北京
PM2.577
23/19
国際通貨基金(IMF)が発表した最新の「世界経済見通し」には、政策が極めて不確実性を伴う環境の中で、貿易リスクが世界経済の大きな難題となるとの分析が書き込まれた。これについて、ラガルドIMF総裁は、「世界貿易システムはそれを破壊するのではなく、修復していくべきだ」と各国の指導者に呼びかけている。
奇しくもその数日前、ペンス米副大統領は、ワシントンで中国を徹底攻撃する演説を行った際、米国が2500億米ドルの中国製品に追加関税を課することに言及し、さらに「公平かつ互恵の協定が結ばれない限り、更に多くの関税を課すとトランプ大統領は明言している」と述べていた。
両者を並べてみれば、誰がIMFの謂う「政策が極めて不安定な環境」の根源なのか、「貿易リスク」の立役者なのか、そして「世界貿易システムの破壊者」なのか、一目瞭然といえるだろう。しかし、ペンス氏は演説の中で、この世界貿易戦争を仕掛けた行為をして、「トランプ大統領は米国を率いて目覚ましき実力で自国の利益を守っている」と称した。しかし、このような「ディールの芸術」は、米国の同盟国らを不快にもしている。
EUでは、英『ガーディアン』紙が論評を発表し、トランプ氏は信頼の置ける取引相手では無いとしている。この点は、8月末、トランプ氏がウエストバージニア州で選挙活動に参加した際になお「EUから輸入する自動車には25%の関税を課する」と述べた点にも現れている。
カナダでは、6月9日、G7カナダサミットがコミュニケを発表して閉幕後、トランプ氏はカナダのトルドー首相が自分の出発後に記者会見を開いたことを理由に、米国代表にコミュニケ不支持を発表させた他、ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長も米加貿易紛争について直接トルドー氏に矛先を向け、「地獄に特等席を残しておいた」と捨て台詞を残している。
日本では、トランプ氏は日本を鉄鋼・アルミニウムの追加関税対象国リストに加えつつ、日本製の自動車についてその関税を2.5%から25%に引き上げると脅し、FTA締結を迫った。そして、「シンゾーは友人だ。いつもニコニコしている。だが、いくら支払う必要があるかを言ったら、今の良好な関係は終わるだろう」と述べた。言外の意は、日本も間も無く次の貿易戦争の標的になると言うことだ。
多くの人々が目にしているように、米国の現政権はその就任以来、既に、TPPを始め、パリ協定、イラン核合意の他に、ユネスコ、国連人権理事会等の国際機関から離脱し、今度はWTOや国連を脱退すると脅しをかけている。これまで文明社会と文明世界に尊ばれてきた契約の精神は、今ではホワイトハウスに棚上げにされてしまったのだ。これは本当にペンス氏が演説で言うところの「未来への道を示す米国のリーダーシップ」なのだろうか。
中国は、先頃発表した「中米貿易摩擦に関する事実と中国側のスタンス」白書の中で、平等かつ互恵の前提の下で、米国と二国間投資協定の交渉を再開し、適当な時期に二国間FTAの交渉を始めたいとの考えを示している。しかし、不幸なことに、ホワイトハウス側は何度となく信頼を裏切り、何度となく好機を逃してきた。そして、人々はペンス氏の中国に対する様々な事実無根の非難を交えた演説の中から、米国には問題解決の用意など更々なく、あるのは「ディールの芸術」を利用した米国の独り勝ちの爆走の道の実現への思いだけなのだと言うことを、より明確に感じ取るようになっている。
誠実さなき国家を、天下は如何にして信ずることができようか。速やかに本来あるべき道筋に戻らなければ、その国家は早晩「国信なくば衰えん」の境地に陥り、この世界により大きな不確実性をもたらすこととなろう。(CRI論説員 盛玉紅)