で、李皓は翌日夜に師匠のところに着き、このことを告げた。これに師匠はしばらく考えていたが、不意ににやっと笑った。李皓がどうしたのだと聞くとこう答えた。
「実はな、李皓や、むかしわしが師匠に医術を学んでいたとき、一人の年下の若者がいて、賢い上にかなりの腕を持つようになったが、どうも品格がいかん。というのは、師匠の娘に惚れ、何とかして師匠の娘婿になろうと、いろいろ考え、果ては師匠を騙そうとしたんじゃ。幸い師匠がそれを見抜きこっぴどく叱りつけたところ、やつはその夜に師匠の秘伝の処方を盗んで逃げてしまった。そして方々を回ったらしいが、うまくいかないので、ふるさとに帰ったという。何でも、そうじゃ!そこはお前のふるさと淄(し)川らしいぞ」
「ええ?それは本当ですか?」
「うん、こういうことじゃ。やつが盗んだ処方のなかに、よくなるはずの病をひどくするものがある。そうか、わかった。お前がふるさと一帯で評判がいいものだから、やつはお前の評判を落とすため、弟子などに怪我させてお前のところに行かせ、その弟子に施したお前の医術を台無しにし、傷口を悪くして、またお前のところに行かせたのじゃ」
「そんな。私はその人に迷惑なことしてませんよ」
「あたりまえじゃ。お前が人に迷惑をかけるものだったら、わしは弟子にしてはおらん。安心せよ。わしがお前にどうするかを教えてやる」
ということになり、師匠は早速、その秘伝の処方を李皓に教えた。
こうして翌日朝早く、李皓は師匠の家を離れ、次の日の昼ごろ家に戻った。そして早速師匠の教えた処方に基づき、薬を調合し、かの二人の若者の足の膿をきれいに出してから、その薬を傷口から中へ詰め込み、上に包帯をした。すると翌日二人の足の腫れが引いたので、李皓はまたもかの薬を傷口に塗って包帯をした。するとその次の日に二人の足はかなりよくなったので、李皓はいくらか小銭を渡して「すぐ治せなくてすまなかった」」いい、家に帰っても大丈夫だという。これに二人の若者は急に李皓の前に跪いた。
「なんだ?お若いの、いったいどうした?さあ、立ちなさい」
これに若者たちは、つらい顔して言い出した。
「先生、どうもすみませんでした。実はおいらたちは、師匠に強いられてやったんです」
「なんだって?お前さんたちの師匠?」
「はい、おいらたちの師匠は、先生に病人を取られたといって、おいらたちの足を傷つけ、それに薬を塗って傷口が腫れたので先生のところに来さしたんです」
「うん、うん、それで?」
「それで師匠は、一回目に先生が薬を塗った傷口に自分の薬を塗りつけました。そしたら傷口は治るどころか、ひどくなったので師匠はまたおいらたちを先生のところに向けたんです」
「ほう?で、二回目に私が施した薬は?」
「はい、それも同じように師匠がして、おいらたちをまたここにこさせました」
「つまり、お前さんたちの師匠は、私の薬の上に自分の薬を塗ったのだな」
「そうです。まちがいありません。本当はすぐ治る傷なのに、先生の評判を悪くしようと師匠がやったことです」
「いや、お前さんたち、よく本当のことを話してくれたね。ありがとう」
「ありがとうだって、とんでもない。それにこのお金お返しします」
「ああ。その小銭はいいからとっておきなさい」
「先生、先生は金儲けのためではなく、本当に病人のために尽くしているお医者さんだということが、つくづくわかりました。どうか。先生を騙したおいらたちを許してください」
「いやいや、もういいんだ。お前さんたちが正直になってくれたので私はうれしいよ」
「先生、おいらたちを弟子にしてください。もうあの師匠のところへはもどりたくありません。先生についてまともな医術を学び、正直な人間になります」
「なにをいう。私はまだ未熟だから、弟子など入れるわけにはいかない。なあ、お前さんたち、今日は帰りなさい」
これに二人の若者は何度も何度も弟子にしてくれと頼んだが、李皓はなんと言ってもそれを断った。そこで二人は仕方なくそこを離れ、師匠のところへは戻らずどこかへいってしまったワイ。
それからというもの、かの二人の若者が本当のことを人々に告げたせいか、李皓のところには以前より多くの病人が来るようになり、のちに李皓は広く知られた名医になったわい。
え?二人の若者の師匠?さあ、その後はどこかへ行ったのか、知らせなどまったくなくなったという。
そろそろ時間のようです。来週またお会いしましょう。
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