北京
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中国の内陸、河南省新郷市原陽県小劉固農場に、日本人が働いていることが話題になっています。その日本人は、家畜の糞を使って有機肥料を作り、自分の農場のほかに、周辺の村人達にも無料配布して、循環農業の理念を広めようとしています。経済が遅れている河南省では、有機栽培の認知度が低く、農場の有機栽培の農作物はネット販売に頼っています。
“それは反応はいいわけですよ。いいけれども、高いから。中国の暮らしはもっと急速によくなると思うから、腹いっぱい食べるという文化は(時代遅れで)、健康でなくなるんですよ。南や北の金ある人たちは、安全で美味しければお金はいくらでも払うという人、また腹八分で、美味しいものをちょっとだけ食べるという人が増えていると聞きますね。”
74歳の川崎広人さんのお話でした。
いま、すっかり中国人になっているという川崎さんは、中国に来られる前に、岩手県で農業関連の仕事に長年携わっていました。定年後、中国の山東省へ交流に来たことをきっかけに、中国の農村の実情を知り、その深刻な問題に気づいたことで、後の人生が思いもしないほうへ展開してしまったわけです。
“(僕は)各地を回っていますから、中国の農村はどうなっていて、どういうものができるかって分かっているわけです。それは化学肥料だけで、農薬いっぱい使っていますよ。だから、僕は堆肥を作って、それを使って無農薬のものを栽培しようと思ったのです。”
中国の大地でこの夢を実現させるため、農業専門知識の蓄積のほか、63歳から中国語の勉強も始めました。2013年、66歳の川崎さんが再び中国へやってきました。そして、各地を転々とした一年後、ようやくたどり着いたのがここ小劉固農場でした。 当時の農場は倒産状態でした。村が貧しく、現地の人々の有機栽培や循環農業に対する認識はかなり低いものでした。そんな厳しい中で、川崎さんは家畜の糞を使って堆肥を作り、これまで7年をかけて、有機栽培を試みてきました。現在はトマトなど20数種類の農作物を栽培しています。
“消費者に安く提供するには、うちから共通のものをトラック一台で毎週一回くらい出荷するようなやり方をすれば、10元の原価でも20元で利益が出るわけですよ。北京、上海、深センなど南のほうで農場をやっていれば、(ニーズが多いから)こんな苦労もせずに、、、でも今年ぐらいまでに何か行きそうな気がするんですね。米とりんごと有機肥料が売れると思っているし”
7年の間、どれほどの汗を流していたのでしょうか。しかし、夢は確実に実現しつつあります。ここ数年農場は研修会を開いて、全国各地から駆けつけてくる人々に堆肥技術などを教えています。これまでの参加者は2000人近くで、みんなブログで川崎さんのことを知り、尊敬の念を抱いて会いに来る訳です。川崎さんのブログのフォロワー数はなんと50万人を超えています。
“うちの農場の商品が売れるというよりも循環型農業をやりたいという方が沢山増えて、コンサルタントをしてくれないかという話がいっぱいあります。堆肥を使ってやるという考え方は非常に強かったと感じています。2、3年前は、僕の前で化学肥料がいいと言っていたけど、いまはそんなことを言う人はいないんですよ。何か化学肥料でやっているのを恥ずかしがっているという感じかな。”
中国の大地で循環農業の普及を夢見る川崎広人さん、いまも毎日奮闘しています。
“いつも感じることですけれども 中国には有機栽培の指導者がいないわけですよ。それを育成しないと、いつまでも有機栽培は普及しないと思います。学校を早く作りたい。”(閣、CK)