■現地の人材育成が大事

――中国でのショッピングモール管理、テナントや中国人スタッフとの付き合いに、苦労してきたことは？

　ショッピングモールというのは共同経営であり、共同体なので、その中で働く人たちが一定のルールを守ることが大事です。ひとつの会社ならば比較的簡単ですが、いろんな会社、お店の人がいて、そこにまたショッピングモールのルールがあるわけなので、これを定着させるには少し時間がかかります。ですが、これを守ることにより、お互いに信頼感が生まれ、安心して仕事ができるようになるのです。

　またスタッフの問題ですが、ショッピングモールで仕事の経験のある人がやはり少ないです。彼らに対しイオンモールの考え方や経営スタイルを教えていかなくてはなりません。このようにローカルスタッフが育っていくことにより、各自が専門店とコンタクトを取って協調していくことができます。中国現地での人材育成が次の大きな課題になってくると思います。

――今後の中国と日本の経済関係をどのように見ていますか。

　今、中国の存在抜きには日本の経済は語れないほど、中国は日本にとって重要な存在になっています。一方、中国側としても、日本の持つ科学技術、製造技術といった先端技術をどのように取り入れ、自国のものにするかを考えています。

　同時に、日中だけでなくアジア全体として考えなくてはいけません。やはり中国と日本が中心になってアジア全体をひっぱっていく力になると思います。そういう意味でもより緊密な関係に発展していくと思います。

――中国は年内にもGDPが日本を抜き2位になる勢いですが、どう受け止めていますか？

　当然それは認識していますし、改めて「日本はこのままではいけない」と感じています。アメリカと中国という両大国の間に置かれ、日本の存在価値が薄れつつあるという認識を持ち始めているわけです。そういう意味で、日本の経済や技術などをより磨き、そして世界のトップレベルまでいけるようにつくり直さなければならないという認識がより強くなっています。

　今、GDPで中国に抜かれるという状況は、日本にとって、ものすごい刺激になり、これをバネにもう一度やり直そうという気運が高まりつつあります。お互いにいい意味で競争相手になり、刺激をし合っているわけです。

――最後に、中国で仕事をし、中国に住んでいてのご感想を。

　一つ目は、絆ですね。中国人は人と人との信頼関係や繋がりを大切にしています。いったん信頼した人とは非常に強い繋がりで付き合っていくという印象を受けました。

　もう一つは、中国の発展のスピードが非常に速いということです。この10年間の変化は信じられないほどです。この勢いで変化し成長していくので、中国の国力がすごいのだと思います。

（聞き手・編集：王小燕、整理：松江清揚、上垣夏乃子）