最近、中国では一つ大きな話題があります。それは爆発的人気を誇る「Crazy English（クレイジー・イングリッシュ）教室」の運営者・カリスマ英語教師の｢李陽｣氏の家庭内暴力事件です。すごく知的で優しそうな人に見えたのに、家庭では豹変していたなんて、不思議で怖いですね。

　さて、イメージ的には、中国人の旦那さんは料理も出来るし、家事を手伝うし、奥さんの言うことをよく聞いてくれる人が多いようなんですが、なぜ、ドメスティック・バイオレンスの発生率が高まっているでしょうか。

　一つは、やはり伝統的な考えによるものだと思います。古くから、｢男尊女卑｣や｢三従四徳｣の封建思想が中国で根付いているからです。女性は、嫁にいくまでは父親に従い、嫁いだ後は夫に従い、夫の死後は子に従うことを要求されています。また、｢家醜不可外揚(身内の醜態や恥は外に晒してはならない)｣という考えがあり、たとえ暴力を受けたとしても、何も言わず黙々と我慢している女性が圧倒的に多いようです。

　昔、女性の経済的地位や社会的地位も低かったので、何をされても従わなければならなかったんですね。しかしいま、中国人女性の経済的地位も、社会的地位もどんどん上がっているようです。いま、男性と同じように仕事しているキャリアウーマンが大勢います。仕事と家庭、育児の両立、とても辛いですよ。時には家庭内で文句を言ったり妻が愚痴を言うのも理解できますが、それを我慢できない夫なら、妻に手を出しますよ。生活レベルが上がったものの、男性にしても、女性にしても、社会的なプレッシャーが大きくなっていますね。これもDVの発生につながっているのかもしれませんね。

　また、一部の家では｢男尊女卑｣の思想が強く、一家の血を継がせるため、女の子より、男の子がほしがっています。すると、奥さんが女の子を生んだら、夫や姑からいじめられますよ。これも理由の一つに挙げられます。

　家庭内部の事情があるほか、外部、社会からの責任もありますよ。中国では、古くから「清官難断家務事」（いくら公正な裁判官でも家庭の内輪もめを裁くことはできない）という言い回しがあります。ですから、DVに対し、警察を含む外部の人はあんまり口を出したがらないようです。ただの｢夫婦喧嘩｣と見られ、重要視されませんね。実は、中国大陸部では、2008年から、DVが起こった場合、警察を呼ぶことが110番の通報範囲に盛り込まれました。また、全国婦人連合会の調査によりますと、DVに対し、警察は事情を取り調べますけど、ほとんどは｢仲良くするように｣と理屈を言うだけで、厳しく責任を追及することは少ないということです。

　確かにいきなり第三者が入って判断するのは難しいです。しかし、今回の李さんのような事件もあります。犯罪は犯罪で、DVを犯罪と見なさないのは、暴力を振るった人に何も気づかせることができず、また発生するかもしれませんね。いきなり警察にいうよりもDVを受けた女性が気軽に頼れる相談窓口やホットラインなんかが設けられてほしいです。

　実は、DVは世界範囲でも注目度の高い話題です。調べたところによりますと、アメリカでは15秒に1人、年間200万人以上の女性がDVの深刻な被害を受けており、DVによって亡くなる女性は1日11人もいるそうです。ですから、アメリカでは、DVは犯罪と認め、犯行者は逮捕されますよ。また、イギリスでは、｢家庭内暴力者リスト｣があります。このリストは個人の信用情況と関わり、一度ランクされれば、就職や再婚など、様々なことに影響を与えます。個人の信用情況から、この人がかつてDVの犯行者だと分かれば、彼、もしくは彼女と再婚する人はいないでしょう。多くの人がDVから救われるかもしれませんね。

　家庭外にしても、家庭内にしても、暴力はだめです。万が一暴力を受けたら、面子や家族の名誉などを考えて我慢するより、はっきりと｢NO｣と言うべきですね。身の安全は人間としての最低限の権利ですから、自分を自分で守るべきですね。社会もいち早く法整備を整えて、より調和の取れた生活環境を築いてほしいです。｢チャイナライフ｣、ちょっと深刻で悲しい話題、中国の家庭内暴力事情についてご紹介しました。（おわり　「イキイキ中国」）

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