今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
7月ももうすぐ下旬。北京はまもなく開催されるオリンピックの準備でおおわらわ。私たち放送局の日本語部もいろいろと大変なようです。
で、この林涛ですが、この「昔話」の番組の作成以外は、普段はニュースやリポートのチェックなどを担当しているので、仕事はあまり変わりません。
ところで、暑くなると冷えたものがいいですね。この林涛は、先日の晩酌の肴として冷やしそばを作りました。ざるそばとは違いますよ。蕎麦は、北京でも売っているのでスーパーで上等なものを買います。それを硬めに湯で、氷水で冷やしガラスのお碗に入れておきます。そばつゆは日本から買ってきた味醂と醤油を使い、なべに味醂を入れ、熱くしてアルコール分を飛ばす。そして同じ量の辛口醤油を加え、沸騰させて、同じように日本で買った出汁の元を適量に加え、それにそばつゆを足して冷ましてできあがり。後は好みのきゅうり、ハムとトマト、それに硬くゆでた芹を適当に切って皿に盛るだけ。
酒はもちろん、中国の蒸留酒「白酒」です。わさびも忘れないように。
野菜やハムは別につまみ、わさびを入れた汁に蕎麦をつけ、一口すすって酒、そしてきゅうりとハムなどをつまむのです。うまいですよ。
今日は、魚のイシモチにまつわる「皇帝とイシモチ」、それに酒の神様といわれた杜康にまつわる「お酒はどうやって出来たのか」というお話をご紹介しましょう。まずは「皇帝とイシモチ」からです。
「皇帝とイシモチ」
むかし、むかし、皇帝は、毎日山の幸、海の幸を口にしていたが、酒と色におぼれ、いつもふらふらし顔色は悪かった。そこで、体が丈夫になり長生できる食べ物を探せと大臣らに命じた。
と、ある日、皇帝が二日酔い覚ましに、庭で熱いお茶を飲んでいると、赤い顔をした宰相が数人の大臣と共にやってきてひざまずいた。
「おお。その方ら、体が丈夫になり長生きできる食べ物がみつかったのか?」
「申し上げます。私めが聞きましたところによりますと、東海の漁民は百歳以上生きたものが多いということで、漁民どもは毎日魚を食べ、たくましき体を保っております。で、魚といえども多く、中でもイシモチが丈夫な体作りには一番ということでございます」
「うん、うん、イシモチがな」
すると、ほかの大臣たちも、「いかにも」、「おっしゃるとおりで」、「私めもそう聞きました」などという。これに皇帝はうなずく。
「しかし、イシモチはかなり大きいと申すぞ。朕一人では食べ切れん」
これに宰相は答えた。
「皇帝さま。私めが考えますには、イシモチは、人間の体のためになるものがその頭に詰まっており、頭を食べますと元気がでるばかりか、いろいろと良い考えがでてくるというもの。そのうえ頭とはすべてのものの上にあり、皇帝さまは、この国の最上のお方ゆえ、イシモチの頭を口にされるのは当たり前。どうか、イシモチの頭をお食べくだされ」
「ほう、そちは朕に頭を食べろというか」
「はい」
これに横にいた青い顔をした大臣がいう。
「皇帝さま、私めの考えは少し違います。イシモチのよいところはみな肉にあるゆえ、イシモチの肉をお食べになれば元気が戻りまする。どうか、頭よりに肉を」
「なんと、頭より肉を食べよとな」
「いかにも」
このときもう一人の背が低い大臣が前に出た。
「申し上げます。私めが聞くところによりますと、イシモチの粋は腹の中の浮き袋に集まっております。ですから浮き袋をうまく煮上げてお口にされれば、たちまち元気が戻りましょう」
「うん、うん、イシモチの浮き袋がよいと申すか」
「はは!」
と、今度は背が高くやせている大臣が前に出た。
「私めはそうは思いませぬ」
「なんじゃ?申してみよ」
「はい。イシモチの粋はすべて尻尾に集まっております。魚はみな尻尾を使って泳いでおりますので、尻尾を食べれば精がつき、力も出てくるというもの」
「なるほどのう。魚は尻尾がなければ泳げんからな。しかし、その方らの言うこと、いったい誰が正しいのかのう?」
これに宰相と大臣たちは、小さな声で争いあった。皇帝はこれを退屈な顔をしてみていると、宰相がいった。
「皇帝さま。私めらの考えはまとまらないので、これはいっそのこと漁民にきいてみましょう」
「うん、そうじゃ。それが一番いいわい」
これに大臣どもは首を縦に振った。こうして数日後に、かなり歳をとっているが、とても元気な漁民が宮殿に呼ばれた。
そこで宰相がいう。
「これ、そのもの、あとで皇帝さまがそちにものを尋ねられる。よいか。思ったとおりのことを答えるのじゃ」
「はい、はい、わかっております」
そしてしばらくして皇帝がその部屋に入ってきたので漁民は頭を地べたについて硬くなっていた。
「おう!そのほうか。イシモチを食べ元気で長生きしているという漁民は」
「はは!おかげさまで。で、今日は始めて皇帝さまにおめにかかります」
「よい、よい。面を上げい」
それでも漁民は頭を地べたにつけたままでいた。これに皇帝は苦笑いし、そのまま聞いた。
「宰相どもが朕にイシモチを食べろと勧めてのう。しかし、頭を食べるのか、肉を食べるのか、または、浮き袋を食べるのか、それとも尻尾がいいのか、考えがまとまらん。どうじゃ。そちはイシモチのどこを食べて元気に長生きしとるのじゃ?」
「はい。申し上げます」
「うん、もうしてみよ。うまく答えられれば、一隻の大きな漁船をほうびとしてつかわそう」
「はい、ありがとうございます」
「では、頭、肉、浮き袋と尻尾のどれがよいのか申せ」
これを聞いた漁民、ここで宰相や大臣のいったことを一つでも違うといえば大変なことになると悟り、大きく息をしてから答えた
「申し上げます。イシモチは体にとてもよい魚で、春には頭を食べます。春夏秋冬、春が最初ですから、やはり頭が一番。人は最初に力が要りますので、頭を食べれば力がつきます」
これを聞いた宰相はニコニコ顔。
「夏になりますと、肉を食べます。夏は汗が多くでるので、疲れやすく、このときに肉を食べると元気になります」
これに青い顔の大臣が得意になる。
「秋ですが、秋には浮き袋を食べます、秋の浮き袋には油が乗っていて、これは逃せませんから」
背の低い大臣はこれを聞いてニヤニヤ。
「そして冬ですが、冬は年末の季節なので、体には寒気が多く、それを追い払うのにはやはり尻尾が一番でございます」
もちろん、これに背の高いやせている大臣はうれしさのためにもう少しで声が出そうになった。
こうしてイシモチは頭、肉、浮き袋と尻尾が季節ごとによいものになってしまい。この答えに満足した皇帝は、漁民に褒美として漁船を与えた。また、宰相と三人の大臣もそれぞれ面目を保ち、皇帝から褒められたワイ。
が、そのあと、皇帝は漁民の答えたとおり、イシモチを食べたが、体は丈夫にはならず、なおも青い顔をしていたと。
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