広々としたサッカーグランドで一際目立つ白と緑の軍団、友好試合を前に厳しい表情をした選手たちの間に緊張感が漂っていました。その中心でひとりの日本人監督が指揮をとっていました。元サッカー日本代表監督の岡田武史さんです。
中国側からの招聘後、交渉に1ヵ月以上の月日を費やし、昨年の12月15日、岡田武史さんは正式に中国スーパーリーグの杭州緑城(グリーンタウン)の監督に就任しました。Jリーグで優勝経験がある日本人監督が海外のプロチームで監督に就任するのは岡田さんが初めてです。同時に中国スーパーリーグ初の日本人監督となりました。
杭州緑城は1998年に設立され、2006年にスーパーリーグに昇格しました。2010年にはリーグ4位の成績でアジアクラブリーグに参加しましたが、2011年の成績は8位でした。こう言った成績不振もあり、緑城の幹部は日本のサッカー技術の導入やサッカー改革の意を込め岡田監督を招いたと話しています。
チーム全員の名前から特徴まで覚え、一人ひとりの問題点を指摘し自ら説明する岡田監督、休憩時は選手と冗談を言いながら笑顔を浮かべることもしばしばありました。杭州緑城が最後の監督の仕事になるかもしれない岡田さん、中国での生活、中国、緑城を選んだ理由と中国サッカーなどについてマイクを向けました。
■中国で新たなチャレンジ、草の根交流を
――どうして中国、緑城を選んだのですか。
1つはJリーグ、J2でも優勝したし、代表もやったし、なんか新しいチャレンジが見つからなかったし、別に現場の監督やらなくてもまあまあ食っていけるし、そんな中で中国からオファーもらった時に、一番最初に緑城がオファーくれたというのが大きんですけど、その時にすごいチャレンジしてみたいと思ったのが1つ。それとやっぱりこれから世界のキーを握るであろう中国という国をメディアやいろんな人の話じゃなくて、自分で見てみたいというのをすごく感じました。それとやっぱりこれから東アジアというのは、いろんな問題が起こってくると思います。そういう時に政府とかのレベルでは解決できなくなってくると感じています。その時にこのネットの社会ですから、草の根のグラスルーツの小さな絆が、なにか大きな力を発揮するときが来るんじゃないか、そういうのでなんか中国の中で絆を作れればなと、そういうトータルなことを思って行ってみたいと思いました。
――指導について難しいことや困ったことはありますか。
驚いたのはやっぱり選手がある意味情報がない分、日本の選手より純粋で、本当にやろうとしてくれてること、なんかものすごく僕もやりがいを感じて、こいつらに何とかしていい結果を出させてやりたいなという気持ちでいます。困ったことといえば、それは文化の違いで言葉が通じないとか、それはいろいろあるのは当然ですからね。それ以外では本当にないですね。皆が本当に日本人である僕を受け入れてくれて一生懸命やってくれる、スタッフもなんとか僕の力になろうと皆がやってくれるのには感激してる。
■優勝以外考えてない
――練習は日本式ですか。
練習するのは今のチームの現状を見て、足らないところであったり、いいところを延ばすことだったりするんで、何と式か全然考えてなくて、自分なりに緑城だったらこのチームはこういう所が足らないなと思ったら、そういうところを練習しているけど、固まったパターンをやってるわけじゃないです。
これだけ一生懸命やってくれてるからチームがレベルアップしてくるのが分かるんですよ。これは指導者にとって最も嬉しいことで、やりがいを感じることで、これが最終的にどれだけ評判が良くても、選手が伸びても、チームの結果としてつながんなかったら意味が無いので、なんとかそういう結果につながるようにとは思ってます。
――緑城の目標はなんでしょうか?
僕は今も優勝以外考えてないですから、皆さんなんか「緑城で優勝?」とかでインタビューを受けるたびに言われるけど、別に僕はプレミアリーグやリーガエスパニォーラで優勝と言ってるわけじゃなくて、スーパーリーグで優勝と言ってるだけなんですから、このチームでも十分可能だと思ってます。
■古典は先人の知恵
――中国での生活はどうですか。
全く問題ないですね、食事も美味しいし、今のところ困ってることは無いですね。春節の間、休みで日本に帰ってましたが、びっくりしたのは空港などが人でごった返してたのと帰ってきたら近くの店とかがどこも開いてなくて、これにはちょっと参りました。日本では今では正月からどこでも開いてるので、びっくりしました。
――読書が好きな岡田監督、最近は何を読んでいますか。
いつも一冊は本を持っていて、今は麻雀が強い日本人の話を読んでいます。別に中国の生活に役立つためにとかで読んでいるのではなく、好きで気が向いた時に読んでるだけで、中国語を勉強する本はいつも持ち歩いているけど、あんまり読む時間がまだないです。
――中国古典が好きだと聞きましたが、岡田監督自身とサッカーに与える影響はありますか。
中国の古典だけじゃなくて、やっぱり古典というのは先人の知恵で、自分が経験しなくても学べるものがたくさんあるんで、その中でも中国は歴史が古いので、昔の『大学』とか『中庸』とか、孫子だとか日本語に訳した本は昔から結構読んでいます。それは、何かしら自分にとって影響があると思ってます。サッカーについての影響はどうでしょうね。ただ指導者というのはサッカーだけじゃなくて、全部の人間力が問われると思っているので、そういう意味では影響が、これが具体的にはどういう影響がわからないけど、何かしら影響が出てると思ってます。(聞き手・構成:劉睿)
【プロフィール】
岡田武史(おかだ たけし)
1956年 8月25日大阪生まれ。
1980年 早稲田大学政治経済学部卒業、古河電工入社。
1992年 ドイツへコーチ留学。
1997年 フランスW杯最終予選代理監督として指名され、その後に正式任命。
1999年 J2に降格したコンサドーレ札幌の監督に就任。2000年にJ2で優勝。
2003年 横浜F・マリノス監督に就任。2003年、2004年とJ1で2回優勝。
2007年 日本代表監督再就任。
2010年 アジアサッカー連盟(AFC)より、AFC最優秀監督賞を受賞。
2012年から中国サッカー・スーパーリーグの杭州緑城足球倶楽部にて監督就任。
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