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翻訳通訳界の学術シンポ、今秋も北京で開催

2009-10-20 18:03:21     cri    
 北京第二外国語学院と中国翻訳協会の共催による「翻訳教育国際学術シンポジウム」が101718日、北京で開催されました。同シンポジウムは2006年に初めて行われ、今回は4度目の開催となります。去年に続いて、「大学通訳コンテスト」も同時開催。内外90余りの大学や関連機関から学者や研究者、学生ら500人ほどが参加しました。

中国では、対外開放の深化に伴って、通訳翻訳への市場ニーズが年々高まりつつあります。これを背景に、2006年、中国教育省は大学での「通訳専攻」の設置を認め、これまで全国約10の大学で「通訳専攻」が設けられています。なお、日本語関連で言うと、北京には17大学に日本語専攻が設置されており、毎年、約千人の卒業生を送り出しています。
 
通訳翻訳業界の代表的な学術会議として、年々注目を集めつつあるこのシンポジウムに、王秀閣記者が取材してきました。会場の雰囲気や主催者、参加者の思いなど写真と文章で再現してみます。

基調講演 

 翻訳や通訳に携わる人材を養成する大学や専門学校による国際常設会議(CIUTI)のHannelore Lee-jahnke事務局長は、プロの通訳者になるためのノウハウについて講義を行いました。

  日本独協大学国際教養学部の永田小絵助教授は「訳せないもの」と題して、通訳者として実際に経験した翻訳不可能な例をあげて、翻訳できない原因を理論面から検討しました。例えば、「パンダの食事はパンだ」のような駄じゃれや掛け言葉です。また永田助教授は、「『納豆の糸を引くように』など、相手国にないものが出た場合は、無理に訳さなくてもよい。そして『龍』と『ドラゴン』のような意味合いの違う言葉を置き換えて訳すことも適切ではない。」と述べました。 

シンポジウム

 同時通訳と教育法、実用的通訳、観光業通訳の3つのテーマに分かれて、サロンや討論会などの形式でシンポジウムが行われました。
 討論会では、天津外語大の林克難教授は、自身の外国語学習の経験を踏まえて、教師の指導の下で原文を読ませる重要性を強調し、「理解したものならば、大抵表現できる。表現できないのは、理解していないからだ。」と語り、翻訳技能を高めるために、理解力の向上は不可欠だと指摘しました。

 通訳コンテストの模様

 2回目の今回は英語、日本語、フランス語の3言語で行われました。25大学から70名の学生が準決勝に進出し、決勝では約30名が競い合いました。

 まず、同時通訳コンテストに参加する学生には、開始10分前に、関連用語の紙が渡され、10分間の準備時間が与えられます。次に正式な同時通訳のブースが用意され、学生はその中でヘッドホンをつけて、流される音声を聞きながら、訳していきます。

 逐次通訳コンテストの会場には一般教室が使用され、、参加者は教壇の上で黒板を背にして座ります。その前に、少し離れて審査員が座り、さらにその後ろには傍聴する学生らが座っています。逐次通訳の場合、準備時間は与えられません。参加者は録音を聞いたあと、マイクに向かって即時に訳していきます。

 大連外語大英語学部3年生の武一帆さん。準備室に緊張した顔でいました。終了後感想を聞いたら、「普段よりはよく出来なかった」とのこと。理由を尋ねると、「スーツを着るのが初めてで、慣れていないから。」という答えが返ってきました。

   「日本語学院では、2005年に同時通訳の科目を全国に先駆けて開設し、これまでに豊富な経験を積み上げてきた。」と語る、二外日本語学院の潘寿君院長。

   見学に来ている二外日本語学院の日本人教師の古賀悠太郎さんと教え子の皆さん。神戸外語大の大学院で日本語教育を専攻し、現在、博士後期課程を休学して二外に教えに来ているという古賀先生。教え子たちと年齢がそれほど変わりません。日本語で会話していたので、日本人留学生の集まりかと思ってしまいました。

<シンポジウム開催に寄せた思い>

■北京第二外国語学院 周烈学長に聞く

・外国語学習者は、「世界のことを中国に紹介し、中国のことを世界に紹介する」使命を担うべき

 大学時代は、決して宿舎、食堂と教室の間で過ごすものではない。オリンピックのボランティアになったり、国慶節のパレードに参加したりして、社会活動に積極的に参加し、、素晴らしい思い出を作ることが大事。その中で教養を高め、中国と世界をつなぐ架け橋になれる。この通訳コンテストも学生に能力を高めるよい機会を与えている。

・原文を読み、相手国の「ダンス1つ、歌2曲、物語3つ、笑い話4つ、詩歌5つ」を身につける

 アラビア語教育に長年携わってきた周学長は、外国語の習得に必要な最小限の目標として、以上のことを提議している。即ち、外国語だけでなく、相手国の文化も同時に勉強する必要性を強調している。また、「教師は農夫のように、畑にある全ての農作物に配慮しなければならない。その中で肥沃な土地で大きく丈夫に育っているものを種にすればいい」という教師の理想像を持っている。

・二外は、外国語を基礎に、観光業を中心とし、経済貿易・法律などをバランスよく網羅している

 海外の大学と学生と教師の相互派遣をし、本場で外国語に触れさせることにより、外国語レベルの向上を図っている。また、以前に国家観光局の所属となった時期があったため、観光に関連する外国語教育を盛んに行っており、観光関連の外国語に強いことが二外の特色の一つとなっている。さらに、各界から専門家を要請し、講義してもらうことにより、学生により豊富な情報を提供している。

■北京第二外国語学院 邱鳴副学長に聞く 

 ・通訳の専攻設定について

 市場ニーズが高まる中、またよい通訳になるためには、外国語能力だけでなくテクニックの習得も必要という。このテクニック習得のため、2006年に教育部が通訳専攻を認定し、翌年、二外で通訳専攻を開設した。現在、通訳専攻を開設しているのは約10校。二外は従来から「話す」能力を重視し、学生の話すレベルが高いことで知られているが、これをきっかけに、さらにこの特徴を伸ばしていきたい。

・通訳コンテストについて

 通訳そして同時通訳コンテストは、全国で唯一のもの。昨年スタートし、今年は2回目で、さらに今後は、毎年開催する予定。中国翻訳協会との共同主催で、翻訳協会が出題を担当している。事前の出題や収録、同時通訳設備の費用など、通訳コンテストへの投入資金は弁論大会などより遥かに多い。審査員は大学からではなく、翻訳業界の第一線で活躍している同時通訳者を招き、審査の公正を図っている。

・通訳コンテストの将来性について

 昨年の大会では、外務省の翻訳室の方も来て、優秀な人材を探していた。実際、昨年の優勝者の2名は現在、二外と天津外語大の翻訳専攻の教師になっている。大会はすでに人材選抜のよい場所になっている。1回目は英語と日本語、今回の2回目はフランス語が加わった。今後、毎年開催し、また徐々に言語種類を増やして、最終的に予選を全国のいくつかの地域で行い、決勝戦を北京で行うことにより、影響力が高く、ハイレベルなものにしたい。(王秀閣)

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