とある日、師匠は李皓を自分の部屋に呼びこういう。
「李皓や、お前も頑張ったのう。賢いお前にもう教えることはない」
「え?お師匠さま。なにを言われます」
「本当じゃ。あとは病を治しながらお前の腕を磨くだけじゃ」
「え?本当ですか?」
「お前は、医術でふるさとの人々を助けたいのであろう」
「はい。おっしゃるとおりです」
「では、明日にでもふるさとに帰りなさい。そして思ったとおりにやり、多くの人を助けるのだ」
「はい。そうしたいです」
「それに、お前がわしの元に来て十年になる。お前の妻と子供もくびを長くしてお前の帰りを待っていることだろう」
「はい。ありがとうございます」
ということになり、李皓は翌日、荷物をまとめ、涙を流して師匠と別れを告げ、十年ぶりにふるさとへ帰った。
そして李皓は、まずは山に登り、川を渡り、薬草を採り、薬になる虫や小さな獣を多く捕まえ、師匠に言われたとおりに薬を調合したあと、試しとして飲み薬は自分や、妻、または子供が飲んだりし、塗り薬はそれぞれの傷跡にぬったりした。もちろん、これはあぶないことで、自分も含め気を失ったり、怪我がひどくなったこともあるが、これを通じて多くのことを改めて知り、その上で医者としての仕事を始めた。
こうして村人の風邪や頭痛、それに腹下し、軽い傷などは一度診て、薬を作りすぐ治してやった。またできものなどは膿をきれいに出して膏薬を張り、病人が何度も来なくても治った。その上、薬代などはほとんど取らないので、近くの町の人たちまでが病にかかったり、怪我をすると李皓の元に来る有様。つまり李皓の評判はかなり広まったというわけ。もちろん、医者であれば、家の野良仕事もできなくなる。これを見てまわり近所が代わりに畑を耕し、種まきと取入れなどをしてくれたので助かった。
さて、ある日、柴刈りしていて足に怪我したという二人の若者がきた。そこで傷を見てみるとすでに膿んでいる。李皓は傷口から膿を出し、傷口の中に薬を塗り、膏薬を上に張り、腫れ引きの飲み薬を渡した。もちろん金を取らなかったので二人は何度も礼を言って帰っていったが、数日後、この二人はびっこを引いてまたやってきた。李皓が首を傾げてそれぞれの傷口をみると、なんと腫れがひどくなっている。
「うん?これはおかしい」と李皓は師匠が教えてくれたもう一つのやり方で傷口に薬を塗って二人を帰した。これで大丈夫だと思っていた李皓だが、なんとこの二人は翌々日また来た。これはいかんと李皓は、この二人を庭小屋に泊まらせ、また妻は飯などの世話をし、それは大変だった。おかしいのは、ほかの病人が来るとこの二人は無理して庭に出て、ほかの病人に李皓が自分たちの足をこんなに悪くしてしまったと言いふらす。その上、このことを役所に訴えるとも言う。
このことがあってから李皓の元に来る病人は少なくなり始め、人々は変なうわさまで立て始めた。これにこまった李皓は、数日後、妻にかの二人のことを頼むと必死の顔で遠くに住む師匠のところに出かけた。
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