北京
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モーリス・オブストフェルド氏(IMFチーフエコノミスト)
中国が人民元の為替レートを操作しているとする米国の一方的な非難に関し、国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト・モーリス・オブストフェルド氏は先頃、米国のメディアに対し、「中国が為替レートを操作していると証明できる証拠は何もない」とコメントしました。
外交部の耿爽報道官も言うように、中国には通貨価値で輸出を刺激する考えはありません。
また、中国に為替レートを操作する動機や必要性がないことの理由として、アナリストは以下のようにまとめています。
理由の1点目として、国内消費が中国の経済成長を主導する力となっている点が挙げられます。今年上半期、中国の国内総生産(GDP)成長率は6.8%を記録、消費のGDPへの貢献度は78.5%に達しています。
2点目として、開放の拡大は人民元資産を強力な下支えとなるであろう点が挙げられます。中国の金融市場は欧米諸国の金融市場と比較しても、収益性が高く、潜在力も大きい場所です。海外の資金流入は続き、資本フローはバランスされると見込まれます。
3点目として、人民元の値下げ操作は割に合わない点が挙げられます。今年に入り、中国はさらなる対外開放、輸入拡大の措置を講じています。この背景の下で人民元を値下げすることは、輸入コストの増加につながります。今年上半期の中国の輸出は4.9%増なのに対して、輸入は11.5%増と輸出を大きく上回っており、これに逆行する値下げ措置は割に合いません。
人民元のイメージ図(陳錫文・作)
では、昨今の人民元為替レート変動について、どうとらえるべきなのでしょうか。
まず、リスク回避傾向が強まったこととの関係が考えられるでしょう。トランプ政権の貿易保護主義は世界中のリスク回避傾向を刺激し、為替市場全体にも影響を与えました。米国の株式市場も乱高下し、市場のボラティリティも高まり、大口商品価格の下落を招きました。
また、米ドル指数の上昇との関連が考えられるでしょう。今年上半期、米ドル指数は2.45%上昇した一方、人民元対ドル相場の中値は1.67%下がったのみで、ドル指数の上昇幅を大きく下回っています。
最後に、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げとの関連が考えられるでしょう。4月以降、人民元の対ドル相場は8%以上の下げを見せていますが、この期間は米国の利上げの進行と重なっています。今年、FRBは3月と6月の2回にわたって利上げを行っている他、年内の利上げ予定回数を元の3回から4回に引き上げています。
一部のアナリストの分析にもあるように、人民元の為替レートの変動は合理的なレンジ内にあり、為替レートの双方向への変化は市場の動きによるものです。中国の経済状況は良好であり、外貨供給もバランスの取れた状況にある中、この先一定の期間においては人民元相場は平均的レベルにおける安定を保つことが可能な状態です。よって、現在中国には人民元為替レートを操作する必要は全くないと言えるでしょう。(殷、む)
(中国人民大学重陽金融研究院上級研究員 董希淼)
(翻訳:殷、む)