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田邊潤さん 世界面白健康法の研究者

2009-12-23 23:35:01     cri    

中国源流の健康運動を世界に

ヘルスロードで繋ぎたい 中国と日本と世界を

 元・陸上・走り高跳びの選手。生涯スポーツ(健康運動)の研究家。現在は早稲田大学本庄高等学院教諭。2008年4月~2009年3月、早稲田大学研究員として北京大学に滞在。この間、大学のキャンパスや北京の公園で展開されている色とりどりの健康法に魅了され、公園に通って「修行」する日々を送っていました。
 その北京での研究成果の総まとめに、『中国オモシロ健康法』が出版されました(中国外文出版)。
 現代中国社会を中高年スポーツという視点から細やかに観察しており、写真、動画をもふんだんに取り入れています。読みものとしてだけでなく、面白健康法のマニュアルとして(実演DVD付き)、または北京の公園観光のガイドとしても利用できる一冊です。
 帰国後、中国でヒントを得た健康法の数々を自らの授業だけでなく、日本各地での中高年向け講座や、小中高校の生徒への指導と普及に精力的に取り組んでいます。
 中国の公園や面白健康法にかくも魅了した理由は何か。さらに、中国が源流のこれらの健康運動にどのような夢を託しているのでしょうか。

中国の公園に魅せられて

――中国との出会いは?

 私の家では、以前から中国をはじめ世界各国からの学生たちをホームステイで受け入れ、楽しく交流してきましたが、実際に中国に来たのは1990年の北京訪問でした。天壇公園と景山公園を見学した時、皆さんが外でダンスをしていたのを見て驚き、中国の人々の明るさが印象に残りました。その時から、中国の健康文化にほかの国にないものを感じ、いつか中国に行って、中高年の健康運動を研究したいなと思っていました。

――研究員として北京に滞在していた時、毎日のように公園に通っていたようですね。

 そうでしたね。特に北京五輪が終了してからの後半では様々な公園を回りました。中国の公園をテーマに選んだのは、公園で触れ合った人々の温かい人柄に魅せられたからです。それは学校や町での触れ合いとは違う、別の世界のものでした。

 ご存じのように、日本と中国の間には、歴史問題はもちろん、政治、経済、社会的なつながりなど複雑な問題が色々あります。けれども、公園に集まっている人々はそういった問題とは関係なく、お互いの健康という、生きてゆく上で一番の基本となるテーマで話し合えます。健康長寿は経済も社会も歴史も関係なく、そういう中で、お互いを高め合えるような情報交換が、公園での一般市民との交流でできるということを実感しました。

――北京の公園を日本やその他の国の公園と比較すれば?

 日本には広い公園があまりありません。公園というと、幼稚園に入る子どもとお母さんが行くイメージがあります。ところが、公園は中国ではむしろ定年退職した方たちが集まりに来る場所で、中高年の方々の最高のテーマーパークだと思います。年齢も40、50歳から80、90歳へと幅が広いし、中には歌が得意な人、ダンスが上手な人、個性的な人が多いです。

 欧米の公園に行けば、ジョギングしている人が通り過ぎる中ゆったりと時間を過ごす人々がいて、日本と似ていると思いますが、中国のように活発に表でダンスをする人はそんなにはいないと思います。メキシコやスペインでは踊りのパレードは見られますが、お祭りの日とかが多いですね。

 日本にも高知のよさこい祭りや、徳島の阿波踊りなどがあり、いわゆる「晴れの日」にダンスや踊りをするというのが色々ありますが、それが北京の公園では毎日がお祭りです。

 そういうものが年間を通してやっているというのが、北京の面白さ、中国の公園の面白さですね。

面白健康法で深まる中国理解

――公園での付き合いから受けた中国人のイメージとは?

 日本の人と比べて、性格の違いを感じるということでしょうか。日本人は人がどう見ているかをすごく気にしていますが、それに比べれば、中国人は人のことを気にしないというか、体裁よりも実をとるように感じました。

――健康体操の研究を通して見えた中国とは?

