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南海問題は如何にして今日に到ったか

2016-05-14 16:25:57     cri    
 傅瑩全国人民代表大会外事委員会主任委員と呉士存中国南海研究院院長の共同執筆による南海問題に関する論文が、先日、『中国新聞週刊』と米『ナショナル・インタレスト』誌において同時掲載された。以下に、その要旨を紹介する。

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 近年、南海問題が中米関係の最も重要な課題となっている。両国は外交と世論の領域で互いに声を上げ、軍事的にも緊張度が増しており、時として摩擦も起こっている。中米間の競争と拮抗が南海問題を通して現れている状態であり、双方が戦略的観点から相手の意図を探る状況が続いている。

 歴史を振り返ればわかることだが、20世紀の30年代まで、南沙諸島の主権に関しては国際的な係争は起こっておらず、世界の多くの地図でも中国領であることが記されていた。

 第二次大戦後も、アメリカは長期にわたり中国の南沙諸島の領土主権を認めていた。アメリカで出版された地図や書籍を見ても、たとえば1961年版『コロンビア・リッピンコット世界地名辞典』や、1963年版の『ワールドマーク各国百科全書』、1971年版『世界各国区画百科全書』などでも、南海諸島に関する中国の領土主権に関する記載を認めることが出来る。

 1990年代初期から2000年代初期にかけて、冷戦終結・アジア太平洋国家の関係緩和・経済発展が基本方針となる時代背景の中、中国と東南アジア諸国・ASEANとの関係は高速発展期に突入していた。そして、この関係発展の動きは、南海情勢の起伏を覆うに足るものであった。緊迫した情勢を緩和するため、中国は「紛争の棚上げと共同開発」を主張、ASEAN諸国との間で「南海各方行動宣言」(DOC)に調印するものの、その後の10年間を見ると、規定と原則を遵守し、挑発行動に訴えず、海域における平和協力と共同開発を積極推進したのは中国だけであった。その一方で、ベトナムやマレーシア、フィリピンなどの国は、当初から宣言を全面的かつ真剣に履行することなく、領有する島嶼に改変や拡張を行い、行政管理を強化し、石油や天然ガスの採掘を進め、時には中国の漁民を拿捕するなどの行動に出ている。これらの国は目的を同じくしている。それはつまり不法所得を固定化することであり、係争はそれを棚上げにするのではなく、全面否定することに、その目的をおいているのである。

 2012年4月に起こった黄岩島事件は、「らくだの背を折る最後の藁(the straw that broke the camel's back)」となり、中国の政策と我慢の限度を超え、中国はやむを得ず報復措置を取らざるを得ない事態となった。

 南沙諸島全体の情勢変化に対応し、南沙諸島における国民生活と基本的軍事防御体制の改善、そして南沙諸島の主権維持の必要から、中国側は2013年の年末から、軍の駐屯する島嶼において拡大工事を始めた。これらの島は国際航行通路からも離れており、航行の自由の影響するという問題は全く存在しないにも関わらず、アメリカやフィリピンなどの国は猛反発し、キャンペーンを張って中国を非難した。

 南海問題の今日のような深刻化は、様々な行為と言論がそれぞれの思惑の上で絡み合い、影響し、共鳴しあうことが生んだものであり、国際環境と地域安全情勢の変化によるものでもある。中でも、米国が南海の地域外の大国でありながら、問題への介入と立場調整に力を入れたことが、2009年から続く南海問題の複雑化の主因と謂える。今後の南海情勢の推移には、多くの人々の関心が寄せられている。米国が中国の次の一手に関心を持つ傍ら、中国も米国の意図に不信を抱いている。南海問題や南沙諸島をめぐる係争は、矛盾の深刻化、ないしは戦略的誤判断を引き起こすリスクを孕んだものとなっている。

 中国の南海における利益に関する訴求は、長年一貫したものである。それは、国の領土主権の完全性、そして地域の平和と安定の維持の必要からくるものである。中国の立場を正確に理解するには、歴史的観察角度が必要となる。中国は強国として成長しつつあるが、歴史上の烙印はなお深く焼き付いている。何世紀にもわたる外敵に侵略された歴史や、強権に圧迫された屈辱の歴史は、国家と民族にとって忘れ難い記憶として刻まれているものである。そして、まさにこのことが、中国の国民と政府に領土問題に関する極度な敏感さを持たせており、例えそれが局地的なものであれ、繰り返されることを断固として許さないのである。これは、外部の誰もが、中国を観察し、中国に関して判断を下す際、把握し、考慮しなくてはならない点である。

 南海問題の将来は今後どう発展していくのか。これは、関係各方面の認識と選択が、その鍵を握っている。手を結ぶのであれば、多くの成果を得ることに繋がるであろうが、対抗を選ぶのであれば、それは難局に陥るであろうし、延いては衝突を招くこととなり、一人として利益を得ることはなくなるのである。

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