れて行ったところ、王子貞は、母親の手相を見てからいう。

 「あんたのおふくろさんは、普段はどこにいますかな?」

 「はい、疲れたあとはいつも庭にある井戸の側に椅子を持っていき、そこで一休みしておりますが」

 「うん。その井戸の近くになにがありますか?」

 「井戸の近くに?」

 「さよう。井戸の近くです」

 「井戸の近くには・・そうですね。桑の樹がありますが」

 「おう、桑の木ね」

 そして王子貞はしばらく考えてから話した。

 「わかりました。いいですか?来年の三月一日に、東のほうから青い服をまとった人が来ますから、その人に頼みなさい」とだけいう。

 これに首をかしげた魏全だが、母の目を治すことが大事だと考えた彼は、何はともあれ、その時の来るのを待った。

 やがて年が開け、やっとのことで三月が来た。この日に魏全が朝早くから屋敷の玄関のところで東から青い服をまとったという人を今か今かと待っていた。

 やがて午後になり、東から青い服をまとった職人風の男が来たので、魏全はこの男を呼びとめ、ことを話したあと、怪訝な顔をしている男を屋敷に入れ、上等な酒やうまい肴を出してもてなした。この男、何のことがさっぱりわからない様子だったが、魏全の親孝行さにいくらか感心していう。

 「私は鋤を作ることを商売としているもの。何もできませんが、鋤を作ってあげましょう」

 これを聞いた魏全、何だ?この人が鋤を作れば、お袋の目はみえるようになるのか?と首をかしげたが、かの易者の王子貞が、この男に頼みなさいと言うのだから仕方がない。こうして男はうまい酒と肴をご馳走になったお礼にと庭に出た。そして鋤を作るための材木をさがしに、斧を手に庭を回ったところ、材木となりそうな桑の樹の大きな枝が、横下にある井戸の口をふさいでいたので、男はこの枝をつかみ、斧で切り取ってしまった。これを見て魏全は、これからどうなるのだろうと不安になってきた。と、そのとき、奥で休んでいた母親が、魏全の名を呼びながら一人で部屋から出てきた。

 「母さん、どうしたんです?勝手に出てきたりして!ころんだらどうするんですよ!あぶない」と言おうと思った魏全だが、なんと母親は目を輝かせニコニコしながらこっちを見ている。これに魏全は驚き喜んだ。

 「母さん、目が見えるんだね。目が見えるんだね」

 「息子や、そうだよ。居間で休んでいたら、不意に目が見えるようになったので、お前を探しにきたんだよ。今はものがはっきり見えるよ」

 母は娘のようにはしゃぎ喜んでいる。そこで魏全がかの男のほうをみると、こちらの親子の話が聞こえたのか、その場に立ってきょとんとしている。

 このときになって魏全は、かの王子貞の言ったことが本当だということがわかった。そこで魏全は、屋敷のものに金を持たせ、それを男に渡して何度も礼を言って送り出した。

 こうして次の日に、魏全は母と共に王子貞をたずねたところ、王子貞は「よかったですな。実は桑の樹のせいだったんですよ。桑の樹がいたずらして、あんたのお袋さんが毎日のように中を見る井戸の口をふさいだのですよ。」

 「え?どうして桑の樹が?」

 「それははっきりわかりませんが、あんたのお袋さんは若いときはとてもきれいな方だったのでしょう。それを妬いていたずらしたのかもしれませんぞ」

 これを聞いた母親は顔を赤らめたが、魏全の方は、持ってきたお礼の金を渡して、屋敷に帰ると、その日のうちに庭の桑の樹を屋敷の外に移してしまったという。

 そろそろ時間のようです。来週またお会いいたしましょう。

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