北京
PM2.577
23/19
2017年、トランプ氏が大統領の座に就いてからの欧州に対する軽視と圧力的態度は、ここ最近の氏の欧州での振る舞いに余すところなく表現されており、米欧の間に走る亀裂を余計に際立つものへと広げている。
冷戦初期、米国の西欧諸国の同盟関係の中での領袖としての地位は極めて安定したものであり、それが故に、ベルリン、キューバ、中距離ミサイルなど東西の重大な危機の中において、欧州の同盟国は米国と立ち位置を同じくしていた。しかし、その数十年の間にも、米国はフランスとドイツという二つの大国とは轍を共にすることができていなかった。前者はドゴール将軍の指揮のもと、NATOを脱退し、自国で核兵器を開発したし、後者はブラント首相の指揮の下、独自に東方政策を展開していた。
冷戦終結後、欧州は一体化に向かい、欧州経済共同体は欧州連合へと移行、世界における政治、経済、影響力は急速に成長を遂げ、両者のパワーバランスに根本的な転換が起こることとなった。
まず、欧州連合が「グローバリゼーションが進み、同時に極度の分裂が見られる世界において、グローバルガバナンスの中心となり、手本となる」と宣言、多くの国際問題に就いて、欧州は多国間主義の観念に則り、米国にはノーを突きつけるようになった。例えば、2003年の仏独が中心となって米国のイラク侵攻に反旗を翻した際、激しい外交戦を繰り広げていたし、ブッシュ・ジュニア政権時の数多くのミリタリズムの主張にも同意しなかった。しかし、米国は「有志国連盟」の概念を用いて、欧州諸国を分裂に導こうとしていた。
次に、欧州は新たな世界情勢に合わせたNATOの改革を求め、欧州の発言権を強化し、ロシアに対抗するのと同時に、欧州の安全保障の形勢を掌握することを考えるようになった。このため、欧州はウクライナとグルジアのNATO入りに反対し、欧州連合安全戦略を制定、防衛協力への一歩を踏み出した。これに対し、米国は欧州に対しNATOの維持費用の負担増加を求め、NATOの指令に従うことを求める一方、欧州連盟の防衛協力の発展を監視、制限した。
さらに、米欧のフリートレードゾーンに関する交渉は暗礁に乗り上げ、現在も棚上げされたままとなっている。欧州は米国金融の放漫さについて、欧州に危機を輸出しようとしていると批判している。米国はといえば、欧州の経済力の成長と米国を超越しようとする目標について警戒を隠さない。欧州が債務危機に陥った際、米国の与信格付機関は見る見る間に欧州の金融機関の信用格付けを落としていき、IMFのユーロへの資金援助にも反対し、ユーロと欧州連合は失敗だったと方々に触れ回った。
こうした状況がありながらも、米欧は同時に協力と強調を保っている部分があった。例えば彼らが共に起こしたコソボ戦争とリビアへの軍事侵攻がそれだ。しかし、それでもなお、米欧には解決し難い基本的問題が存在する。それは米国が欧州の同盟国に対し提示した、その戦略的利益に従属せよという要求である。欧州連合にも自らの主張と利益があり、その要求は従いようのないものだ。
次に、トランプ氏が大統領に就任してからの1年あまりの間、米国はその狭窄化した利益と視点を拠り所に、単独主義を推進していることがある。これは、トランプ氏の最近の欧州に対する態度にも現れている。まず、欧州諸国に対し、声高に欧州連合からの脱退をそそのかしている点、そして、欧州の同盟国にNATOの軍事費の分担を求め、さらには欧州と米国の貿易取引の不公正について不満を漏らし、見返りを得ようとしている点がそれである。
このように、トランプ氏が欧州を米国の「敵」として捉えている中にありながら、欧州連合のユンケル委員長とトランプ大統領は貿易協議で共同声明を発表したが、これもまたささやかな希望を述べたものにすぎない。声明は現在双方の抱える係争についてクリアにしていないばかりか、将来起こるであろう問題へのコンティンジェンシープランを示している訳でもない。何より、トランプ氏の強引さやコロコロ変わる態度は、すでに彼の外交スタイルにもなっており、これは欧州にとっては信用のし難いものだろう。
斯様に、米欧の齟齬は双方の構造的亀裂であり、トランプ氏の統治の下では、それは余計に深まるばかりなのだ。
(作者 郉燁 中国国際問題研究院研究員)