中国の名門大学、中国人民大学がこのほど今年の学生募集の点数を発表した。ロシア語、ドイツ語、フランス語と日本語の四学科は初めて、男女別の応募点数を基準にした。男子学生向けの点数はいずれも女子学生より10点以上低いという。
これは大きな議論を招いた。「応募点数に男女差があるのは女子学生の権益を損ない、不公平だ」と訴えの声が高まった。一方、学校側の説明は、これは「男尊女卑」による差別ではなく、男子学生の成績は女子より、余りにも悪いから、応募学生の男女比例を保つため、しようがなく男子向けの応募点数を引き下げたという。そうでなければ、これらの学部に、男子生徒がいなくなるだろうということだった。
語学の勉強など、女性は男性より優れている。大学の時、うちのクラスには、女子学生は17人、男子はわずか5人。しかも、男子学生が1人しかいないクラスもある。
また、中国の大学入試試験では、2007年から、女子学生の成績は男子を全面的に抜いた。一部理科系の大学でも、女子学生の成績は男子より優れる。2010年、中国で大学に受かった高校生のうち、女子生徒は男子生徒より33万人も多い。ここ9年間、北京で理科系と文科系の大学受験成績で、トップに輝いた21人のうち、15人は女性。今年6月に終わったばかりの大学受験、江蘇省、広東省、福建省、雲南省、遼寧省、吉林省、天津、新疆、広西では、文科系と理科系の成績ナンバーワンはいずれも女性だという。女性の記憶力や暗記能力は男性より優れるので、受験勉強に強いのも理解できる。
「中国青年報」によると、上海市の小、中学校では、小学校三年生から中学校三年生まで、女子生徒の平均成績は男子生徒を遥かに上回っている。英語や国語など、文科系のほか、物理や数学、化学、生物、コンピューター、体育、もともと男子生徒が得意な科目でも、女子がリードするようになった。スポーツやコンピューターなども女子生徒に負けたのはちょっと驚きですね。
これに対し、専門家は「中国式教育で女子学生は男子学生を全面的に抜き、制覇したことは、国の発展や社会の進歩に非常に不利だ。今後の就職や結婚にも影響を及ぼす。中国の次世代は「男子危機」に迫られている」と指摘している。
全人代代表の統計によると、いま、中国に2億人の小、中学生がいる。現在の教育評価基準によると、うち5000万人は成績が悪い生徒だ(期末試験での平均点数が不合格、60点未満という)。また、そのうち80%は男子生徒だという。成績だけでなく、男性生徒の性格も弱くなっている。競争精神に乏しいし、進取心が足りない。ちょっとしたことで諦めたり弱音を吐いたりするし、短気で辛抱弱く、親に頼る癖があるという。
<男子危機を招く理由>
家庭:一人っ子で、親の過保護。親の言いなりにしながら、遊ぶ時間がない。
学校:詰め込み式の受験教育、成績主義によって、男子生徒が大自然と触れ合ったり冒険したりするチャンスがない。
社会:今の男性アイドルには、なよなよした美男子が多い。昔は提唱していた男性の逞しさや、男らしさが時代遅れと見られ、輿論の導きが足りない。
日本では5~6年前に、最近の若い男性の特徴を表す「草食男子」という言葉が登場。今ではすっかり定着。「草食系男子」は、「新世代の優しい男性のことで、心が優しく、男らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと」。30代未婚男女400人を対象におこなった調査では、「どちらかといえば草食男子」 (61%) 、「完全に草食男子」 (13%) と、「自分は草食男子」と思う男性は75%にのぼった。男性の若者の変化は、中国と共通するところも。
中国では、登校と下校の出迎えなど、日本ではめったに見えないだろう。多くの家庭は共稼ぎなので、一人っ子の子供は小さい頃から、祖父母やお手伝いさんから面倒を見てもらう。女性の多い環境に育った男の子は、どうも男らしさに欠けるような気がする。これまでの輿論では、「男尊女卑」に対抗するため、女の子の教育に独立精神が強調され、「男に負けないように頑張るぞ」とよく耳にする。女性が強くなっている一方、男性がそのままだから、弱く見えるのではないかと思う。
