【観察眼】中国市場に回帰する国際クルーズ船

2024-03-14 13:39:21  CRI

 オランダ籍のクルーズ船ザイデルダム(ZUIDERDAM)号がこのほど、天津国際クルーズ母港に来航した。このクルーズ船が天津へ寄港するのは今回が初めてで、30の国や地域からの乗船客1100人余りが中国の旅をスタートさせた。天津海事局船舶監督管理部門の責任者によると、天津国際クルーズ母港には2024年は60隻の船舶が来航し、延べ約18万人の観光客にサービスを提供する予定だ。

 春が近づくにつれ、中国のクルーズ市場の活気はさらに高まっている。3月以降、国際クルーズ船が上海港や青島港などのクルーズ港に一時的に寄港するだけでなく、いくつかのクルーズ港に立ち寄る中で、乗客は中国国内の好きな港で下船して各地を旅し、また好きな港で乗船することができるルートを設けた国際クルーズ船も数多く登場している。こうした動きから、業界内では、2024年は中国のクルーズ船市場回復元年と位置づけられている。

 中国は、世界のクルーズ業界にとって重要な市場であり、2006年に最初の母港航路が上海に開設されて以来、中国はアジア太平洋1位、世界2位のクルーズ旅行客供給国へと急速に発展している。中国交通運輸部のデータによると、2006年にクルーズ市場がスタートして以来、中国人のクルーズ船旅客者数は年平均40%以上増加している。その結果、2017年のピーク時には243万人に達し、世界全体の約10%を占めた。クルーズ船は斬新なリゾートスタイルとして、新消費の促進、産業チェーン経済のけん引、社会・経済発展の推進に積極的な役割を果たしている。上海社会科学院が発表した報告書「クルーズ船の中国への経済貢献」によると、2019年の国際クルーズ業界の中国への全体的な経済貢献は358億元に達し、うち直接的な経済貢献は140億元だった。2035年までに、中国のクルーズ船市場は年間1400万人規模に達し、国際クルーズ船の中国への経済貢献は5500億元に達すると期待されている。

 中国のクルーズ船市場の回復は2023年初めに始まった。同年3月末、交通運輸部は『国際クルーズ船輸送の秩序ある再開試行案』を発表し、上海と深センのクルーズ港の2つの出入国審査場で国際クルーズ輸送の試行再開を秩序立って推進させることを明確にした。これ以降、クルーズ産業は全般的に回復傾向にある。例えば、上海港の場合、上海市政府が発表したデータによると、上海市が試験的にクルーズ船の受け入れを再開して以来、2023年8月中旬までに、乗船券の販売収入がすでに3億元を超え、船への積み込み物資消費が約1億元に達し、新たに4000人以上の雇用が創出されたという。

 新型コロナウイルス感染症の流行以前、中国のクルーズ市場では、国際クルーズ会社が占める割合は9割に達していた。そして、現在まで継続的な新航路の開拓に加え、ロイヤル・カリビアンやMSCクルーズ、カーニバルクルーズライン(CCL)などのクルーズ会社が中国市場に大型船を展開している。こうした外資系クルーズ船が中国市場を主導する状況は過去のものになるかもしれない。2024年1月7日に初の国産大型クルーズ船「愛達・魔都(ADORA MAGIC CITY)」号が上海国際クルーズ港に着岸し、同船の初航海に立ち会った16の国と地域から来た3千人以上の乗船客が下船し、同船の初めての商業航海は成功裏に終えた。今回の商業航海は2024年1月1日に上海を出発し、上海から韓国の済州、日本の長崎、福岡での寄港を経て、また上海に戻る6泊7日の旅で、航海距離は1119カイリに達した。この中国国産大型クルーズ船の航海の成功は、中国のクルーズ船運航回復の強いサインを伝えるとともに、中国の船舶工業の急速な発展という斬新なイメージを示した。ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社中国・北アジア太平洋地域担当の劉淄楠(ジナン・リュウ)社長がインタビューで述べたように、今後は中国系クルーズ船の比率が上昇し、外資系クルーズ船と国産クルーズ船のシェアはほぼ半々の状況になるとみられる。

 中国交通運輸協会遊艇分会副会長・秘書長兼全国遊艇発展専家指導委員会秘書長の鄭煒航氏は、「国際クルーズ会社の中国市場への回帰と中国クルーズ会社の始動に伴い、中国は、2024〜2025年の2年間の回復と育成を経て、2026年からはクルーズ発展の第2の『黄金の10年』を迎えるだろう」と語った。(CMG日本語部論説員)

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