新疆は中国の北西部にあります。かつてはシルクロードの通り道であり、今も多様な民族が暮らすところです。古くから、ここは中国と中央アジア、西アジア、ヨーロッパを結ぶ交通の要衝でした。
新疆天山山脈の中部に位置するポストン湖は中国内陸部最大の淡水湖で、広々とした水面が広がります。季節の移り変わりとともにポストン湖の風景や景色も変わり、時には海のように大波が逆巻き、時には湖の水面が穏やかに、静かにきらめきます。そんなポストン湖では毎年6月の末に、湖を祭る盛大な行事が行われます。
ポストン湖は古来から、景色が美しいことで知られ、「中国西部の真珠」と呼ばれています。実はポストン湖には美しい景色だけでなく、この湖をめぐる美しい伝説も伝えられています。
昔昔、この地一帯には湖が無く、美しい草原が広がっていました。牧畜民たちはこの草原で、幸せで安穏な暮らしを送っていました。ポストンという若者と美しい娘ガヤは深く愛し合う恋人同士です。ある日、雨の神様が美しいガヤを妻にしようと強引に奪おうとしましたが、ガヤは死を覚悟して抵抗しました。雨の神様は激怒し、報復として何年も連続で雨を降らさず、草原に大旱魃をもたらしました。勇敢な青年ポストンは雨の神様と81日間にわたる長く、苦しい闘いを経て、ようやく雨の神様に打ち勝ちました。しかし、ポストンは闘いの疲れから亡くなってしまいました。恋人の死を知って、ガヤはひどく悲しみ、その涙が美しい湖になりました。それからまもなく、ガヤも悲しみのあまり亡くなってしまいました。地元の牧畜民はこの二人の恋人を記念するために、この湖をポストン湖と命名しました。
古来から、ここに暮らす蒙古族の遊牧民は家畜を追いながら水や草がある場所を転々と移り歩く遊牧生活を営んできました。地元の人々は「水は善の源であり、神様から賜る神秘のものである」と信じてきました。また、毎年旧暦5月4日をポストン湖の神があまねく衆生を済度する日としています。この日になりますと、地元の蒙古族の人々は湖を祭る伝統的な行事を行います。
お聞きいただいているのは湖を祭る儀式の司会者が読む祭文です。祭文は「われわれの生活はポストン湖を離れられない。ポストン湖の水は慈雨の如くここに暮す人々を育て、この草原を潤す」としています。
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