~財産保全(仮差押え)についての判例~
【事件の経緯】
外資系企業A社は、合弁会社B社と部品の売買契約を締結した。
A社は契約の約定に従って納品したが、B社は約定の期限を過ぎたのに代金30万元を支払ってくれなかった。A社は何回も交渉したが結局決裂した。そこでA社は法的手段を講じることとし、裁判所に代金請求訴訟を起こすことにした。だが、A社がいろいろ準備しているうち、B社が会社の資産を他人名義に移転していることがわかった。
A社は提訴と同時に、B社の銀行口座を仮差押することにした。
【判決】
裁判所は、確認を経てA社の訴訟請求を支持し、且つB社の銀行口座の仮差押を行った。B社は銀行口座を凍結され、自社の業務に重大な影響が生じたら困ると考え、裁判所の開廷審理においてA社と和解し、代金30万元を支払った。
これによりA社も訴訟を終了し、裁判所はB社の銀行口座の仮差押を解放した。
【解説】
『中華人民共和国民事訴訟法』(以下『訴訟法』という)第92条に「人民法院は当事者一方の行為又はその他の原因で判決が執行不能又は執行困難となる恐れのある事件について、相手方当事者の申立てにより財産保全の裁定をすることができる。当事者が申立てしない場合、人民法院は必要があると認めた場合財産保全措置を取ることを裁定できる。」と定められている。
裁判所は当該規定に基づきA社の財産保全申立てを支持し、B社の銀行口座を仮に差し押さえた。
【コメント】
財産保全制度は訴訟過程における債権者保護の重要な制度の一つで、債務者に一定の圧力を与えることができます。以下、財産保全制度の実務上のポイントを簡単にご紹介いたします。
・ 人民裁判所は、財産保全措置を取る場合、申立人に担保の提供を命じることができ、申立人が担保を提供しない場合、申立てを却下する。実務上、保全申立ての場合は一般的に担保の提供が求められる。担保物は現金、不動産、自動車などを含む。
・ 債務者が担保を提供した場合、裁判所は財産保全措置を解除しなければならない。
・ 財産保全の方法は、一般的に、銀行口座の凍結、資産の差押等がある。また、知的財産権侵害などの事件の場合、当事者は権利侵害者の権利侵害行為の禁止を裁判所に求めることができる。
・ 法律上、財産保全は訴訟前財産保全と訴訟過程中財産保全に分けられるが、実務上、一般的に財産保全の申立ては、起訴と同時に申立てることがよくある。
・ 財産保全の保全金額は起訴請求の金額を上限とし、又は事件に関連する財物に限られる。例えば、訴訟請求金額が1万元なら、銀行口座凍結の場合、口座内の金額のうち凍結できるのは1万元に限られる。
・ 財産を二重保全することはできない。
訴訟が自分にとって不利になる可能性があると考えて、誠実信義の原則に反して、一部の者は自分の財産を移転させてしまうことがよくあります。こうなると、勝訴判決を得ても執行不能になってしまいます。
日頃から取引先の動向に注意し、できるだけ相手の情報を把握しよく連絡を取ることが大切です。訴訟保全制度の活用は自社の利益保護にプラスになると思いますので、ご参考になれば幸甚です。
以上は上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)の張福剛弁護士(E-mail:fugang.zhang@kyodo-lf.com )により提供されたものです。
提携機構:上海共同総合法律事務所(日本福庚外国法事務弁護士事務所)
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