百人百色、今回のキーワードは「逆カルチャーショック」です。日本で15年間過ごし、去年中国に戻ってきた中国人女性、李晶さんにお話をうかがいました。
さて、カルチャーショックとは個人が自分の考え方、価値観、行動様式、生活規範とは異なる文化環境と接した時に受ける心理的衝撃のことをいいますが、「逆カルチャーショック」というのは?答えは李さんの背景にあります。
李さんは中国で生まれ育った中国人です。高校卒業して日本への留学を決めます。1995年のことでした。はじめての海外で慣れない環境にまず、最初のカルチャーショックを受けました。そこで15年ほど過ごし、昨年母国中国へ戻ってきたんです。すると今度は母国の環境変化にとまどい、再びカルチャーショックを受けているということなんです。
母国だから知っているはずなのに、それでも慣れないことがある。だから逆カルチャーショックなんですね。それだけ中国が変わったともいえるし、李さんが日本になれたということもありますね。18歳という多感な時期に日本へ渡り15年を過ごした李さんは中国人でありながら、体には日本文化が染み渡っていたんです。今、李さんは中国企業で働いています。そこで様々なとまどいを感じているようです。今日はそんな李さんにいろいろとお話を伺ってみました。まず15年前、日本に行った時、李さんは今でも忘れられないものを見たそうです。
答えは、「ルーズソックス」です。あれは日本国内でもカルチャーショックだったでしょう。1995年前後は一番流行していた時期かもしれませんね。1995年の北京はまだ高いビルも少なくて、伝統的な胡同が立ち並んでいました。李さんが日本で過ごしている間に北京もすっかり変わりました。昨年、帰国した李さんも北京の変化を感じたようです。かつては自転車大国と呼ばれた北京も今は自動車大国です。昔ののんびりした光景もだんだん見られなくなってきました。北京の交通渋滞は世界にも知られるくらいですね。考えてみるとたった15年ほどしか経っていないのに、ものすごいスピードで変化しているんです。改めて感じます。
さて、日本で企業に勤めていた李さんですが、自分の経験を生かそうと、帰国してからすぐに中国企業で働きはじめました。しかしそこでは様々な違いを感じたようです。中国人は会社員である前に一人の人間ということを大切にしています。個人の権利の尊重ですかね。むしろこの辺りはいいなーとも思います。私も日本では有給休暇はとれませんでしたから。でも、これまで当たり前だと思っていたことが全くちがうというのはやっぱりショックだし、落ち着かないと思います。
一般の文化も違いがあるとは思いますが、特に日本の企業文化は独特ですね。正直、外国人から見れば理解できないことたくさんあります。特に企業内の規定やきまりは特殊です。外国人に日本のビジネスマナーを教えるのは苦労でしょう。李さんは、実際の行動だけではなく、中国と日本企業の考え方の違いについてもこんなふうに語ってくれました。
ずっと日本人や日本語に関わる仕事をしてきてますから。日本側はあとで変更がないように慎重に計画をたてることを希望しますが、中国は違います。どんな状況になるのかは直前までわからない。中国はその場、その場にあわせて決めていくので、最初に決めた計画と大きく異なることもあります。だからこそ、素早い対応力と決断力が必要とされるんですね。このあたりはだいぶ違います。
中国進出する日本企業も多い中、こうした文化の大きな違いが摩擦を生んでいます。李さんが感じていることは、日本の方が中国に来て感じること、そのものです。とまどいを感じながらも現在の環境に慣れようとしている李さん、中国人と一緒に仕事をしたいと思っている方へのアドバイスと、今後の自身の目標を伺ってみました。
マージナル人間という言葉がでてきました。これは文化の異なる複数の集団に属し、そのどれにも完全には所属することができないで、それぞれの集団の境界にいる人のことを言います。昔は所属していないことが不安定につながっていましたけど、情報化やグロバール化がすすんで、むしろマージナル人間でいることのメリットも広がってきたような気がします。李さんのように互いの文化をつなげてくれる人は、世界が互いに理解しあっていくためにはものすごく重要なんじゃないかと思います。違いやとまどいがあっても、それが摩擦や衝突をにつながらないことが大切ですね。(2月23日放送「イキイキ中国」から抜粋)
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