 多分、世界の中でも、中国ほど多くの健康法を生み出し、また実践している国はないと思います。世界的に知られる太極拳や気功も、驚くほどバラエティーに富んだ種類がありますし、私が興味を持ったユニークな体操、たとえば、笑いの体操だとか、棒を使った「打���棍」とか、中国ゴマ(空竹)とか、リボンを振り回す体操とか、手のツボを叩く体操とか、中国の人たちは歴史的に見ても様々な面白い体操を考え出し続けています。 

 しかも、皆さんそれぞれのこだわりがあり、それについて尋ねれば、ちゃんと自分なりに理由を話してくれています。

 たとえば、お笑い体操を発案した先生は、人体には「小笑いの門」と「中笑い、大笑いの門」があり、それを開くことが日々の健康に役立つと唱えています。

 または、クルミを手でまわしながらツボを刺激するという古くからの健康運動がありますが、クルミを持っている人に「何で持っているのか」と聞くと、「指のツボを刺激して、左右の脳を使うんだ」とか、ちゃんと皆さんから一言一言、答えが返ってくるのです。そして、その胡桃の一つにだってこだわっているのです。買おうとすると、「とげのあるもの、触ってみるとちくちくするのが良いよ」とか教えてくれました。

 日本から中国を見ると、ややもすれば、「中国は模造品やコピーが多い国だ」という印象がありますが、実際に私が接した中国の方たちというのは非常に個性的だし、人とは異なった自分なりの健康法を追求する人が多いように思います。

――面白健康法の研究は中国と中国人への理解を深めたことにもなったようですね。それが今度本という形になって出版されると、きっと多くの日本人の中国理解にもつながることと言えますね。

 実は、私にとって日中友好に役立つことを考えるなどということは遠い存在でした。自分が何かにかかわれるようなものではなかったと思っていました。ところが、まさに、北京で数多くの方々と知り合って、面白健康法に触れたことがきっかけになり、「自分の分野だったら」、「こんなことだったらできるんじゃないか」と思い直すようになりました。

 中国と日本の間には、様々な立場の方々が色々な形で友好交流に尽力しています。自分は政治も経済にも積極的にかかわりはできませんが、健康法を伝えることでひょっとしたら日本人にも受け入れられ、中国の人たちにも役立つことができるかもしれないと思えるようになりました。

 北京に一年間住み、出会った中国の人たちにたいへん良くしていただいたので、その方たちへ感謝を返す意味で、自分なりに何ができるのかを考えました。感謝の気持ちを形のあるものにして、それを表現すること自体が友好につながるのではと思い、多くの人にも役立つようにと考えた企画が、オモシロ健康法という形になったような気がしています。 

中国の公園は面白健康法の「メジャーリーグ」

――ところで、田邊さんは北京に来た当初、別のアプローチで研究を進めようと考えていたようですね。

 私は、日本で「バランススティック」という小さな平均台を発明しました。長さ68センチ、高さ2センチ、幅4センチ~10センチほどの板の上で、様々な体操をしてバランスを取るというものです。

 当初は、それを中国に伝えて、バランスティックを使っての体操の動き作りを、中国の人と一緒に開発すればよいなという夢を抱いてやってきました。

――それが、後に方向を転換したということですか。

 そうですね。中国の公園で、一般の方々の健康運動に対する情熱に触れ、健康でありたいという気持ちが長い歴史の中から営々と育まれているものなのだと知った時、私が当初から思っていた以上の、本当にレベルの高い健康法が考え続けられているのだということを感じました。そこで、バランススティックを中国の人々に受け入れられようなものにするには、私の方がまだ勉強不足だと思って、それよりも、もっと中国を学ばなければならない、逆に中国でやっている健康法を自分で取り入れなくちゃと思うようになりました。そんなわけで、バランススティックは日本に持ち帰って出直そうと思っています(笑)。

 野球でたとえると、メジャーリーグの壁にぶつかったという感じですね。中国の公園は健康運動のメジャーリーグ。私はそれを確信しています。

――健康づくりの視点から見ると、中国の公園で受けた一番のヒントは?

