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新中国アニメーションの草分け・持永只仁監督が中国に残してくれたもの

2015-12-22 22:30:05     cri    


(左)作業中の持永只仁(方明)監督
(右)2006年、東方書店が刊行した持永只仁自伝の表紙

 新中国アニメーションの基礎を築き、多くの制作者を指導した日本人名監督の持永只仁氏(1919-1999、中国名:方明)の半世紀にわたる中国との交流の足跡をたどりつつ、関係者のインタビューをお送りします。

 北京電影学院は中国の映画関係の人材を育てる大学で、65年の歴史があります。1952年に設置されたアニメーター育成に特化した「美術学部動画コース」は2000年に、「動画学院」(アニメーション学院)に格上げされ、「中国のアニメーター育成のアカデミー」という誉れがあります。

 11月1日、北京電影学院動画学院で「第15回動画学院賞」の授賞式が行われました。素晴らしいアニメーションを作りたいという夢を胸に、優秀な作品を作り上げた全国の若手アニメーターを奨励する数ある賞の中に、日本人の名前がついた賞がありました。

 「持永只仁賞」です。

 1985年8月~1986年7月、持永只仁(もちなが・ただひと)氏は北京映画学院から招聘され、「動画コース」の講師として一年間滞在。この賞は13人いる当時の教え子たちの提案により、10年ほど前に設立されたものです。

 かつての教え子で、CCTVのアニメーション監督を経て、現在は北京電影学院動画学院現院長の李剣平さんは「この賞をアニメーション制作分野で一番優秀な学生に授与しています。そして、困難にぶつかっていても、あきらめずに、優秀なアニメーターを目指して頑張り続けるよう応援しています」と話しました。


(左)2015年持永只仁賞授賞式で挨拶する長女・伯子さん(右2)、右隣は動画学院李剣平院長
(右)授賞式終了後、伯子さん、上海美術電影製作所・浦家祥監督を囲んでの記念写真

 同じく持永先生の教え子で、今は北京電影学院副総長の孫立軍さんは、賞の設立の思いについて、「第一に、恩師を偲ぶ。第二に、若いアニメーターへの励まし。第三に、中日間の文化交流が脈々と続いてきていることの証」と話しました。

 幼少の時、父親がいる植民地下の中国東北部・新京(現在の長春)で8年間過ごした持永が、静養のため、妻と3歳の長女・伯子を連れて再び新京に渡ったのは1945年5月のことでした。その2ヶ月後に、知人の推薦で、日本の国策映画会社「満州映画協会」(満映)美術部の臨時職員として入社しましたが、ほどなくして日本の敗戦を迎えました。中国へ渡る前、持永は日本で初の多層式アニメ撮影台の開発にかかわり、アニメーション映画『桃太郎の海鷲』をはじめ、多くの作品の制作に携わりました。

 1945年10月、「満映」は中国人経営による「東北電影公司」として再出発することになり、持永只仁は、内田吐夢(うちだ とむ)や木村荘十二(きむら そとじ)らの監督とともに中国に残り、中国のために働くことを決意しました。

 翌年に中国では内戦が勃発し、持永氏は旧満映から運び出した重い撮影機材とともに、長春、ハルビン、ジャムスを転々と移動し、黒龍江省の炭鉱の町・興山(今の鶴岡)にたどり着きました。そして1947年、興山を拠点に、中国初の人形アニメーション映画の試作や、「翻身年」、「皇帝梦」、「瓮中捉鳖」などを制作。

 新中国成立後は、中国のアニメーション制作の拠点になった上海に移り、上海美術映画制作所の前身である上海映画制作所のアニメーション部門の設立に携わりました。


(左)石川慶監督のカメラに持永只仁先生が残してくれた撮影機を見せる北京電影学院孫立軍副総長
(右)「日中友好新聞」編集長で、混声合唱団「悪魔の飽食」プロデューサーの持永伯子さん

 1953年3月に日本に帰国しますが、アニメーションを通した中国との交流は決して途絶えることはありませんでした。

 両国の国交がまだ正常化していない時も、持永は招かれて中国を訪問するなど、両国の多くのアニメーション交流と密接にかかわっていました。

 一方、日本に帰国した持永只仁は、1956年、日本初のコマ撮り人形映画「瓜子姫とあまのじゃく」の制作をはじめ、その後、一連の秀作を残し、戦後の日本を代表する名アニメーターとなりました。そして、日本の第一線で活躍している高畑勲監督をはじめ、多くの人に影響を与えました。

 「持永只仁賞」として、現在も若い世代の中国人アニメーターたちの心に刻まれている持永監督。未完の作品を完成させようという動きもあります。彼が中国のアニメーション業界に残してくれたものは現在、どのように語られているのか。教え子の李剣平院長、長女の持永伯子さんにマイクを向けてみました。

 なお、今回の企画には、北京外国語大学日本学研究センターの秦剛教授による資料提供や取材協力がありました。ここに感謝の意を表します。

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