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■中国と日本、「お互い様」の関係を目指せ
――ところで、日本人の取り柄をどのようにとらえていますか。
今回、3月11日の大地震、大津波と原子力発電所の事故で、日本は非常に大きな被害を受けました。これに対して、中国の方々にも多くの支援をいただき、ありがたく思っています。これと同時に、災害後、日本人の優れた忍耐力と「お互い様」という互助精神に改めて気づいたこともあると思います。そういう良さを、ほかの国々の方々にも知ってもらい、そういうことができるといいなと思うんですね。
中国の方は、ちょうど日本が高度成長していた時期と同じ、非常に上昇志向というか、生活全体を良くしていこう気持ちが国中に溢れています。そのことはとても羨ましいし、素敵なことです。
だけど、経済のみを追求するなら、利益だけ上がれば良いということになりがちですね。日本では、そういうものがバブルを生んできました。「日本が繰り返していたマイナスなことを、中国に繰り返さないでほしい」という思いを中国の方々に伝えていくのも、自分達の役割ではないかなと思うんですね。
戦略的互恵関係が両国の間で言われていて、とても素晴らしいことだと思います。それは、制度や仕組みなど、国同士の互恵はもちろんですが、両国民が、日本語で言えば「お互い様」という気持ちを持ち合っていくということもとても大切です。一衣帯水の海を挟んでの関係の中で、お互いが「お互い様」という関係をさらに結んでいけば、ほんとの意味での戦略的互恵関係になっていくのじゃないかと思います。
今回の震災で日本人が気づいたことが、また一つの前進の一歩になりはしないかと期待していますね。
――去年、中国はGDPで日本を抜いて、世界第二の経済大国になりました。このことは、日本社会に大きな衝撃を与えたと見ていますか。
僕個人は、中国のGDPが日本を追い抜いたからと言って、ショックを受けたということはまったくない。特に、人口規模は10倍も違い、それはトータルとしての国際総生産がそれだけの差がついてくる、実力を増してくるというのが、当然のことだと思います。
ただ、一般の日本人の中に、ちょっとあまり良くない出来事を背景にして、さらに経済的に中国に抜かれたということを、何か感情的なことにすり替えてしまう気持ちはないかと言えば、確かにないとは言えない。だから、どうすべきかといえば、そういうことを日本人は考えるべきではないし、考えないようにきちんと報道していく。国でいえば、そういう情報を流していくということが大切です。
というのは、これからも13億という中国の市場が、国民の皆さんをマーケットに例えるのは失礼ですが、現実に経済的にみれば、13億のマーケットがすぐ隣にあるということは、これ以上の幸せはないという距離的、地理的な条件だと思います。
ということから言えば、やっぱり中国はこれからも8%、9%という目指すべき成長を続けていただくことが、日本の国内市場が縮小していく中で、お互いが経済的に伸びていく上で重要なのです。そのために、中国の中で一番問題になっている地域格差の問題を解決していく、それに日本はどうやって協力していくかということ。まだまだ協力していけることはいっぱいあります。
――最後に、今回の訪中のご感想は?
今回は、第12次五ヵ年計画の説明を聞いて、中国はこれまでのような、人件費の安さ、資源の豊かさと13億という市場を一つの武器として経済成長してきた国から、もっと付加価値のあるものに経済を変えていくんだという意欲を強く感じました。
さきほど話に出たアニメなどの分野も、まさにそういうことに関わっており、日中がさらに経済的なつながりを深めていく上での一つの種になるのではないかと思います。
ただ、さりとて、沿岸部と内陸部の差とかいうことが非常に重要な一つ課題で、そのために、内陸部への企業の誘致や、内陸部と中央アジアの交流に力を入れていることの意味もよく分かりました。
そこが、日本がたとえGDPのトータルで抜かれても、これからもっと密接に力を携えてやっていく大きなポイントではないかと感じました。昔のように、ODAなどだけでなくて、ほんとに日本のプラスにも、経済的にもつながる協力が、今こそいっぱい出てくるのではないかと思いますね。まさに、国交正常化40周年になろうとしている今、ちょうどよいタイミングに当たっているのではないかと思いました。
(聞き手:王小燕、撮影:陳博)
【プロフィール】
橋本 大二郎(はしもと だいじろう)さん
1947年東京生まれ
早稲田大学大学院公共経営研究科客員教授
慶應義塾大学特別招聘教授
前高知県知事
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