 健康は体、心、頭の三軸構造ので立方体で支えられていると私はイメージしています。普通はどちらかというと、体(ボディー)に偏る方が多いようですが、やはり心の健康こそ大事です。そういった中で、北京の方たちは皆で集まっておしゃべりしながらコミュニケーションをはかり、ダンスや雑技のような運動など色々な技術を覚えながら、心の安定と頭のトレーニングにもつなげていることはとても素晴らしいと思います。その3軸構造を伸ばす活動が健康づくりには大切なのだということを肌で学んだことが、私にとって北京で学んだ一番の成果だと思います。

ヘルスロードで世界とつなげたい

――数多くある中国の面白健康法の中から、今回のご本では7種類を中心に紹介しており、中には、オリジナルソングまで作って、田邊さん独自の創意工夫も生かした体操もあるようですね。

 そうですね。私が中国の面白健康法の中で、最初に普及したいのは、「ツボタタキ」体操というものです。振り付けにあわせて、楽しく運動できるために、歌まで作りました。歌詞は中国風水も考え合わせながら「運をよぼう」ということで、「ハッピー・ラッキー ツボタタキ」という題にしました。

 道具を使わずに、手を叩くだけで出来る体操です。一番気に入ったところは、座ったままできることです。お年寄りの方もできるし、普通に体が動けない方でも手で拍手することで手のツボを刺激し、健康に役立てようとするもので、とても魅力があります。

 この「ツボタタキ」体操の源流の体操は「経絡拍打体操」と言うもので、一通りやるには1時間以上もかかりますが、それをぜひ日本の皆さんにも楽しんでもらいたくて、やりやすくするよう5分ほどのダイジェスト版にアレンジしました。

 この体操が日本でも楽しまれている情報が中国にも伝わってほしい。中国の方たちに「私たちの本場の経絡体操は日本人がこういう風にアレンジして、楽しんでいる」というのを目で見ていただきたいです。中国源流のものが色んな人が、色んな形にアレンジして世界各地に広まっていく。それはそれで楽しめて、いいんじゃないかと思っています。

――面白健康法で結ばれた中日の絆を今後、どのように推し進めていこうとお考えですか。

 中国で学んできた健康体操をわたし流にアレンジしたもの、例えば、ツボタタキとか、リボン体操(写真右)等に、中国コマや打花棍(写真左)というスティックを使った体操とかを加え、さらに自分が開発したバランススティックの健康体操も取り入れながら、日本人に伝える運動メニューを増やして行きたいと考えています。歴史的に見て中国がもととなって発展してきた健康運動を中心に、世界各国の楽しい運動も取り入れた健康講座をこれから日本で開いてゆきたいと思っています。

  言い方を変えると、中国源流の絹や陶磁器が西方の欧州に伝わって花を咲かせた「シルクロード」からヒントを受け、中国源流の健康法を東方に伝える「ヘルスロード」を作れたらいいなと思っています。

 中国の健康法というのは、気功にしても太極拳にしても、すごく深くて難解ですよね。すぐには学べない、習得できないものがたくさんあります。やはり中国人が歴史の中で培ってきたものには、私たちが簡単にはなかなか身につかない部分があるのですね。欧米の人もそうだと思います。

 一方、日本人は原料を使って加工する技術が優れているから、中国が源流の健康文化、健康活動を日本で科学的に分析し、ある程度アレンジしてから、それをまた欧米に伝えるようなものに開発できるようになるのではないかと思います。そういったものを「ヘルスロード」として私が切り開いてゆけたらいいなと思っています。 (聞き手:王小燕) 

【田邊潤さん プロフィール】

1957年生まれ

早稲田大学教育学部卒

筑波大学体育研究科大学院修士課程修了、専門スポーツは陸上競技

早���田大学本庄高等学院 教諭

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