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建物賃貸借についての判例

2009-10-29 13:36:33     cri    

~建物賃貸借についての判例~

 【事件の経緯

 2007年5月、外資系の企業A社は某工業園のB社と工場用建物の賃貸借契約を締結し、契約期間2年、賃料月額20万元、支払は3ヶ月ごと、敷金は賃料2ヶ月分、と約定した。

 当該契約は2009年5月に契約期間満了を迎え、ある理由で契約を更新しないことになったが、A社は満期後も引き続き工場を使用し、且つB社に賃料を支払い続けた。

 その後2009年8月、B社はA社に対し、不動産相場が上がったので賃料を値上げしたいと相談した。しかし両者は一致に至らなかった。そこでB社はA社に対し、直ちに賃貸借契約を終了する旨の通知を発した。A社は「確かに書面の契約更新は行われなかったが、事実上の契約関係が継続している」と主張して、契約終了に異議を呈した。

 双方は協議したが結論に至らず、B社はA社を相手取り、賃貸借契約の解除を求めて裁判所に訴えを提起した。

 【判決

 裁判所は確認を経て次のように認定した。『元の工場用建物の賃貸借契約期間が満了したうち、A社が引き続き工場を使用し、且つ賃料を支払っているので、A社とB社は不定期の賃貸借契約を締結したものとみなす』。

 その後裁判所の調停により、A社は二ヶ月の猶予期間を与えられ、賃借した工場から撤退し、相応の賃料を完済して、当該賃貸借契約は終了した。

 【解説

 『中華人民共和国契約法』(以下『契約法』という)第236条に「賃貸借期間が満了したのち、賃借人が引き続き賃借物を使用し、賃貸人が異議を申し出ない場合、元の賃貸借契約は有効である。但し賃貸借期間は不定期とする。」と定められている。

 また『契約法』第232条は「……(不定期賃貸の場合)、当事者は随時に契約を解除することができる。但し、賃貸人のほうから契約を解除する場合、合理的期限の前に賃借人に通知しなければならない。」と定めている。

 裁判所は当該規定に基づきB社の請求を支持し、裁判所による調停を経て、A社に期限を提示した上で工場から撤退させた。また元の契約の有効性を鑑み、撤退完了までの賃料をA社が負担した。

 【コメント

 賃貸借契約は比較的によく利用する契約ですが、同時に特殊な点もあります。以下、賃貸借契約に関して中国契約法のポイントを簡単にご紹介いたします。

 ・ 「賃貸借期間が六ヶ月以上である場合、書面形式で契約しなければならない。当事者が書面形式をとらない場合、不定期賃貸借と見なす」(第215条)

 ・ 「賃貸人は賃貸物の補修義務を履行しなければならない。但し当事者が別途約定した場合を除く」(第220条)

 ・ 「賃貸物の所有権が賃貸借期間に変動した場合も、賃貸借契約の効力に影響しない」(第229条)

 ・ 「賃借人は賃貸人の同意を経て、賃貸物を改善し又は他物を増設することができる。賃借人が賃貸人の同意を経ないで賃貸物を改善し又は他物を増築した場合、賃貸人は賃借人に現状回復又は損失賠償を要求することができる」(第223条)

 ・ 「賃借人は賃貸人の同意を経て、賃貸物を第三者に転賃することができる。賃借人が転賃する場合、賃借人と賃貸人の賃貸借契約は引き続き有効であり、第三者が賃貸物に損失をもたらした場合、賃借人はその損失を賠償しなければならない」(第224条)

 ・ 「賃貸人が賃貸物の建物を売却する場合、売却前の合理的期限内に賃借人に通知しなければならず、賃借人は同等条件での優先購入権を有する」(第230条)

 賃貸借契約における双方当事者の権利義務や法律責任についてご紹介しました。上述に挙げたような法令上の規定をうまく利用し、自社の利益を守り、リスクを避けるようにするとよいと思います。以上、ご参考になれば幸甚です。

 以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.com )により提供されたものです。

 提携機構:上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)

 ウェブサイト:http://www.kyodo-lf.com/

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