地下鉄の国貿駅に行ったら、1号線から10号線への連絡通路に「加多寶」という缶入り凉茶(種々の薬草が入った茶飲料)の広告が大々的に掲示されていました。
国貿駅連絡通路の「加多寶」の広告
最近、この「加多寶」の広告を北京の街角でやたら目にするんですが、実はこの赤い缶に書かれていた文字は、去年までは「王老吉」というものでした。それが名前の使用権の契約が切れ、「王老吉」という名前が使えなくなり、「加多寶」という名前で再販売したのだそうです。
もともと「王老吉」という凉茶は170年以上の歴史を持つ老舗ブランドです。「王老吉」という名前は老舗の流れを受け継ぐ広東の薬品メーカーが商標登録し、緑色の紙パッケージに入れて販売していました。そこで、香港の企業が契約して缶入り「王老吉」を販売したところ、赤地に黄色文字のパッケージと、熱く辛い鍋料理に組み合わせて売るという販売政略が当たって大ヒット商品となりました。ところが2010年に契約期限が来ると、広東側は更新を認めず裁判になりましたが、最終的に2012年5月香港側の使用権は認められないという結果になりました。
私もCRIでこのニュースを翻訳した記憶がありますが、それからの香港側のやり方がすごかったです。赤い缶に黄色字はわれわれが作り出したイメージだというわけで、その黄色の文字を「加多寶」に換えただけの商品を新たに販売するや、「名前は変わったけど中見を引き継ぐのはこっち」と大宣伝を始めたのです。一方、本家の方は缶入り化に時間がかかったのか、しばらく缶入りの「王老吉」が姿を消していました。その間にあっという間に「王老吉」→「加多寶」という流れが定着した感があります。この辺の「加多寶」側の馬力はわれわれ日本人にはちょっと真似できないところで、何だか小気味がいいとさえ感じます。
最近、ようやくその本舗「王老吉」の体制が整ったのか、いよいよ赤い缶の「王老吉」が復活してきたのです。
北京の銀座・王府井に「王老吉」と「加多寶」が並んで出店
先日、北京の銀座と言われる王府井を歩いていたら、何とも面白い光景を目にしました。歩行者天国の狭い道の両側で「加多寶」と「王老吉」が対抗して店を出していたのです。(写真では分かりにくいですが、右の奥に「加多寶」の店があります)
さて、この赤い缶戦争の行方はいかなることになりますか。これには、実は老舗企業の後継企業と創業家の関係など興味深い背景があって、なかなか奥深いところがあります。そういう意味でも、今後も注目していきたいと思いますが、それにしてもこのパワー! われわれも見習いたいものです。(大野清司)
「加多寶」の店 |
「王老吉」の店 |
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