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ヌルハチと野菜包みのご飯(再放送)

2010-02-23 10:31:53     cri    

 さて今度は明の時代の正徳帝にまつわるお話です。題して「真珠粥よ鳳(オオトリ)の眼」

 「真珠粥と鳳の眼」

 南のアモイの人は、米のお粥を食べるとき、「麦螺鮭」(まいろーくえい)という海で取れる小さな貝の漬物をつける。地元ではこれを「真珠粥と鳳の眼」と世呼んでいる。これには謂れがあった。

 それは明の時代。時の皇帝正徳帝は、この年に暇を見て書生のなりをし、武芸達者な側近一人を連れ、こっそりと王宮を出て旅をし、なんと遠く南にある福建あたりまでやってきた。ある日、若い正徳帝と側近は海の近くのある山に登り、谷があるのを見てそれを降りたり、また丘にのぼったりし、かなり疲れ、どうしたか迷子になってしまった。それに側近に持たした食べ物もとっくなくなっていて腹の虫が大きく鳴いている。側近も腹ペコだが、それでも疲れと空腹を我慢している皇帝をかばいながら人家を必死になって探していた。しばらくしてやっとある農家を見つけたので、声もかけずにその家の中に入っていった。すると、中では白髪頭の老人と老婆が、丁度食事しているところだった。二人の老人は急に人が入ってきたのでびっくりした眼で来客を見た。これをみて正徳帝は両手を合わせ一礼した。

 「これはこれは、失礼いたしました。わたしは通りすがりのもので、この連れと共に一日山を登り、とうとう迷子になってしまいましてな」

 そこで老人がこたえた。

 「そうでございましたか。それはお疲れでしょう。家には私とこの老いた道連れがいるだけ。さ、そこに座って休みなされ」

 これを聞いた正徳帝は、この親切な老夫婦が客好きなことがわかり安心した。

 「さ、お茶などありませんが、先にこの白湯でも飲んでいなされ。いま、お二人の食べ物を作りますから」

 そこで正徳帝はすわり白湯を飲んだ。実が宮殿では白湯などは薬を呑む以外に口にしないのだが、このときは喉が酷く渇いていたのか、とてもうまかった。そしてすぐに飲んでしまったので、これをみた老婆は、また二人のお椀に白湯を注いだ。こうして喉を潤した二人の前にお粥と小さな貝の漬物のようなものが出された。

 「さ、どうぞ。いまあんたがたに出せるものは今、これしかありませんものでね」

 こちら正徳帝と側近は、あまりの空腹なので一息に食べてしまいたいのをこらえ、箸を丁寧に取りわざとゆっくりだべはじめた。しかし、お粥が口に入ると、一粒一粒のやわらかくなった米のなんともいえない香りと味が口中にひろがり、それがより大きな食欲を誘い、二人の手と口の動きが早くなり、すぐにお粥を食べてしまった。そこで老婆がお椀にお粥を注ぎ、「この麦螺鮭(まいろーくえい)もいおしいですよ。お粥にぴったりあいますから」という。もちろん、正徳帝らは二杯目のお粥を食べながら、この貝の漬物に手を出し始めた。するとお粥がよりうまくなり、瞬く間に二杯目はなくなった。これをみた二人の老人は微笑みながら三杯目を出す。こうして正徳帝と側近はなんど十数杯ものお粥と三皿の麦螺鮭(まいろーくえい)を平らげてしまった。

 食べ終わって一息ついた正徳帝は顔を少し赤らめ「これはこれは、あまりにも空腹だったので、かなりご馳走になりました。で、このお粥はなんといいますかな」

 「ええ?ははは!こんな田舎にたいしたものはありませんわい。そんなに気に入られたのであれば、名をつけましょう」と老人は暫く考えて言った。

 「やわらかくなった米は真珠のようですから真珠粥と。そして貝の漬物はオオトリの目のように光って見えますので鳳の眼にしましょう」

 「これはおもしろい。真珠粥に鳳の眼ですね。けっこうですね。ところで聞き遅れましたが、ご老人は?」

 「ああ。わしですかな。田舎ものですワイ。蘇といいます」

 「蘇のご老人ですね、わかりました」

 こういって正徳帝は側近に金を出させ、二人の老人が受け取らないというのを無理やり受け取らせ、では失礼いたしたと言い残してそこを離れ、何とか夜までにに宿に戻った。

 こうして正徳帝はまもなく無事に都にもどり、いつもの暮らしに戻った。そしていつものように宮殿の食事をしたが、どんな山の幸と海の幸を食べても、味がない。そこでどうしてもあの日のお粥と貝の漬物がほしくなり、厨房に同じものを作るよう言いつけた。しかし、宮殿の厨房人たちはこれまで「真珠粥と鳳の眼」という料理を耳にしたことがないので困り果てたが、そこは皇帝の言いつけなので、皇帝の供として付いて行ったかの側近に料理の材料を聞いた。しかし米はあるがかのこの麦螺鮭(まいろーくえい)という小さな貝がない。仕方がないので、ある武官をやって早馬を飛ばし、南の福建に赴き、この貝を手に入れると同時に、正徳帝に粥などを食わしたというかの蘇という老人を訪ねた。これを聞いた老人はあのときの書生が皇帝だと聞いてびっくり。しかし、皇帝があのときのものをひどく気に入り、いまも食べたいと宮廷の厨房人に命じ、厨房人たちが困ってきると聞いて大笑いしたあと、この武官にいう。

 「あの時は皇帝さまはかなり疲れなされ、またお腹をすかしていられたようでござる。実は粥と貝のお漬物は大したものではなく、空腹であれは何でもうまく食べられるものでござるよ」

 これを聞いた武官はさっそく貝を持って都に帰り、このことを皇帝に告げると皇帝は怪訝な顔をして、さっそく厨房に「真珠粥と鳳の眼」を作らせ食べてみたところ、うまいはうまいがあのときのようなうまさは感じなかったという。

 そこで正徳帝、「かの老人の言うことには間違いない」といい、また武官にもう一度老人の家に向かわせ、かなりの褒美を与えたという。

 (林涛)


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