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特許(専利)権の取得についての判例

2009-09-16 16:38:07     cri    

~特許(専利)権の取得についての判例~

 【事件の経緯】

 2004年7月、外資系の企業A社と合弁会社であるB社はある部品の実用新案の開発と設計に関する契約を締結した。当該契約には設計成果品の知的財産権の帰属に関する定めがなかった。

 B社は契約の約定に従ってA社に設計成果品を提供し、A社はB社に開発・設計費用を支払った。その後、A社は長期に渡ってその実用新案の設計成果品を使用していたが、実用新案の専利権の申請はまだであった。

 2007年6月、A社は申請代理機関を通じて中国専利局に当該成果品の実用新案専利権を申請した。これに対しB社は異議を提出し、「A社は当該専利の申請権を有しない」と反論した。結局双方の協議はまとまらず、B社が裁判所に訴訟を申立てた。

 【判決】

 裁判所は確認を経てB社の訴訟請求を支持し、当該実用新案の専利申請権はB社に帰属するとの判決を下した。その後裁判所の調停を経て、B社は当該実用新案の専利申請権を20万元でA社に譲渡した。

 【解説】

 『中華人民共和国専利法』(以下『専利法』という)第8条に「複数の単位もしくは個人が共同で完成した発明創造、又は一の単位もしくは個人が他の単位もしくは個人に委託して完成した発明創造について、その専利申請権は、別途約定のある場合を除き、完成又は共同完成した単位又は個人に帰属する。その申請が認可された場合、申請を行った単位又は個人が専利権者となる。」と定められている。

 裁判所は当該規定に基づき、A社とB社の締結した開発・設計委託契約に知的財産権の帰属に関する約定がないことから、当該専利申請権の帰属は完成者、即ちB社にあると認定した。

 【コメント】

 専利権の申請や帰属に関する権利を複数の者が主張するケースはよくあります。以下、専利制度の実務における幾つかのポイントを簡単にご紹介いたします。

 ・ 特許(中国語で「専利」という)は中国法と日本法において意味の違いがある。中国の専利法は「発明専利」「実用新型専利」「外観設計専利」の3種類を定めるものであるが、日本においては特許法、実用新案法、意匠法にそれぞれの権利が定められている。

 ・ 勤務先での職務中に又は主に勤務先の物的技術的環境を利用して完成した発明創造は、「職務発明創造」と呼ばれ、当該専利申請が認可された場合はその勤務先が専利権者となる。これに対し「非職務発明創造」の専利申請権は発明者又は設計者に帰属し、その申請が認可された場合には発明者又は設計者が専利権者となる。(その勤務先と発明(設計)者が申請権・専利権の帰属について約定がある場合は、その約定に従う。)

 ・ 「非職務発明創造」の発明者又は設計者に対し、如何なる単位又は個人も弾圧を加えてはならない。

 ・ 同一の発明につき複数の申請人が権利申請を行った場合、先に申請を行った者に専利権を認める。

 ・ 専利申請権又は専利権を譲渡する場合、当事者は書面で契約を締結しなければならず、且つ国務院専利行政部門にその譲渡を登記しなければならない。国務院専利行政部門が譲渡公告を行い、専利申請権又は専利権の譲渡は登記日に効力を生じる。

 専利権は民事上の重要な権利であり、特に企業にとっては自社の生命力の現れとも言えます。トラブルを未然に防ぐことが肝要であり、発明創造の開発・設計を他人に委託しまたは他人と共同で行う場合には、委託や共同開発についてできるだけ書面で明確に契約し、専利申請権や権利帰属をはっきりと定めておくことが最善の策であると思います。以上、ご参考になれば幸甚です。

 以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.com )により提供されたものです。

 提携機構:上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)

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