北京
PM2.577
23/19
ご存知のように、北京の伝統的な民家が建ち並ぶ細い路地「胡同」は北京の伝統文化の大舞台です。特に昔、路地裏に響く様々な物売りの声が人々の生活を彩っていました。今回の中国メロディーは、北京の路地・胡同の交響曲と呼ばれる物売りの声と北京の伝統的な味わいのある歌を紹介しましょう。
1980年代の改革開放以前、北京の路地・胡同では早朝から夜まで様々な物を売る声が行き交っていました。それはまるで胡同交響曲のようで、静かな胡同に活気をもたらしていました。北京の売り子の掛け声はそれぞれ特色があるだけでなく、声のトーンも穏やかで美しいものです。そして奇妙なことに、その声には季節感が漂っていて、売り子の声を聞くと、ある季節が来たことに気づくことができます。
金魚売りの掛け声
春の終わりから夏の初めになりますと、路地裏から金魚売りの美しいかけ声が聞こえてきます。金魚の売り子はみなてんびん棒を担いでいました。天びん棒の一方には金魚が、もう一方には水槽が入っています。金魚は主婦や子供たちに最も好まれていました。
金魚売りの掛け声が聞こえてくると、子供たちが家から飛び出してきます。売り子の天秤棒を囲んで、かわいい金魚が泳いでいるのを見ると、子供たちは買おうか買わまいかと思いをめぐらしていました。
スイカ売りの掛け声
「大きなスイカ、船のように大きいスイカを食べましょう」
真夏の季節、市や路地では、スイカ売りの屋台で扇子を振りながら、売り子たちが大声で叫ぶ光景を目にしていました。その澄んだ、ゆったりとしたかけ声が、いくつもの路地を隔てて聞こえてきます。炎天下、のどが渇いてたまらない通りすがりの人は、このかけ声を聞いて、思わず食べに来てしまいます。この光景は北京の夏の風物詩でした。
タンフールー売りの掛け声
子供の頃、冬になると路地で「糖葫芦(タンフールー)」というサンザシの飴菓子を売る掛け声がよく聞こえてきました。あの心地よい物売りの声を聞いていますと、思わず母にタンフールーを買ってくれとせがんでいました。今もタンフールーを見ると、小さいころ、我慢できずにタンフールーを買ってくれるまで母につきまとっていたことを思い出します。また、時には密かにタンフールーの売り子の後をついて歩くこともあったほどです。おいしいタンフールーを食べるためだけでなく、その心地よいかけ声が好きだったのです。
番組の中でお送りした曲
1曲目 前門情思大碗茶(前門の大碗茶)
前門は北京の下町のことで、大碗茶というのは茶碗に注いだお茶を売る屋台です。この歌は前門の近くで暮らしていた庶民の生活を描いています。
2曲目 北京先住民(北京土著)
京劇の節回しとアメリカのラップをうまく融合させた歌です。正真正銘の北京文化を三味線や太鼓が奏でる北京の伝統的な味わいとともにラップ形式で語り、一味違う北京の文化を感じることができます。この曲の制作は、東洋の伝統と洋楽を巧みに結びつけた試みと言えるでしょう。
3曲目 冰糖葫芦(タンフールー)
北京の人々の故郷の軽食である冰糖葫芦(タンフールー)への愛着を表しています。