世界贅沢品協会が今年1月に発表した報告書によりますと、去年12月末までに、中国では、プライベートジェットやヨット、高級車を除く贅沢品市場の年間消費総額は126億ドルに達し、国際市場で28%のシェアを占めており、世界最大の贅沢品消費国になったということです。途上国でありながら、贅沢品市場を潤わす階層がいます。中国は深刻な格差問題に直面していると言えます。また、同じ報告書によりますと、昨年のクリスマスから今年の春節までの期間に、中国人が海外での贅沢品の消費総額はなんと57億ドルに達し、史上最高を記録したんです。
世界は不況一色なのに、中国人の購買力は本当にすごいもんですね。日本でも、中国人ツアーの至る所に商売が好調ぶりを見せているんです。確かに消費は経済成長に刺激を与える原動力の一つでもありますが、贅沢品への追求は今の中国経済や世界経済に本当にプラスになるのか、人々の意見はまちまちです。経済を活性化させるという意味ではプラスじゃないでしょうか。お金は使ってもらわなければまわりませんし。ただ、人々が様々な意見を持つのもわかります。かつて日本も海外へ行ってブランドを買いあさる旅行客が多く、批判的な目で見られていました。
実は「贅沢」この言葉は中国ではマイナス表現なんです。節約や素朴を提唱している中華文化に背いているとも言えます。一部の人々は、贅沢品は途上国の中国国民にとっては、いきすぎた消費で、豊になる前の無駄使いだと見ています。しかし一部の人は、贅沢品の多くは世界一流のブランドデザイナーが手がけたもので、高いことは高いけど、それなりの価値があり、人々の精神的な求めを満たしているという意見もあります。
一部の贅沢品はデザインから生産、サービスまで細かいところまで行き届いて、それをまさにブランドとして付加価値を売っていますし、個性ともいえます。実際に私も高いとは思いますが、それなりに高いという理由があることはわかります。しかし、商品そのものの値段と性能、価値はつながっていますけど。一部の贅沢品は余りにも高すぎますね。むしろ高価な値段で一般庶民との距離感を置いて、富裕層の関心とか、注目を集めていると思います。でも、ブランドとはまさにそれが目的じゃないでしょうか。世界多くの贅沢品、いわゆる高級ブランドは故意に一般消費者との距離感を作って、優越感を産み出す。このような優越感を求めるために、人々は贅沢品を追いかけているのではないかと思います。
これも一種の個性と言えますね。面子を非常に大事にしている中国人は海外旅行に出かけると、どうも見栄を張るために、ついつい贅沢品に手を出してしまうようです。中国の古い言葉には、「窮家富路」と言うのがあります。つまり、家でいくら節約しても、旅に出ると、豊に見せるという意味なんです。日本には同様の言葉は聞いたことがありませんが、やっぱり「見栄」とか、自分の価値をあげるためにブランドを身につける人がいると思います。後はみんなが知っている物を持っていると安心とか。日本人っぽいですよね。
それから、中国人が旅行先で多額の消費をする理由の一つには、旅に出ると、必ず親友に何かお土産を買ってあげる習慣が関係しています。日本もお土産文化はありますが、友だちに買うとなると、一般的にはせいぜい化粧品とか香水ぐらいです。また、贅沢品といえば、中国国内では、外国ブランドの高級時計やバッグ、ジュエリー、化粧品などの関税が高いので、外国ではかえって安く買えます。お買得と思ってついつい買っちゃうということもあります。つまり、外国で買ったほうが国内で買うより安い。これは一種の節約ってことですね。旅先では気が大きくなります。バーゲンの時と同じです。
でも、世界贅沢品協会の報告書によりますと、中国人が贅沢品への消費意欲には、いくつか中国人らしい特徴も見られるんです。まずは人気の品物として時計やジュエリー、服装、香水、バッグなどの小物に集中していることです。ちなみに大物はプライベートジェットやヨットで、欧米人や先進国の富裕層なら、常にというこのような大物贅沢品への消費志向が高いという特徴が見られます。ここ数年中国では「富裕層」というものが出現していますが、このように世界範囲で見るとまだまだともいえます。
また、もう一つの特徴は贅沢品消費者の低年齢化です。日本や欧米などの先進国では、40代から60代までの年齢層は贅沢品消費の主力ですが、中国では、73%以上の贅沢品消費者は45歳未満で、45%の消費者は18歳から34歳の間に集中しています。ちなみに、日本ではこの数字は37%です。
中国の若い世代は日本や欧米諸国よりも贅沢品を買い求める意欲が強く、一方、中国で45歳以上の方はむしろ昔の節約精神を生かして、いくらお金を儲けても、無駄使いをしないタイプですね。逆に若者たちはいくらお金がなくても、ほしいものを頑張って手に入れようとしているんです。
また、最後の特徴は「お付き合いのお土産傾向」です。欧米では、贅沢品を買う人の多くは自分のご褒美とか、親友のために買っているんですが。中国では、人とのお付き合いの中で、贅沢品を送ったりする傾向も見られます。例えば、海外へ出張とか旅行する場合、仕事上で関係のある人に何かちょっと贅沢なものを買ってあげる人がずいぶんいるんです。特に、ビジネスをやっている人にとっては、人脈を作る交際手段の一つになっているんです。中国社会での人脈づくりは確かに重要ですから、将来の自分への投資と思えば、贅沢品もただただ自分の欲求のためだけの買い物とは言えなさそうですね。
いま、このような贅沢品への消費ブームに懸念の声も高まっているんです。「未富先贅」、つまり豊になる前に贅沢になってしまうということです(日本にもバブル時代がありました)。消費することはそもそも個人の権利です。好きなものを買うのも人類共通の願いでしょう。贅沢品が高価なわりに、それなりの価値や伝統もあります。それを理解すれば、そのものも自分にとって特別になるでしょう。でも、贅沢品に頼らないでも素敵な人って言われるようになるのが一番じゃないでしょうか。
日本では買い物症候群という言葉もあり、消費で身を滅ぼす人もいますから、中国の若者も気をつけてほしいですね。贅沢品への憧れが働く意欲につなげるのならいいですけど、その反面、自分の身の丈を知るってことも大事かもしれませんね。自分を満足させることは個人の自由です。でも、節約という美徳も忘れてはなりませんね。(「イキイキ中国」より)
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