<男子危機への対応>
今年4月、上海第8中学校では、「男子クラス」を設けた。その目的は男子危機への対応だという。教育内容に普通の授業のほか、生物実験やスポーツ、軍事訓練の時間が大幅に増えた。また、ボクシングや柔道、武術、将棋などの授業が新設され、試験よりゲーム、遊び心の養成が重要視され、男同士の競争精神を育てるという。
また、中国中央科学研究所の調査では、中国の13歳から18歳の都市部の学生の25%が肥満と言う結果。また日本と中国の青少年を比較したデータでは1日2時間以上運動をする学生の割合は中国6.3%、日本は21.3%。課外運動を行う中学生の割合中国8.0%、日本65.4%の結果。私は日本の子供のほうがはるかにひ弱だと思っていたがこれを見ると、中国も男子クラスのような対策が必要かも。
<男子危機」についてネットユーザーの議論>
1、これには女性にも責任がある。女性が余りにも強すぎるから、男性が弱く見える。中国の女性に、「頑張りすぎるな!もっと余裕を持ってほしい」と言いたくなる。(男性、18歳の大学1年生)
志摩:日本の場合は今の高校生以下ぐらいはやはり圧倒的に女性が強くなっているが、社会に出ると、まだまだ、おとなしい女性が多く、ある意味での「女性」という立場での仕事の仕方に満足している、女性も多い。また、あえて、正社員にならず、派遣社員など、アルバイト的な仕事の仕方をして、お金がたまると海外に行ったり、自分の趣味に打ち込んでまた、働くというような男性にない自由な生き方を謳歌している女性も多い。私はこの生き方が、とてもうらやましい。男の競争社会に取り込まれず、自分の自由な羽をもった生き方というのもあるのでは?
2、「男子危機」は女性にとって「ラッキー」なことだ。歴史や人類の発展から見ると、母系社会に戦争や衝突が少なく、社会の安定に有利だという。(25歳の女性、雑誌の編集者)
志摩:女性の強いのは昔から。なぜ子供を産む強さだけを見ても、男性はかなわない。ただ、今は、その強さが表に出すぎているような気がすると言っていた。男は、いつも女性の強さに頼っているところもあるが、男と女、お互いの特徴を生かし、認め合う社会のほうがお互いに暮らしやすいのでは?
3、「男子危機」なんて、全く心配する必要はない。僕ら男性は弱くなっているのではなく、より繊細でより優しくなる。紳士精神の表れだ。これは社会の文明レベルの向上に繋がっていることだ(20歳の男子大学生)
志摩:男性の立場から言うと、この意見に賛成。それと、女性が皆、アマゾネス(勇敢で力強い女性兵士)みたいになるのは、男性も、息苦しいし、女性にとってもあまりいい環境でないのでは?
4、いまの中国では、男性が弱くなるのではなく、女性が乱暴的で野蛮すぎるから。女性は「かわいい」より「カッコいい」おしゃれに拘って、男に見えるように強がっている。われら男性は女性のプライドを損なわないため、女性と争うのを遠慮している。弱く見えるのは一種の優しさだよ。世間に誤解されるのもしようがないことだ。(25歳の男性、IT企業に就職した新卒者)
志摩:真面目で勉強につよい女性と、おおざっぱだけど大器晩成の男性という特徴は、日本でも、中国でも共通にあるのでは。それが今、中国の社会では表に出てきているのだろうが、あえて言わせてもらえば「優しさ」とか、「気づかい」だとかが社会にもたらす潤滑油としての価値を女性側ももう少し考えてもいいのでは?
中国では「陰」を女性を指し、「陽」は男性を指す。「陰」と「陽」のバランス維持は極めて重要なことだ。男性は男性らしく、女性は女性らしくなってほしい。しかし、生活様式の多様化によって、人々の価値観や美意識、考え方もどんどん変わっている。他人に支障を与えない限り、人それぞれの選択や意志を尊重すべきだ。ただし、子供の教育では、女の子にしても、男の子にしても、過保護を避けてほしいと思う。(9月13日オンエア「イキイキ中国」より)
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